種族推奨だったのか
早速カタログからドラゴン語を習得した……あ、これ魔力消費してる間ドラゴンと話せるタイプのスキルなのね。
スキルを発動して、改めてドラゴンに話しかける。
『で。あの馬車を追いかけていたのはなんで? ドラゴン語覚えたからそのまま話していいよ』
『あ、姐さん! ドラゴンの言葉を!? この短い時間で習得したというのか、なんて頭のいい人なんだ、凄い!』
私、姐さんって呼ばれていたのか。
『いやぁ、実は自分、発情期になっちゃってましてぇ……姐さんに一発殴られて正気を取り戻した的な? 普段は温厚で無害なんですよ、あ、襲われたら別っすけど』
『なるほどね。ん? っていうことはあのイグアナっぽい大きいトカゲに求婚しようと追いかけてたの?』
『いやいやとんでもない! あれオスっすよ! そんなのより、後ろ側の白くて素敵な彼女っす! 抱きしめたくてたまらない柔らかそうなボディーでしたねぇ!』
それ馬車だよ。幌馬だよ。
『そんな目で見られなくてもドラゴンじゃないのは分かってるすよ? これには理由があるんすよ。ほら、ドラゴンって基本最強生物じゃないっすか?』
『私にワンパンされといて最強生物とか笑えるんだけど』
『姐さんが強すぎるんすよ!! んで、むやみに増えないようにって竜王様からお達しがありまして。そこで性欲発散の代替品として馬車が推奨されてて……』
『……なるほどね?』
種族推奨だったのかドラゴンカーなんちゃら。
『にしても、姐さんホント強かったっすね! まさか一撃でのされるとは……あ、牙折れてる。へこむ』
『あー。くっつけとこうか? そういうのもできるんだよね私』
『へー、姐さんあんなに強い肉体なのに回復魔法まで使えるんすね。気持ちはありがたいっすけど、ドラゴンって普通の回復魔法じゃ効かないんすよ。魔法抵抗力も高くて』
『どれどれ?……うん、くっついた!』
『…………うわマジだ! 何者っすか姐さん!?』
試してみたら普通にくっついた。ま、普通の回復魔法じゃなくて神様の魔法だものな。
『まー、正気に戻ったってんならもう大丈夫だね。おうちにお帰り』
『え、いいんすか?』
『ここまで気さくに話し込んだ相手を殺す気にはなれないよ。私、そこまで鬼じゃないからね?』
『姐さんハーフオーガだったんすか。どおりで怪力なわけっす!』
『訂正。鬼じゃないからね私。種族は人間。……多分』
無敵の空間魔法が使えるだけで、魔力量以外はフツーの美少女のはず。スペック的には。
「いたぞー! ドラゴンだ!!」
『ん?』
声のした方を見るとフルアーマーのドワーフたちがこちらに向かって突撃してきていた。平たいゼニガメを巨大にしたような、四足歩行の大亀――その癖に土煙が出るほどに爆速で走る騎獣のようだ――に、仁王立ちで乗っている。
『げっ!? しまったドワーフっす、見つかったっす! 助けて姐さん!!』
『おい私の後ろに隠れるんじゃない! 私は無関係だろ!』
『ニンゲンは殺したらこっちが力尽きるまで群れで襲い掛かってくるから厄介で嫌なんすよぉー! あー、多分あの死体が見つかったんだ。自分に媚薬嗅がせてきた冒険者を踏みつぶしたやつ……』
なんだよ冒険者の仕業かよ。自業自得だな。
のんきにそんな言い争いをしてたもんだから、私とサンダードラゴンはドワーフに包囲されていた。とはいえ、空がまだ残ってるから逃げようと思えば逃げられるけど。……いや逃げろよ。なんで私の後ろで丸まってんの。
お、ドワーフの代表らしき髭の立派な奴が亀の上に仁王立ちしたまま話しかけてきた。
「そこな女人よ。我々はテッシン機動亀騎士団である。なぜドラゴンが貴殿の後ろにいる?」
『助けて姐さん! こいつらマジ厄介なの、匿って!』
と、縋りついてくるサンダードラゴン。情けな。ったく、仕方ねぇなぁ。
……てか、機動亀騎士団なんだね。え、ドダイタートルっていうの? まんま動く土台じゃん。すげーなこんなのも居るのか。
(うおおお、書下ろし割合増加中じゃーーーい!!!)








