そろそろ次の場所に移動しはじめてもいいかなって
そういえば練習した変身魔法、結局使わなかったなー、と。
そんなことを思いつつ、私は一旦ヒーラーの変装を解いて拠点に帰った。
「ただいまー」
「あ、おかえりなさいお姉さん」
「あるじ様、おかえりなさいませ!」
ディア君とアイシアの二人が出迎えてくれた。うんうん、いいよねこういうの! おうちに帰ってきたって感じで!
私はなんとなく二人をむぎゅーっと抱きしめる。
顔を赤くするディア君可愛い。
アイシアは犬尻尾があったらパタパタしてる感じだ。
「ふぅー、なんか久々に帰ってきた気がするよ」
「昨日はダンジョン行った後、どこ行ってたんですか?」
「そうですよあるじ様。晩御飯には帰るって言ってたのに!」
「あ、うん。マシロさんって冒険者に捕まっちゃって、お泊りしてきた。これがモフモフでね、なんというかステキな人で」
「へ、へぇ?」
ひくっとディア君の笑顔がひきつった。
「獣人の方なんですね」
「うん、全身モフモフタイプの白狼獣人で。狼の顔が凛々しくてカッコいいの。背は私より頭ひとつ分くらい高い感じだよ」
「へ、へー、そうなんですか……やっぱりカッコいい大人の男性の方が好み、ですか?」
お、ディア君もしかして嫉妬してた? うふふ、愛いやつめ。
「マシロさんは女の人だよ?」
「あ、そうなんですね」
「大丈夫! マシロさんも可愛いとこあるけど、ディア君の方が可愛いよ!」
あからさまにホッとするディア君。
……でもゴメン! 実際同じベッドで一夜を共にしたからわりと正解に近い!
お酒であまり覚えてないけどモフり倒して複乳吸ったらしいよ!
と、アイシアが昨日の晩御飯を持ってきたのでお昼ご飯として食べる。
お、このスープ美味しい……え、これダシに先日獲ったイエローホーネット使ってんの? このプリップリの白いのもエビじゃなくて殻を剥いたホーネット肉。エビじゃん。ホーネットは空飛ぶエビだったのか……うまうま。
「できたてのお料理を、こうして取り置きできるのは便利ですね。もっと大きい鍋がたくさん欲しいところです」
「そっか、そうだね。一度にたくさん作っておけば作り置きしておけるもんね」
鍋をいっぱいかぁ。簡単に作れるのは石鍋かな? くりぬけば完成だし。
あ、でも熱伝導的には鉄鍋の方がいいよね。アーマーアントの殻から自分で鍛冶して寸胴鍋つくってみようかなぁ。もぐもぐ。
「カリーナお姉さん、ダンジョンはどうでしたか?」
「うん、奥まで見に行ってきたよ。ま、神器だったけど流石に回収はやめといたよ。この町の基幹だから、回収したら町が崩壊しちゃうからね」
教えてくれたマリア婆には悪いけど、町を滅ぼしてまで回収する気はないのだ。
「そだ、マシロさんと合同で依頼受けることになったから、この後またダンジョンへ潜るよ。ヒーラーとしてだけど」
「あ、それなら私の出番ですね!」
「当面は私がヒーラー役するから大丈夫……いやまてよ?」
アイシアにヒーラーとして見張りしてもらっておけば、私はその間鍛冶とかできるじゃん。……そういやアイシアは奴隷なんだから、便利に使ってなんぼだよね!
「うん、やっぱりアイシアに見張りを頼もうかな。何かあったら転移ですぐ駆けつけるからね」
「はい! ヒーラー役、お任せください!」
アイシアはむふん、とやる気だ。……マシロさんには多少事情を話してもいいかな、マリア婆と同程度くらいには。
「そんで、新人商人カリーナちゃんとしてはそろそろ次の場所に移動しはじめてもいいかなって。獣人の国テラリアルビーとか、ギドラーガ帝国ってのを耳にしたんだけど」
「そのうちエルフの国にも来てください。歓迎しますからね」
「ドワーフの山もおススメですよ。みんなでお酒飲みましょう、楽しいですよ?」
……ドワーフの方はディア君の貞操が心配だから優先度は低めにしておこうかなぁ。








