始まりの町1
次に目が覚めたのは、草花生茂る広大な草原の上だった。
「う・・・ここ何処?」
重い身体を起こし、ふらつく足取りで立ち上がる。何日間も眠っていたような気怠さが、全身にズンとのし掛かる。
寝ぼけ眼を擦り、周囲を見渡す。
周りに広がるのは一面の草原だ。まるでロールプレイングゲームに出てくる最初の方のステージの様な光景で、心落ち着く場所である。
「なんでこんな場所なんかに・・・」
頭がぼーっとする。
さっきまで何処に居て、何をしていたのかも思い出せない。
今思い出せるのは自分の名前ぐらい。頭が冴えるのはもう少し時間がかかりそうだった。
下ろし立ての白いジャージに付いた草花を振り払い、大口開けて欠伸をする。
おーい・・・
何処からか声が聴こえる。何度も繰り返される叫び声は、しばらくすると徐々に大きくなり、それが近づいて来ていると分かった時には、声の方角から人影が複数迫っていた。
小さな人影に追われる大きな人影・・・。目を凝らしてみると、それが化け物に追われる男だと分かった。
身長1メートル程の緑の体の小鬼の怪物。ファンタジー物の漫画やゲームに出てきそうな姿をしたそれは、手に大きな棍棒を持っていた。体の大きさに合わない武器を振り回しながら、数匹の化け物はこちらに向かっていた。
「え、あれゴブリン・・・?」
初めて見る姿に背筋がゾッとした。夢にしては出来すぎている程ハッキリとした姿のゴブリンは、目の前の男を今にも殴りそうな勢いで追っていた。
「早く、早く逃げるんだ!」
背中に大量の荷物を背負った男は、走りながら両手で大きく逃げろとジェスチャーをする。
顔面蒼白で迫る男の声で、全力で逆方向へと走り出す。
「やばいやばい、本物のゴブリンじゃん!」
追って来るゴブリン達は雄叫びを上げ、2匹の獲物を追って楽しんでる様だった。
捕まれば殺され、奴らの餌食になるだろう。悪いイメージが頭をよぎる。
「こっち来るなって!、最悪!」
全身全霊で駆け出すが、数十秒走った所で足が縺れて、酷いフォームで花畑に顔面からダイブしてしまう。
身体が思いどおりに動かない。起き上がる前に男に抜かれ、獲物を前にしたゴブリン達に囲まれた。
「おい、大丈夫か!」
男は遠くでそう叫ぶが、状況はその真逆だった。
ゴブリン達は、目の前の間抜けな獲物を嘲笑う。獲物を追い詰め、後は狩るだけだ。
「い、嫌・・・、来ないで・・・」
恐怖で腰の抜けた獲物に、ゴブリン達は一斉に襲い掛かった。