儂が拵えた武器でも買ってくか?
アイシアについても酒宴は不参加でお願いした。
ほら、その、アイシアは私のだし。権利的に。奴隷と主人ってことで。
「まぁ奴隷が勝手に孕んで働けなくなる訳にもいかないしな。ちゃんと働くんだぞアイシア」
「父ちゃんに言われなくても忠誠誓ってるけど?」
「お前は昔から歌を歌ってばかりで家の仕事全然しなかったじゃないか。なぁパステル」
「そうだね。アイ姉は昔から――」
「それ以上はあるじ様には内緒で!……というか、パステルはなんでここにいるわけ?」
「私、正式に父様の第三夫人になったから。お母様と呼んでいいのよ?」
「え。妹が母親かぁ……うう、複雑ぅ」
うーん、色々気になる。妹が母親とか。
……あれか? 普通の人間の集落と考えたら、同年代の子が村長の第三夫人になったみたいな感じ? あり得ない話ではないのか。
一応この自慢げな顔からしてサクセスストーリー、玉の輿らしい。
「どうやら僕たちの言う兄弟姉妹や父母とは、意味がかなり違うようですね」
「そうだねディア君。頭こんがらがってきた」
『別に気にしなくてよくないすか? 自分にゃ関係ないってことで』
ドワーフの考え方については、ドラゴンのアーサー君が一番賢いかもしれない。
にしても単語帳使いこなしてるなアーサー君。話しながらパラパラと的確にディア君に見せて意思疎通してる。
ドラゴン語スキル有効にしてなくても普通に単語帳で会話出来そうだこれ。
「おおそうだ。カリーナさんや、儂が拵えた武器でも買ってくか?」
「お、いいんですか。まぁ現金あんまり持ってないんですが」
「酒払いでもいいぞ。ほら、これなんてどうだ」
そう言ってラフマンさんはごとりと拳銃を置いた。
しかもリボルバー式だった。わぁ、カッコいい銀色の銃だぁ。グリップは皮巻いてるのかこれ。
「って剣とか盾とかじゃないんですか!?」
「そんな古臭ぇモン作ってもそんな売れねぇしな。じい様の作った剣が未だに現役で使われてたりしてるしよ……」
あー、なまじ名工なもんだからそういう事が起きるのか。
そして物作りが大好きなドワーフが、銃みたいなアイテムに興味を示さぬわけもなく。
「その点銃はいいぞ、弾代はかかるが一方的に敵を殺せる。女子供でも冒険者を殺せる。冒険者としちゃサブウェポンに一丁持ってて損はない。護身用には最適だ」
確かにいざという時の切り札として持っておくのは悪くない選択肢ではある。
誰が使っても同じ攻撃力を叩きだせるということは、負傷や疲労で剣を振れなくなっても使えるってことだ。
「確かに悪くないね。ディア君の装備にしてもよさそうかな?」
「……なるほど、弾代がかかる、ってのがミソですね?」
「お、その通りだ。気付いたかエルフさんよ」
え、どういう事ディア君?
「……お姉さん、商人として考えてください。ドワーフの剣は長く使えて、しかも手入れも最低限でいい良品。つまり一度売ったらその後の収入は少ないんです。一方こちらは、物が良品な上に使うならどうしても弾代が必要になってきます。つまり、長く稼げるんです」
「その通りだ。特にコイツは銃に合わせた特製の弾丸が必要な代物。ちぃとばかし値は張るが、ま、アイシアの縁だ。銃を買うなら弾一箱をサービスしよう」
実際に手に持ってみる。しっくりくる良いグリップ。程よいトリガーの重さ。
おおー、これはいいものだ……!
「ああ、魔法陣を使って個人認証するからな。設定した使用者以外には使えないセーフティーを掛けてるぞ。敵に奪われても安心設計だ」
ナニソレ凄い。子供が誤って、みたいな事故も無くなるじゃん。地球の銃はこの仕様参考にしろよ、魔法ないけど。
「で、気になるお値段は?」
「金貨3枚、もしくは相当の酒でいいぞ」
「4丁買う。弾も金貨1枚分頂戴」
私はスッと金貨13枚を差し出した。
現金があんま無いといったな。あれは嘘だ。
いやぁ、先日のヒーラーとしての稼ぎがさらにあと金貨7枚あるからパーッとお大尽できるね!
1丁だけ買って複製するのもいいけど、アイシアやサティたんの実家相手にケチな真似したくないからね!
……まぁ弾も金貨1枚分買っとけば、複製して使ってても『まだたっぷり残ってる』といって追加で買わなくても不自然じゃないし。
「……アイシア、お前のご主人様気前良いな」
「ふふん、流石あるじ様でしょ」
「凄腕の商人ってことは分かった。こりゃ歓迎の宴だな」
アイシアが得意げに胸を張った。……いや、商人としては全然稼いでないんだけどね!