ドラゴンと会話
ドラゴンと会話するにはまず相手を制圧してから。これ常識。
高慢ちきなドラゴンは、まずその強さというプライドの柱を叩き折らないとまともに話ができないのである。と、アーサーが言っていた。
『……縄張りを差し上げます。どうぞ許してください』
「ああ、いい、そういうのいいから。遊びに来ただけだし」
『う、うす』
ぺこり、と頭を下げる黒いドラゴン。その頬は私の一撃で腫れていた。
『にしても姐さん強いっすね。一撃で心折られましたわ』
「まぁ神様のパワーよ。こうして話せるのも神様のお力なんだぜ」
『神の御加護があるたぁ羨ましい! いよっ! 世界最強のニンゲン!』
「はっはっは、ただの事実だな」
『それはそうですなぁ、はっはっは』
意気投合して肩をパンパンと叩いてやる。ドラゴンは痛そうに瞼をゆがめた。
……こうやって圧をかけるのも大事な対ドラゴンのコミュニケーションである。
「で、鬼族にさぁ、生贄とか要求した?」
『えっと、だいぶ前に卵泥棒を差し出せとは言いましたが、特に生贄とかは』
「清らかな乙女じゃないとダメとかそういうわがままは?」
『? 卵泥棒が清らかな乙女かってぇのは関係ないっすよね?』
「だよねー」
アーサーの言っていた通り、卵泥棒からの犯人差し出せのケジメのすれ違いパターンだったようだ。
「で、最近また卵泥棒されたん? 生贄出せって話になってたんだけど」
『えぇ? ここ10年は卵取られたりしてねぇんで、別にケジメとらせたりもしてねぇっすけど』
「え、そうなの?」
『ウス。あ、卵持ってきます? 無精卵っすけど。温め練習してたやつ』
「それ、おふくろさんのヤツ?」
『詳しいっすね。いや、彼女のっすよ』
ンだよ彼女持ちとかリア充かよお前。ペッ。
……あ、でも今は私も嫁が5人いるんだった! 許す!
『じゃあ卵持ってきますんで是非!』
「あ、うん。でもドラゴンが生贄を要求してないってのに、鬼族の里では生贄を要求されているってのはどういう寸法なんだろうね」
『俺じゃぁないっすよ姐さん。そもそも人間とか食いませんし……あ、俺の彼女かなぁ? たぶん違うと思うんすけど、ちょっと聞いてみます?』
「お、そうか。彼女さんいるならそっちの可能性もあるのか。いこうか、巣穴の方?」
『うす。案内するっす』
と、ドラゴンはぴょこぴょこと向きを変え、バサッと飛び立つ。
さりげなく私を置いていこうとしたので、そっと転移でドラゴンの頭の上に立っておく。
『ひぃ! サンダードラゴンより早い!? 今どうやって移動したんすか!?』
「あ、彼女さんと2匹がかりなら私に勝てるかも、とか思わない方が良いよ」
『う、うす! ツレにもしっかり言い聞かせますんで!!』
こうして私はドラゴンの頭に乗って、巣穴へと向かった。








