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9:王都追放




 あれから国王陛下と王妃様は、使わない物を《リサイクル》することにハマったらしい。

 城内にある使わない私物を集めては、私に《リサイクル》させ、しまいには王家直轄地にある別荘へ掃除に出掛けることになった。


「じゃあ、儂らは先に行って不要品の選別をしておるからな」

「早めに来てねぇ、キヨコちゃん」

「フェリクスからの怨念がこもった物は、全部りさいくるじゃ……」

「妊娠していた頃のドレスとかがあっちのお城にたくさんあるのよねぇ~、うふふ」


 突発的に国の最高権力者が城を出てもいいものなのか、と思いつつ、私は神官長とアクロイドと共に、国王陛下たちの馬車行列を見送った。





 さて、私が国王陛下たちの馬車に乗っていかなかったのは、他の予定があったからである。今日はもともと神官長と一緒に王都にある神殿へ顔を出す予定だったのだ。

 それなのに国王陛下達はどうしてもすぐに別荘の掃除がしたいと言って、《リサイクル》の力を持つ私を置いて先に直轄地へ向かっていってしまった次第だ。


 まぁ掃除熱って、熱くなっているときは本当に居ても立ってもいられないほど掃除がしたくなるもんねぇ。国王陛下たちの気持ちはわかるわ。


 というわけで、神官長とアクロイドと馬車で神殿へ移動だ。

 今日はいつも護衛をしてくれるシスがエリックの視察に付いて行ったので、神殿から護衛騎士を派遣してくれている。

 ちなみにエリックの視察と言うのは、上下水道の工事のためにあちらこちらの土地や川を調べてくるらしい。


「アクロイドはエリック様に付いて行かなくて良かったの?」


 馬車の向かいの席に腰かけていたアクロイドは、こくりと頷く。


「……僕が担当したのは、ろ過装置や上下水道に使う管なんかを作るところまでだ。実際の水道施設を作ったり、地中に管を通すのはまた別の魔術師の管轄だよ」

「そうなの」


 魔術師と言っても、研究派と技術派といろいろ居るらしい。私にはたぶん違いがわからないけれど。


 私たちの会話を、神官長が嬉しそうに聞いている。


「異世界の高度な知識のおかげで、民の暮らしもより良いものとなりましょう。私たちの神殿でも糞尿処理は大きな問題でしたから」

「神殿ではどう処理していたのですか?」


 神殿でもやっぱり窓から投げ捨て方式だったのだろうか。

 そう思って尋ねれば、城よりはずっとマシな方法だった。


「神殿の裏にある山に大穴を掘って、そこに貯めておりました。しかし大穴一つでは足りなくなり、どんどん穴を掘っては満杯になるの繰り返しでして……。このままではもう掘る場所が無くなるところでしたので、上下水道という考えには実に感銘いたしました。きっと神もお喜びになるでしょう」


 神官長の話を聞いているうちに、山の麓にある白亜の神殿が見えてきた。

 お城と神殿はそこまで離れた場所に建っていないので、移動距離は短かった。城下の町すら通らずに辿り着いた。


 白亜の神殿の前には、ずらりと神官達が並んでいる。たぶん召喚の儀式のときにも居た人たちなのだろう。

 私たちが馬車から降りると、神官達は深くお辞儀をした。


「ようこそいらっしゃいました、聖女キヨコ様、魔術師アクロイド様。我ら一同、心よりお待ち申し上げておりました」

「本日は聖女様のお力添えを頂けると伺っております。どうぞよろしくお願い致します」

「はい、頑張ります」


 今日は神殿の視察ついでの掃除だ。

 けれどお城ほどに障気に侵されてはいなかった。神官長に聞くと、神官達は皆実に質素に暮らしているということで、私物の類いはほとんど持っていないらしい。いわゆるミニマリストだ。神官長ですら、替えの洋服と蝋燭、そして聖書だけが持ち物らしい。

 その上、修行の一貫で雑巾掛けの時間があるらしい。そのおかげでこの神殿は障気を阻むことができており、障気に対する最後の砦と言われているそうだ。


 なので、私はどうしても汚れがちな台所の《清掃》と、馬車で聞いた裏山にあるたくさんの大穴の糞尿を《リサイクル》することで終わった。

 洗剤を全種類持ってきたけれど、あんまり活躍できなくてちょっぴり残念。

 だけど神官達は私の未知なる力に驚き、子供のように目を輝かせていた。


 そして神殿にある宗教画や神々の像を見せてもらって、ちょっとだけお茶をしてからお城に帰ることになった。





「キヨコ・アオベは聖女の名を騙る真っ赤な偽物である! 本物の聖女はここにいるランジェス子爵家の娘、プリムローズである!

 よってキヨコ・アオベは王都から追放する! 聖女が偽物なのだから、そのパーティーも偽物である! 勇者エリックと、魔術師アクロイド、剣士シスも追放処分だ! 城の中には一歩も入れぬぞ!」


 お城の門の前で、第二王子カルロスがそう叫ぶ。

 カルロスの隣にはニヤニヤ顔のフェリクス王弟と、新たなる聖女らしい、気の弱そうな栗毛の美少女が立っていた。


 私とアクロイドは馬車の窓からカルロス達を見つめ、「なにあれ」「親の居ぬ間に悪さをやらかす典型的なクソガキじゃん……」と話し合う。

 ちなみに神官長とは神殿で別れたので、馬車の中にいるのは私たち二人だけだ。馬車の回りには神殿から借りたままの護衛騎士が数人いるが、あとは御者だけである。


「どうする、キヨコ?」

「どうせカルロス王子はあとで両親に怒られて最悪除籍の流れなんだろうけど……。私はもともと国王陛下を追って王家直轄地に旅立つ予定だったしなぁ。別に王都から追放されても問題ないかなぁ」

「……じゃあ、このまま陛下の元へ行こう」

「いいの、アクロイド? アクロイドだけでもエリック様に合流した方がいいんじゃない? それに旅支度とか旅費とかさぁ……御者の方も急に言われたら困るんじゃない?」

「金なら持っているから、必要な物は途中で買えばいい。御者も馬も国王陛下のものだから、陛下の元へ馳せ参じることを厭いはしないだろう。……それにエリック様もカルロス様の馬鹿には辟易してるから、僕らが国王陛下の元へ逃げたと知ればこれ幸いと追っかけてくると思う」

「そっかー」


 というわけで、私たちはそのまま王家直轄地へ旅立つことになった。


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