我慢できねぇやつだな
ちなみに銃は海賊も使ってたけど、冒険者にはあんまり使われてないんだよなこれ。
表皮の硬いモンスターとかにあまり通用しなかったり、弾が小さくて1、2発じゃよほどクリティカルヒットしないと戦闘中は無視できる程度の傷にしかならなかったりで。
「犬ッコロが人間様の真似をするのが悪いんだ。まぁ、依頼とはいえ今ここに居合わせたのは本当に運が悪かったな」
「クッ……」
「おっと、それは許さないよ」
「ああっ、ポーションガー」
マシロさんが取り出し、飲もうとしたポーション(複製品)をけり飛ばし得意げなビーベイ。
「前々から気に入らなかったんだよ、獣人風情が調子に乗りやがって。お前らの風呂の後は毛だらけで、そこに入ると毛まみれになって汚れるくらいだぞ?」
「アタシの毛にまみれたことでもあるってのか? 女湯に入ったのかよド変態野郎」
「男湯だよ! 知らねぇオッサン獣人の毛だよチクショウ……」
ああうん、そりゃ気分は最悪にもなるね。うん……
「で、お前は何がしてぇんだよ……うぐ、いたたた」
「僕? 僕はな……このダンジョンをぶっ潰すんだ! 知ってるかい? ダンジョンってのは、世界を弱らせる寄生虫みたいな存在なんだ。これは正義の行いさ」
「な、何だってー、いたたた」
得意げにそう語るビーベイ。
それはさておきマシロさんの痛がりっぷりが棒すぎる件。よくバレないな。
「って、獣の頭じゃ理解できないよな。悪い悪い」
「つか、そいつはギドラーガ帝国が勝手にそう言ってるだけだろーがよ……お前、帝国の出か?」
「いいや。聖国の傭兵さ。だが、この仕事を終えた暁には帝国で勇者の地位を約束されているのさ」
わー、ぺらっぺらとよくしゃべる男だこと。
あ、ちなみにパーティーメンバーの4人はまともな感性を持っているのか必死に止めようとしているよ? 私がコッソリと全身固めて、ビーベイとマシロさんが二人きりで話す場を維持してるんだ。
「あー、聖国かぁ……獣人嫌いで有名な国じゃねぇか。で、そこの傭兵がなんで王国で帝国の操り人形なんてやってんだ?」
「は?」
煽られたビーベイがマシロさんの顔を踏みつける形で蹴りを入れた。
「え?」
が、当然のようにマシロさんは微動だにしなかった。
「あ、おいヒーラー。止めるなよ、もう少し聞き出せただろうが」
「……もういいだろう? 我はこれ以上は我慢ならんぞ」
「我慢できねぇやつだな……まぁ良い。コイツは大した事は知らなそうだしな」
困惑するビーベイの足を軽く手でどけ、コキコキと首を鳴らしながら立ち上がるマシロさん。そして体を起こす私。
「後ろの4人の方が重要な情報を抱えてそうだな。こいつはさしずめ案内人、もしくは囮か?」
「は、お前、なんで無傷――」
「では、尋問のために口は動くようにするか。……部分解除」
パチン、と手を叩き、4人を喋れるようにだけしてやる。
……おっと、4人は早速自決しようとしやがった。させねーけどな?
「な、し、舌を噛み切れ、ない、だと?! どうなって」
「ゴク……む!? 薬が消えた……!?」
「というか喋るなと言っただろうビーベイ!」
「(ブツブツブツ……)」
舌を空間魔法で保護してガード、薬は回収させてもらったからね。
あなたたちは死なないわ。私が守るもの!
私のマシロさんを銃撃しやがって。簡単に死ねると思うなよ?
「なっ――なにをした、白銀! うっ、なんだこれ、動かないぞ!?」
「何って。アタシはなんも? なぁヒーラー」
「うむ。我が魔法で固めた。やったのは我だ」
ついでにビーベイも動けなくしてやる。
まぁ、ただの人間や工作員が私の空間魔法に抗えるハズもない。あとはじっくり尋問していこう。
ビーベイをカチカチに喋れない程に固めて、収納空間にぶち込んでおく。
「ところでおぬし等にひとつ聞くが……なぜこの男がリーダーなのだ?」
「「「「……」」」」
4人に話しかけても返事をしてくれない。ちょっと寂しい。
「何も話さないのなら、この男の所業が個人的にムカついたので八つ当たりするが良いな? リーダーの失態は、パーティー全員で連帯責任だものな」
「「「「……」」」」
うん。いいらしい。
それじゃあ、マシロさんに銃撃したり悪く言ったのをコイツ等に反省してもらおうかなー。
……あ、そうだ。
こいつら、自決するほどに覚悟決まってるなら……逆に、逆にだよ?
こいつらの靴下に、『生き恥』でポイント付かねぇかな?
もしいいポイントが付いたら許してやろうかな! うふふっ!








