プロローグ◉
※注、この物語はフィクションです。実在の町、団体、組織、人物、史実とは一切、何も関係ありません。
一年前 8月20日 長崎市 某山中
その日、長崎県長崎市のとある山中では多くのパトカーが集まっていた。
「今年もまたか」
長崎県警察の佐野刑事の目の前には、全身黒焦げの死体が横たわっていた。
「被害者の名前は瀬尾拓也、22歳。職業はホストクラブ従業員。死亡推定時刻は8月15日の21:00〜23:00の間。死因は焼死。発見者は山菜採りをしていた老人、副島清蔵さんのようです」
その隣には相棒の杉浦刑事が淡々と答えていた。
「行方が分からなくなったのは、8月15日の祭りの日、友人と別れた後に姿を眩ましたそうです」
「たくっ! 毎年、お盆の後は犠牲者が絶たねえな」
佐野刑事にとって、この事件は初めてではなかった。
「おい、本当に殺されたんじゃねえよな?」
「昨年、同じ犠牲者の検死によると、ガソリンなどの成分は検出されず、薪などの木材で燃やされた後もありませんでした。この人もおそらく」
佐野刑事は相棒の言葉に眉をひそめた。
「じゃあ、なんでこの仏は黒焦げなんだよ?」
すると、杉浦刑事は言いづらそうな表情で呟く。
「あり得ない話かもしれませんが、おそらく自然に起きたものではないかと」
その時、佐野刑事は怪訝な表情を浮かべた。
「は? 自然に起こったもの? 自然発火とでも言いてえのか?」
「そう考えるとしか……」
その言葉に佐野刑事は激昂した。
「馬鹿言ってんじゃねえ! 人間が自然発火なんてするわけねえだろ!」
佐野刑事の怒声に周りの警察官が注目を浴びる。
「毎年毎年、人の命を祭りの生贄みたいに扱いやがって! 絶対に犯人を捕まえてやる!」
佐野刑事の言う通り、この怪死事件はこの長崎で毎年行われる夏祭りの後に起こっていた。
祭りが終わるその深夜に、必ず祭りに参加した一般人、一人が行方不明となり、後日、焼死体として発見されてしまう。
犯人の手掛かりも一切何も掴めないどころか、犯人すらいるのかも疑われ、何度も捜査が打ち切られる事もあったが、事件は必ず毎年の夏祭りに起きており、佐野刑事は何としてでも犯人の足を掴もうと奮闘していた。