メイドホムンクルス(2)
「チッ。ミーシャ! メイドに目にもの見せてやれっ!」
「おう! 任せるにゃ!」
何の躊躇もなくメイドに殴り掛かるミーシャ。だが、メイドはミーシャの拳にそっと手を当てると、くるんとミーシャが縦回転でスッ転んだ。
「ぶにゃーーーーー!?」
ベッドにぼっすん! と勢いよく倒れ伏すミーシャ。
「こいつ、合気の使い手か!?」
「いいえ。流派、混沌流――合気も使う、というだけですわお客様」
そう言ってメイド服でカーテシーをするメイドホムンクルス。
……ってかさっきから足元に落とし穴を開いているのだが、落ちない!
こいつ、浮いてやがるぞ!? どうなってんだ!
「メイドたるもの、不安定な足場でもお仕事できなければいけません。故に、この靴は特別性。神器『空冗談』ですわ。空を冗談のように駆ける、足場の神器ですの」
「神器……! そいつぁご丁寧に解説どうも……てい!」
今度は逆に天井から網のように空間魔法を落とす。が、転移の如く一瞬で移動、避けられる。収納に入ったのはベッドとミーシャだけだった。
「それも靴の効果か!?」
「いえ、これはこのメイド服――神器『詩母等』の効果です。井戸端会議にいつでもすぐ参加しに行くために作られた神器ですわ。超スピードを実現しますの」
メイドホムンクルスはそう言って私の後ろに移動する。私は収納からミーシャを放出しぶつけた。……避けられ、ミーシャはべちゃっと床に倒れた。
「うにゃあ、扱いがひでーぞカリーナ!」
「あっちは神器複数持ちだとよ、油断するなよミーシャ!」
「神器!? マジか……こっちも神器で対抗するにゃ、なんかねーの!?」
混沌神を呼称させるメイドの言だ、本当に神器かどうかは分からない。が、神器並みの性能の何かがあるのは間違いない。
「起動――止まりなさい」
「うぐっ!?」
空間魔法で周りの空気を固められたかのように、私の動きが止められる。空間魔法で短距離転移し、拘束から逃げた。
「おやおや、いかなる蚊でも吸血鬼でも止めて落とす、このメイドカチューシャの神器『首領鬼包停』が効かないとは。お客様は本物のようですね。では次はこのカフスボタン、神器『反動丸』の出番です。えいえい」
手首のカフスボタンから、小石がパンッ! パンッ! と音を立てて爆ぜ飛んでくる。それこそ弾丸のように、一瞬でも気を抜いていたら撃ち抜かれる勢いだ。
「ぐ、このっ! とんでもない武装メイドだな、どうなってやがる!」
「我が身を飾るは108の神器。さてあなたはどの神器で倒せるでしょうか?」
「108ぃ!? 嘘八百並べてんじゃねぇぞ!?」
「そう思われるのであれば、事実に目を瞑りそう思われていればよろしいかと」
だが、私が空間魔法でメイド服やカチューシャを脱がそうとしても弾かれるのだ。これは、本当に神器であるのと同じ反応。
まさか、メイドの言う通り本当に、全身の装備が全部神器だとでもいうのだろうか。
「……レナ、こっちを見ろ!」
「はいご主人様。……おやおや」
メイドホムンクルスの注意を引きつけるカオル。その手には、蓋の開いた茶色いポーションが握られていた。








