私の居場所
聖なる夜
待ち合わせ場所
鳴り響くスマホ
表示されたのは
裏切りのメッセージ
頬伝う涙
イルミネーションの灯りが
滲んで
空っぽの心
サンタクロースの微笑みが
ものを売るための
偽りの笑顔にみえる
歪んで見える視界には
母親と父親に挟まれて
幸せそうに笑う子供
私もあの頃に戻れたらどれだけよかっただろう
あの人と出会ったのはちょうど一年前のクリスマスだった
一人寂しいクリぼっち
街中を歩いていたら声をかけられた
「すみません、ハンカチ落としましたよ」
「あ、ありがとうございます」
それから食事に誘われて、三か月後には付き合うことになった
春にはお花見に行った
満開の桜の木の下にブルーシートを敷いて
私が作ったお弁当をおいしいおいしいって何度も褒めてくれた
夏には花火大会に行った
屋台の金魚すくい
何度やってもうまくいかない私を優しい言葉で励ましてくれた
秋にはハロウィンパーティーをやった
私は魔女あなたは狼
私に可愛いねって言ってくれた
そして
出会って一年の今日
私の隣に彼はいない
涙が枯れ、心が萎れたころ家に帰ろうと歩き出したとき
聞き馴染みのある声が私の名前を呼んだ
振り返ると彼がいた
「どうして?今日は来れないって」
「うん、ごめんね。本当は日をまたぐ前に会いたかったんだけど間に合わなくて」
「え?どういうこと?」
「昨日12月24日が僕たちが出会ってちょうど一年の記念日だったでしょ。だから昨日のうちに言っておきたかったんだ」
「なにを?」
彼は小さく深呼吸をした
吐く息は白い
「僕と結婚してください」
私はさっきのとは違う涙を流しながら答えた
「はい」
その後、二人で街を歩きながら、紛らわしいメッセージを送ったことに文句をいってやった
彼はすまなそうな顔で何度も謝った。
頬を膨らませて拗ねてみせると彼は
ぎゅっと抱きしめてくれた
ああ、なんて幸せなんだろう
彼の腕の中が私にとって最高の居場所なんだと
心の底からそう思えた