そうだね。色々悪用できちゃうね。
お風呂のお湯を入れ替えた。ふぁー、長湯でのぼせちゃったよぉ……
「いやー、わりぃわりぃ。風呂で興奮しちまってついやり過ぎたな」
「うぅ、このケダモノ……好きぃ」
「あははは。でも抵抗しなかったじゃんカリーナも」
確かにしなかったけどさぁ。……何の強化もしなければ私ってあんなにか弱くて、逆にマシロさんはとっても力強くてその、ああうん。凄かったとだけ。
生活魔法で毛を乾かし、ブラシをかけるマシロさんは嬉しそうだ。
しっとりマシロさんもいいけど、フカフカなのもやっぱいいな。好き。
「しっかし、依頼の間だけとはいえ風呂が使い放題かぁ」
「え? 別に依頼終わっても使っていいけど?」
私がそう言うと少し口を開けて首をかしげるマシロさん。
「何言ってんだよ。アタシはカルカッサの冒険者だ。町を離れる気はまだないぞ? それともお前もこの町に住むのか? 色々便利だしウチに住んでも良いぜ、歓迎する」
「んーとね。ならマシロさんの家にここに繋がる扉作っとくから。いつでも行き来できるよ」
「は?」
マシロさんが驚き目をくわっと開く。あれ、言ってなかったっけ?
「まてまて。ここってあの、リュックの中、じゃねぇのか?」
「ん? それは違うよ。リュックもここに繋がってるだけだから……そうだね、なんならここ経由でダンジョン奥からマシロさんの家まで徒歩数歩とかできるね。それどころか私が別の町にいたら同じくそこまで徒歩数歩ね」
「……マジかよ。アタシ頭良くないけど、それがやべーってことだけは分かるぞ」
そうだね。色々悪用できちゃうね。
「だからここでのマシロさんの行動範囲に少し制限かけとくけど、ご了承してね」
「お、おう。まぁいつでも風呂入れるっていうなら文句は一切ねぇよ」
本当にお風呂好きなんだなぁ……
あ、ちなみに替えたお湯の中にはたっぷりマシロさんの体毛が入っていたので、普段お風呂屋で嫌われがちなのは納得としか言いようがない。排水溝詰まるわ。
「はい、ここがマシロさんの部屋ね。家具とかはないけど、これ鍵」
「おう! 風呂の横な!」
部屋を作って鍵を渡すと、マシロさんは犬顔でも分かりやすい程、とても嬉しそうに笑った。
依頼が終わったら、マシロさんの家への直通路をこの部屋の中に作ろう。
「にしても広いなぁ。ウチより広いどころか、ギルドが丸々入るだろこれ」
「それなりに広くしてくれってリクエストしたのマシロさんじゃん」
「運動するのにいいだろ? なんかこう、ダンジョンみたいに暗いのに明るくて良く見えるのが不思議だなぁ」
広さはまるで体育館。バスケットやバレーボールもできそうだ、道具とメンバーが存在すれば。
「よしカリーナ、早速模擬戦でもするか? お前魔法禁止な。アタシも素手でやるし」
「魔法使いの私にそれは酷いルールじゃないかな」
「仕方ねぇな、身体強化だけいいぞ」
ふっ、ばかめ。私は無敵状態であれば負けることは無いぞ!!
……と、思っていた時期が私にもありました。
「効かないからって顔面容赦なく殴りつけてこないでよぉ!? 怖い怖い怖い!!」
「おら! 目ぇつぶんじゃねぇ、訓練にならねぇだろ! 耐えろ! それが嫌ならアタシを蹴っ飛ばすなりして距離を取れ!」
一方的に殴られるぅ! 一切痛くはないけど!
私の攻撃は避けられて当たらないしぃ!! んもー!!!
「フー、引き分けだな。いい汗かいたぜ。じゃ、風呂入るぞカリーナ! 来い!」
「あっあっ。マシロさん強引だよぅ、でもそこが好き……っ!」
「あと次はその防御魔法も禁止な。さすがに訓練にならなすぎる」
ひぇ。い、いいもん。私、訓練しなくても最強の空間魔法があるんだもんよぉーー!!








