第四章 -共闘- 9 『これから・・・』
アルフレッドを両断した加藤は、上空で身をひるがえして 地上まで真っ直ぐに降りて行く。
その際、志摩 海との《入れ替え》により、加藤を戦場まで連れてきた志摩 空の身体を優しく抱きかかえる事も忘れないようにする。
約20メートル上空からの着地。
一般的な人間ならば、肉体を損傷して 死んでもおかしくない高さだが、加藤の《部分強化》で強化した両足ならば、難なく着地はできる。
加藤は、トンッ と軽い感じで、更地となった《岐阜の街》の地面に着地した。
「・・・」
着地した加藤は、すぐに倒したアルフレッドへ近づく。
アルフレッドの様子は酷いものだった。
左肩から右脇腹にかけて 身体が両断されており、溢れ出た血と泥が混じってドロドロの血溜まりを形成している。
コレをやったのは 加藤自身なのだが、半ば無我夢中の状態で放った一撃だったからか、自分の“能力” の恐ろしさに、今更ながら身が震える。
(・・・平気で人の命を奪うクソヤローってのは知ってたが・・・やっぱり、こうも無惨に殺しちまうと・・・)
思わず、加藤は戦闘中に見て見ぬふりし続けていた “良心” と向かい合い、少しばかり心を痛める。
いくら世紀末とは言え、いくらアルフレッドに負けられない理由があったとは言え、加藤も 少し前まで ーー実際時間は20年前だがーー ただの高校生だったのだ。
生き物を・・・“人” を殺めるのに、抵抗がない訳がない。
だがしかしーーー。
「・・・っ」
加藤は、思考を切り替えるように頭を振る。
(ーーー殺らなきゃ、俺たちが殺られてた。今は、仕方がねぇと割り切っとくしかないな・・・)
せめて、アルフレッドの死に様だけ忘れないように、その死体を目に焼き付けておく事にする加藤。
だがその時ーーー、
「ーーー!」
切断部・・・アルフレッドの左肩から右脇腹にかけての部分が、なにやら動いているように見えた気がした。
ちょうど、昔の教育番組で見たことがあるような、プラナリアの再生動画のように、細胞や肉片が、ウゴウゴ と蠢いているような・・・。
「??」
思わず、加藤は目を擦って、もう一度アルフレッドの死体をよく見る。
と、その時だーーー、
「ーーー聞いてなぁい!!」
「ーーーっ!?」
今まで静かだった海の双子の姉である空が、突如 叫びを上げた。
彼女の悲痛な叫びは、通信状態だった斑鳩の《受信と送信》を通して、今回のアルフレッド討伐作戦に参加した 8人の脳内へ存分に響き渡る。
「ーーーこんなの聞いてなぁい!! 私は、ただ、加藤さんを、街の中まで、《入れ替え》で、運べとしか、、、聞いてなぁい!!!」
言葉切れ切れに叫びをあげる空。
確かに、唯一 空には詳しい内容を伝えずに作戦に参加させた。
その反動が、今になって押し寄せたのだ。
「何あれ!? 何なの!? 海と《入れ替え》で街に飛んだら空の上でさ!! そっから、よく分かんない内に、加藤さんが ザパーッって剣振って、、そんで人がズパーッ って斬れて・・・キレたいのは、こっちじゃァァァァアア!!!」
半ば、キャラを崩壊させて叫ぶ空。
だが、彼女の怒りは ごもっともなので、他の8人は何も弁明する事ができない。
ただ、耳を塞いでも聞こえてくる空の慟哭を、右から左に受け流すしか出来なかった。
***************
アルフレッドが倒されて数分後、志摩 空を除いた、加藤、島田、アゲハ、シャノン、斑鳩、四門、五島、志摩 海の8人は、《岐阜の街》中央に集合していた。
「ーーー何はともあれ、ようやく勝てたな」
安堵の溜め息混じりに そう言ったのは島田だ。
よほど安心したのか、島田は、そのまま何もない更地に腰を下ろしてしまった。
そんな島田の姿を見た 他7人も、緊張の糸が切れたのか、その場に座り込んでしまう。
「そうだナー。マ、街の この状態を見る限り 素直に喜べねぇガ、一先ず 安心ダ」
シャノンの言う通り、《岐阜の街》の中央付近は、アルフレッドによって更地にされてしまっており、壁付近には瓦礫の山脈が形成されている始末だ。
《岐阜の街》の住人たちが、すぐに元の生活に戻る事は難しいだろう。
「まったく・・・この街の状況を、櫻井さんにどう説明すりゃいいんだか・・・」
やはり、街の惨劇に1番頭を悩ませているのは、《岐阜の街》防衛主任を任されていた斑鳩だ。
頭を抱えながら、櫻井への説明や、棲家を失った住人の対応に四苦八苦している。
「そんな悩むなよ、斑鳩。街の再建や避難地の選定なんかは ギルド長が上手くやるだろ。お前は戦闘で役に立ったんだから、そんくらいは他人に任せろよ」
「簡単に言うなよな、五島・・・」
「住人の住処については、岐阜にある各街に依頼するのが現実的ですね。不幸中の幸いか、先の《怪物災害》で各街々の住人の数が減っています。各街の空き家は、 《岐阜の街》からの避難民に そのまま利用できますし、避難民は各街の復興の人足としても利用出来るはずですから、断られる心配はないと思いますよ」
「島田は、淡々と怖いこと言うなぁ」
「現実的な話をしてんだよ。問題は、《岐阜の街》の復興だ。こうも崩壊した状況だと、ここに住み続けるのはムリだろうし・・・最悪、ここを放棄する覚悟もいるかもだな」
「そんな・・・っ!! ここは、櫻井さんの思い出の地なんだぞ!!」
「いや・・・でも斑鳩さん。この崩壊っぷりじゃ・・・」
激戦の後だが、自然と、これからどうするかと言う話題にシフトしていく島田たち。
それも当然の流れだ。
世紀末の世で、住む場所がないなど死活問題以外の何ものでもない。
モンスターや盗賊に襲われる危険があるし、そもそも、大人数で野宿を続けるなど不可能に近い。
喧喧諤諤の議論が続く中、誰も、倒れ 血を流すアルフレッドに意識を向ける者は居なかった。




