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【コミカライズ開始記念】番外編.精霊の目覚め

《その声》が聞こえたのは、ある日突然、というわけではなかった。

 

 地上と遮断されてしまった暗闇の中にヴァルティスとティティアは暮らしていたけれども、ときどき祈りは届く。

 ただこの何十年も、祈りはずいぶんと弱くなってしまって、かろうじてぼそぼそとした声が聞こえ、ヴァルティスとティティアが存在を留めるのにようやく足りるという程度だった。

《その声》も、最初はそんなうちの一つだったのだ。

 

 けれども《その声》は途切れなかった。

 最初はおずおずと、けれども日ごとに語りかける頻度を増し、親しさを増した。

 

『ねえ、ティティア、また聞こえるよ』

『言わなくてもわかってるわよ。今日はクッキーを供えてくれたみたい』

『おいしそう! あーあ、地上に行けたらなあ』

 

 ヴァルティスがぽつりと呟く。

 昔は、精霊も地上と天界を行き来することができた。でも地上へ行けなくなって、人々の祈りが弱くなって、その道は断たれてしまった。

 

 シルフィアの祈りはまっすぐで、感謝の気持ちにあふれている。

 地上に降りられない自分たちがどんな恵みをもたらしたのかを、ヴァルティスとティティアはシルフィアの祈りを通じて知ることができた。

 

 精霊と人間の関係が元通りになるには、まだまだかかるかもしれない。それとも、ずっとこのままかもしれない。

 

 真っ暗闇にふわふわと浮かびながら、ヴァルティスはぷうっと頬をふくらませる。

 

『もーっ!! なんでこんなところにいなきゃいけないのさー!!』

『しっ、ヴァルティス。あの子がなにか言っている』

 

 鋭い声でたしなめられ、ヴァルティスは口をつぐんだ。

 耳をすませば、たしかにいつもの少女の声が、一生懸命にふたりに話しかけていた。

 

 ――ヴァルティス様……ティティア様……わたし、……で……の役目を……。

 

『……』

『……』

 

 よくわからずに首をかしげるヴァルティスの隣で、ティティアは興味深そうに目を見開いている。

 

『なに? わかった?』

『あの子の名前、シルフィアだって』

『シルフィア!』

 

 ぴっとヴァルティスは尖った耳を動かした。

 

『シルフィア、シルフィアだね』

 

 これでもう、『あの子』と呼ばなくてすむ。

 名前がわかるくらいに人間の側から話しかけてくれたのも久しぶりのことだ。どうして名前を教えてくれたのだろうと思ったら、ティティアの話には続きがあった。

 

『シルフィアは、神殿に住むことになったのですって』

『神殿に?』

『そう。そこで毎日、わたしたちのために祈りを捧げてくれるらしいわ』

『え! じゃあ……』

 

 いまはどうなってしまっているかわからないが、清められた神殿には祈りの力を増幅させる効果がある。

 これまでもたくさん話しかけてくれていたシルフィアなら、状況を変えてくれるかもしれない。

 

 それに、なにより――、

 

『楽しみだなあ。たくさん声を聞いて、それにもしかしたら、会えるかもしれないんだ!』

 

 先ほどよりも大きな円を描き、ヴァルティスはぐるんぐるんと宙を飛ぶ。

 嬉しくてじっとしていられないのだ。

 

『早く会いたいな、シルフィアに』

『今から浮かれすぎないようにね』

 

 ティティアは肩をすくめてため息をついたけれど、ティティアだって楽しみにしているのは、やっぱり尖った耳がぴこぴこと揺れているからわかった。

本作のコミカライズ『お飾り聖女のはずが、真の力に目覚めたようです THE COMIC』が本日よりMAGCOMI様にて連載開始です!

作画をご担当いただくのは武田みか先生です。


ふんわりと柔らかな雰囲気がシルフィアや精霊たちにぴったりでかわいいな…とほくほくしております。

とくにシルフィアはコミカルな表情も織り交ぜていただいて、私が書いていた以上のキャラにしていただいたのではと…!

リュートも真面目さややさしさが伝わるヒーローになっていてかっこいいです♡


今回のSSはコミカライズ第1話の前日譚的な、シルフィアが神殿へ通うことになったころのお話を精霊視点で書いてみました。

会えないし話もできなかったところから、本編で「やっと会えた~!」になるんです。


↓↓ページ下部↓↓にリンク貼っていますのでぜひご覧くださいませ~!

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