ドラゴンって何食べるの?
「あー、兵士さん。ウチのドラゴンがね、なんかそいつ媚薬嗅がされてたっぽいニオイしてたらしいって言ってますわ」
「媚薬?」
「無理やり発情させられたりとかだったんじゃないっすか。しらんけど」
「……というか、お主、ドラゴンの言葉が分かるのか!?」
いやうん。ドラゴンが人間の言葉分かるんだし、ドラゴンから教えてもらえば誰でも覚えられるんじゃねぇの。私、自力でもハイとイイエは分かったよ?
『……フツーに、ドラゴンがニンゲンに言葉教えるとかレアケースっす。自分で言うのもなんなんすけど、ドラゴンって基本傲慢で雑魚にはデカい態度とるんでぇ。しかも生まれてからずっとペットな負け組ドラゴンはドラゴン語分からんし』
雑魚のニンゲンごときに言葉を教えたりはしないってことね。納得。
「あー、まぁドラゴンの言葉が分かるスキル持ってるんで。詳しくは秘密っすわ」
「そんな限定的なスキルがあるのか……世界は広いな」
「おかげでコイツと会話できるわけっすね」
変に隠す必要もないので、正直に伝えておく。
「うむ。ピーキーなスキルを活用しているというわけだな。素晴らしい」
「それを踏まえてなんすけど。誰かが罪のないドラゴンを発情させて暴れさせた……ということも考えられますよねぇ。先日、カルカッサで帝国の工作員がダンジョンを破壊しようとして失敗した、というのもあるし、なーんか怪しいなぁって」
「……! その話は真か!?」
「ええホントですよ。カルカッサから来たんで。他の人にも聞いてみたらいいっすわ」
「帝国め、妙な動きを……それも手紙に書くか」
と、ドワーフのの兵士さんが報告書の手紙を書き上げたところで手紙を受け取った。
「前金で銀貨1枚払おう。残りは門で払うように書いたから、そちらで受け取ってくれ」
「うっす。承りましたー」
「では我々は暫くこのあたりを見回るとしよう。ご協力感謝する」
私は銀貨と手紙を受け取り、平たい亀に乗ったドワーフたちを見送った。
ふー、やれやれ。なんとかなったぜ。
『……助かったっす姐さん! 恩に着るっす!』
「なんのなんの」
コイツが踏みつぶした冒険者ってのを帝国の工作員みたいに匂わせちゃったけど、あながち間違いでもないだろう。コイツが嘘ついてたらしらんけど。
『にしても、ドラゴンの牙なんて持ってたんすねぇ。なんか申し訳ないっす』
「あー、じゃあ鱗とか何枚かもらっていい? 最近ポーション作りにハマっててさぁ、サンダードラゴンの鱗ってどのくらいの素材なのかな? って気になってて」
『へへっ! 姐さんなら構わないっすよ』
と、素直にも抜けそうなところを2、3枚ぷちっと口で抜いて渡してくれた。
『なんならこれからも定期的に鱗渡すんで、自分、姐さんについてっていいっすか? てか、自分が居ないと門とかで怪しまれるっすよね。申し訳ないっす』
「あー、そういやそうだね。んじゃよろしく」
『うっす! どうぞよろしくっす!』
言われてみれば。手紙に私がドラゴンを従えてるとか書かれてたら、居なきゃ困る。案外賢いじゃないかコイツ。
嬉しそうに尻尾をパタンパタンと左右に揺らすドラゴン。
「ドラゴンって何食べるの?」
『毒とかじゃなきゃなんでも食うっすよ。多少量は欲しいっすけど、なんならそこらの森とかで勝手に狩ってくるんで』
「ふーん。あ、それじゃ仲間に紹介しとかないとな。新しくペット飼うことにしたって」
『うっす! 自分はペットっす!……って、お仲間? ま、まさか、姐さんみたいなのが何人もいるんすか!?』
即座にペットの立場を受け入れたドラゴンが、びくびく震えつつ首を傾げた。
「……まぁ強さ的には私が一番強いよ。でも私の仲間を傷つけたり見下したりしたらお前殺処分だからな?」
『ヒィ!? だ、大丈夫っす! 自分、姐さんに牙を折られた大人しいドラゴンっすー!!』
軽く脅しをかけたら尻尾を抱くようにして丸まりおった。
うんうん、これなら皆に紹介しても問題なさそうだね!!








