表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/23

13.5.アントニオ吹っ飛ぶ

「――シルフィアは?」

 

 国王がふりむくと、気を失ったシルフィアはリュートに抱きあげられていた。

 濡れたまぶたに口づけを落とし、リュートは眉を寄せる。

 

「シルフィアにはつらい光景を見せてしまった。様々なことがありすぎました」

『それにマリリアンヌ……彼女の瘴気もすごかったものね。シルフィアへの憎しみが嵐のように身体の中に渦巻いていたわ。中てられてしまっても不思議じゃない』

『シルフィアー……せっかくこっちにこられたのに、ちっとも遊べないよ』

 

 二柱の精霊もシルフィアの顔をのぞきこみ、それぞれ頬に口づけした。瘴気を祓い、早く回復するようにとの想いを込めて。

 リュートはそんな光景に口元をゆるめたが、すぐに厳しい目つきになって国王へ向き合った。

 

「父上。あとでお話ししたいことがあります。シルフィアの処遇について――」

「父上! それなら俺も」

 

 リュートが言い終わらぬうち、アントニオが肘で押しのけるようにして割り込んでくる。

 

「先ほどの話は本当ですか!? 俺はシルフィアと結婚して、国王に――こうして見れば、かわいい顔をしているじゃ――ヘブッ!!!!!」

 

 目をギラギラと輝かせて眠るシルフィアを覗き込もうとしたアントニオは、次の瞬間、青の文様の壁に叩きつけられていた。

 白目をむいてしまったアントニオに先ほどの自分を思い出したのか国王が顔を引きつらせる。

 風をくりだしたティティアが腕をさげると、アントニオの身体は壁に沿ってずるずると倒れ伏す。

 

『だめよ。あの男とシルフィアは結婚させない』

『そうだよー! シルフィアが好きなのは……』

『シッ、そういうことは外野が言わないの。人間はムードを大切にするんだから』

 

 幸か不幸か、そのやりとりはリュートには聞こえなかった。

 リュートはいつまでも腕の中のシルフィアを見つめていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ