第四章 -最終局面- 3 『伝説級の“力”』
「イグニギプスに、、アルメダ?」
「そう・・・貴様が先の《魔導騎兵》との戦いで破壊した複製品・・・そのオリジナルとなる剣だ」
「ーーー!?」
アルフレッドの言葉を聞いて、加藤は《怪物闘技》の闘技場で戦った《魔導騎兵》を思い出した。
確かに、あの機械仕掛けのモンスターも、今のアルフレッドのような 2対の剣を手にしていたはずだ。
だが、アルフレッドの手にある剣は、《魔導騎兵》が持っていた剣より かなり小ぶりに見える。
「《魔導騎兵》が持ってた剣に比べると、お前のは大分 しょぼく見えるけど?」
この一言は虚勢だ。
仲間を全滅され、再び 1人でアルフレッドに立ち向かわなければ ならなくなった自分を奮い立たせるための虚勢。
日本刀を抜刀して、腰を下ろした加藤は、とりあえず見てくれだけの構えを取る。
「ーーー私も、貴様の見てくれや種族を鵜呑みにして、貴様を侮っていたので多くは言わん。だがなーーー・・・」
瞬間、アルフレッドが右手に持つ《炎の剣》が、ブゥゥン と音をあげる。すると、広葉樹の葉に見られる葉脈のように、《炎の剣》の刃に無数に刻まれた筋が 紅く光だした。
「ーーー!?」
「この2対の剣の力が、先に戦った《魔導騎兵》の複製品と同様とは思わん方がよいぞ」
刹那、《炎の剣》を 加藤に向かって横薙ぎに振り払ったアルフレッド。
「ーーーっ!!?」
直感か・・・はたまた、これまでの戦いの経験からか、10数メートルは離れているアルフレッドが振り払った斬撃が、自分の命を脅かす攻撃である事を、加藤は瞬時に理解する。
加藤は、咄嗟に身をかがめ、アルフレッドの斬撃を躱した。
その瞬間、加藤の頭上ギリギリを、ボゴォ!! という歪な音とともに衝撃が撃ち抜いた。
「ーーーくそっ!!!」
アルフレッドの斬撃を回避した加藤。当然、彼の意識は、追撃を放ってくるかもしれないアルフレッドへ向く。
だがしかしーーー、
「・・・っ」
まるで、後ろ髪を引かれるように背後が気になった加藤。
敵は目の前に居るはずなのに、背後を見ておかなければ命が危ない、と加藤の経験が彼に問いかけているのだ。
「・・・くそ」
自分の内なる声に抗いきれず、一瞬ほどアルフレッドから目を逸らして、背後ーーー、斬撃が通って行った方に目を向けた加藤。
彼の行為は正しかった。
「ーーーは?」
加藤の背後には、スッパリ と焼き斬れた大地が広がっている。
比喩の類ではない。まさに大地が斬れて浮かび上がっているのだ。
アルフレッドが横薙ぎに放った斬撃は、加藤の頭上スレスレを通り過ぎて、彼の背後の地面に衝突した。
だが、斬撃の余波は そこで収まる事はなく、衝突した大地を斬り裂き、まるで包丁で野菜の皮を剥くかの如く、地表数メートルを広範囲に渡って削り取ったのだ。
次の瞬間、斬撃により斬り取られ、浮かび上がっていた地表が、ズズズズズズゥウン!!! と元の大地に沈み込んだーーー、と同時に、ブワッ と衝撃で土煙が舞い上がった。
「ーーーっつ、、、ぐわっ!!!」
大地が沈み込んだ衝撃によって舞い上がった砂利や小石が、加藤の身体に打ち付けられる。
あまりの衝撃と、身体全域に広がる鈍い痛みに耐えかねて、思わず その場に倒れ込んでしまった加藤。
もちろん、衝撃によって舞い上げられた砂利や小石は、アルフレッドの身にも振り返る。だが、その全てを《防御装》によって弾き返したアルフレッド。
数十秒は、舞い上がった砂利や小石の嵐は続いただろうか。
ようやく収まり、辺りに静けさが戻ってきた頃ーーー、
「分かっただろう?」
「ーーー!?」
アルフレッドが、ぼそり と口を開いた。
「この2対の剣ーーー、《炎の剣》と《氷の剣》は、太古の昔、《妖精族》によって鍛えられた伝説の剣だ。扱うには、かなりの魔力が必要になってくるが・・・いざ使えば、この地表に存在する全ての生物を根絶やしにできるほどの、圧倒的な“力” を使用者に与える」
「・・・っ」
「分かるな。私は、それほどの・・・伝説級の剣を使わなければ、貴様に勝てないと判断した」
アルフレッドは言いながら、今度は、左手に把持していた《氷の剣》の切っ先を加藤に向けた。
「貴様を、私の命を脅かす大敵と認めたのだ。加藤 兵庫よ・・・私は全力、全身全霊を以って、貴様を殺す。貴様も そのつもりで私にかかって来い!!」
次の瞬間、《氷の剣》の、深雪のように真っ白な刃に、ふつふつ と何かが浮かび上がってきた。
霜だろうか・・・透明な結晶のようにも見える。
「ーーー《氷の剣》」
「!?」
刹那、加藤へ切っ先を向けていた《氷の剣》を、勢いよく空へ掲げたアルフレッド。
「ーーーなんだ!?」
と、思わず口走った加藤だが、分かりきった事だ。
今の一連の動作は、アルフレッドの攻撃モーションだろう。
事実、アルフレッドが《氷の剣》を掲げた瞬間、加藤の周囲を、身が焼けるほどの冷気が包み込んだ。
「熱っ、、、」
思わず熱さを感じるほどの冷気。
つまり、生身で喰らえば 肉体に深刻なダメージを受ける一撃というわけだ。
次の瞬間、鞭のようにしなる暴風に足を取られた加藤。そのまま加藤は、凍りつくほどの冷気が荒ぶる竜巻に巻き込まれた。




