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亡者よ、明日をつかめ  作者: イシハラブルー
第2章 死闘激化
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第七編・その4 契約 -contracts-




「絶対立ち止まるな! 標的になる、動き続けろ!」


 残された警官たちに向け、櫛谷(くしや)警部は号令をかけた。

 来たときにはまぁまぁ広いと思っていた公園が、今はやけに狭く感じる。もちろん短時間で実際に公園の面積が狭くなるはずも無いので、それは恐怖心が生んだ錯覚に過ぎない。

 それでも……恐怖に襲われながらも彼らは強大な霊獣を相手に必死になって抗い続けた。

 誰かが壁際に追い詰められると、すかさず別の誰かが霊獣の気を引くため、銃弾を放つ。霊獣相手には蚊の刺すようなダメージ、何百発、何千発撃ち込んだところで倒すことなど絶対に不可能だが、それでも命を救うくらいなら出来る。もう誰も死なせない。

 ただ問題なのは、その残弾の数も残り少ないと言うことだ。


「いいか目を狙え! 奴の視界を封じるんだ!」


 先ほどから口が酸っぱくなるほど櫛谷(くしや)警部はそう指示している。

 いくらなんでも眼球は鍛えられないだろうという推測、そして目を潰せばいくらか脅威を和らげられるだろうという期待。

 実際問題、それは唯一と言っていいほど有効な攻撃である。

 しかし、いくら優秀な警官でも標準器の無い普遍的な拳銃で、大きさがピンポン球程度しかない上に不規則に動く的を射貫くのは至難の業だった。結果、無駄弾がかさんでいく。おまけにあたりもどんどん暗くなってきて、むしろ彼らの方が視界を奪われていく。

 すると警官が1人、弾倉に弾を込めながら櫛谷(くしや)警部の肩越しで静かに言った。


「警部……そろそろ撤退も視野に……」


 その進言を受け、櫛谷(くしや)警部は辺りを見渡した。

 実はこの時、公園は完全な密室で無く、逃走経路が1つだけあった。本来の出入り口は相変わらず炎が燃えて近づけないものの、霊獣が食い破ったフェンスを抜ければ、外に出ることは可能なのだ。

 つまり逃げようと思えば逃げられる。

 しかし割と早い段階で皆気づいていたにもかかわらず、そうした者は5人といなかった。


「ここで我々が退けば……この化け物も公園の外に出てしまう。その意味が分からないわけじゃないだろう」


 そう言った櫛谷(くしや)警部の眉間には深い皺が刻まれていた。

 このまま霊獣を外に解き放てば、街が大変なことになる。訓練を積んだ警官たちでさえまともに太刀打ちできないのだ。まして何ら特別な力を持たない市民がこの化け物に鉢合わせたら、結末は既に決まっている。

 確定している未来の悲劇――

 それが彼らが退くに退けない理由だった。


「分かっています……。しかしもはや私たちではとても……」


 持ちこたえられないだろう。

 警官は未だ元気に同僚たちを追い回す化け物を見て、不安の色を覗かせた。

 もしこのまま弾が尽き果てれば、もしこのまま日没を迎えれば、今までの抵抗もあっけなく潰えるだろうと思っていた。

 市民の命は確かに大事だ。けれどもだからといってこんなところで死にたくは無い。こんな訳の分からない恐ろしい化け物に食われて死ぬなんて……怖い。

 警官の懇願を一身に受ける櫛谷(くしや)警部は表情を変えなかったが、内心では揺れていた。

 そもそも今この窮地に陥る決定打を打ってしまったのは自分であると思っていた。

 もしあの時、自分がリョウキに銃を向けなかったなら、何事も無かったのでは無いか? だったら、なぜ彼らをこんな危険に晒せるのか……。しかし警察官としてここで退いて本当にいいのだろうか? 警部は長きにわたって自問自答した。

 その逡巡の果てに、「今、弾は何発ある……?」と総員に確認をとった。


 占めて26発……。


 既に何名かは弾切れを起こしている。さらに現在時刻から日の入りまでは30分を切っていた。


「…………そうだな……ここらが潮時だろうな」


 と自分に言い聞かせるように言うと、櫛谷(くしや)警部は音を拾い逃さないようにインカムを口に当たるほど近づけた。


「総員に次ぐ……。このままではもはや全滅は免れない。速やかに総員…………撤退せよ」


 ついに撤退命令が下る。

 警官らは複雑な心境を抱えつつ、どこか安堵してその指令に従う。


「弾が残っている者は援護を、攻撃を頭部に集中させよ。外に出た者は速やかに現場から離れるんだ。くれぐれも油断するな」


 薄暮の公園で火花が咲いては散る。1人、また1人と警官らは破れたフェンスから外へ脱した。そして最後の1人も無事に脱し、残るは警部1人となった。


「警部、急いで」


「うむ」


 最後に残った警部には援護も無い。しかし距離からしてなんとか逃げ切れそうだ……。

 と、思ったのもつかの間。赤い火の玉が暗闇に浮かぶ!

 思わず足がすくむも、櫛谷(くしや)警部はとっさの判断で横っ跳びした。


 ドガガァァッ!!


 その判断は英断だったと言える。もしそのままでいたら警部は丸焼きにされていた。

 しかし悲劇は起きた。警部が逃げようと立ち上がって足を着いた瞬間、刺すような痛みが。


「しまった。足がっ」


 どうも足をひねったらしい。ジンジンと痺れ、走ることままならない。

 ほんの7メートルが、途端に遠くなる。そして霊獣が迫り来る。


「くっ……」


 この足で逃げるのは無理だと櫛谷(くしや)警部は悟った。

 さりとてこのまま何の手も打たず、黙って死にはしない。最後の2発が入った拳銃を、ホルスターから引き抜いた。


「……」


 これを外せば死ぬ……。それが二回……。

 だが櫛谷(くしや)警部は自分でも驚くほど落ち着いていた。

 引きつけて……引きつけて……、確実な機を待った。


 ガウンッッ!!


 乾いた銃声が鳴り響く。そして櫛谷(くしや)警部の眼前で霊獣はのけぞった。

 精密な射撃が見事霊獣の右目を撃った。血とも違う、この世の物では無い液体が飛び散った。そして一瞬で蒸発した。


「もう1発……」


 すぐさま装填して構えた。引き続き命をかけた大勝負……。しかし、怒った霊獣が尻尾を鞭のようにしならせた。それは警部の手首を打ち、衝撃で銃は手からはじかれた。


「うっ!」


 隻眼の霊獣が首を振って咆哮する。片目を失って、むしろ無傷の時よりもまして強者の畏怖は醸し出される。

 だが諦め悪い警部はこの絶望的状況でも諦めていない。無事な方の足でダイブ、はじかれた拳銃をつかみ、地面を転がった。


 この1発で希望を繋ぐ!

 

 櫛谷(くしや)警部は膝立ちで銃を構え、間髪入れずに引き金を引いた。


「…………」


 引いた。確かに引いた……。

 しかし待てど銃声が鳴り響くことは無かった。

 二度、三度と引き金を引くが、弾が発射されない。どこか故障したらしい。どうやらはじかれ、地面に落下した衝撃で機構に以上が生じたらしい。そうなるとそれはもはや拳銃では無く、拳銃の見た目をした金属の塊だった。

 櫛谷(くしや)警部は冷や汗を垂らした。霊獣は涎を垂らした。そして霊獣は警部のことをひったくるように咥え上げた。


「うおあぁぁっ!?」

 

 軽々と持ち上げられ、振り回されて、櫛谷くしや警部の天地がひっくり返る。

 腹に霊獣の牙が食い込む。まるで大勢からナイフで同時に刺されているような感覚であった。


「離せ貴様!!」


 だが腕に力を込めても霊獣の口が開かれることは無い。

 そして絞られたレモンのように体から血が滲んでくる

 もはやここまでだと……櫛谷くしや警部は歯を食いしばった。

 しかし揺れる感覚の中で、警部は破裂音を聞いた気がした。そしてどういうわけか霊獣の咬合力が弱まり、警部は解放されて地面に落ちた。

 その理由を警部はすぐ知ることになる。


櫛谷くしやさん、しっかり!」


「その声は……寺田、か」


 地面に横たわる櫛谷くしや警部は自身を覆うようにのぞき込むシルエットと声色から理解した。


「俺は……どうなった? 化け物はどうした?」


「大丈夫です。あなたは生きてる、化け物は目を潰された。可哀想に、メチャクチャに暴れ回ってますよ」


 と、寺田刑事はイタズラっぽく鼻で笑う。


「そうか……」


 それを聞いた櫛谷くしや警部は目を閉じたまま、安心したように頬を緩ませた。


「ここは危険だ、すぐに逃げましょう。近くに車が止めてある。もう少しの辛抱です」


 逃げるなら今のうち、寺田刑事は櫛谷くしや警部の肩に腕を回す。


「なるべく急ぎましょう」


「あ、あぁ……」


 暴れ回る霊獣のせいで地面が揺れる、足の力を入れなければ共倒れしてしまうほどに。

 這う這うの体の櫛谷くしや警部にとっては苦行だが、なんとか、ようやく、2人共公園の外へと脱するという偉業をなしえた。

 だが2人がホッと息をついたのも束の間――

 ブワッッ!!

 目を開けていられない熱風が吹いた。


「熱っ!」


 寺田刑事は思わず腕で顔を守った。


「警部、大丈夫ですか?」


「ああ、なんとかな……」


「一体何の風だ」


 こんな春の夜に見合わない熱量に、寺田刑事は警戒心から辺りをキョロキョロとかわるがわる見た。


「!?」


 寺田刑事はギョッとして空を見た。


「……何だあれは?」


 空に浮かぶ()()は、彼の既成概念を超えていた。




⭐︎




 西の空に陽が沈みかけた頃。

 公園から去ったリョウキがどこにいたのかというと、黄色い看板が目印のコンビニにいた。

 ご飯を食べに来た。と言ってもお金は持っていない。

 だから燃えるゴミのゴミ箱を漁って、食べ残しにあずかろうとしていた。

 経験上、この時間帯だと比較的新鮮な弁当が手に入ることが多いとリョウキは知っていた。そして見事掘り当てた。


「んっん~♪」


 たまたまご飯が半分以上残された幕の内弁当(の残骸)を見つけたおかげで、さっきまでの不満はどこへやら、リョウキは上機嫌であった。

 それから人目を気にして路地裏に移動し、安全を確認すると弁当を手づかみで口に運んだ。その味に頬がほころぶ。


「寂しい食事ですねぇ」


 不意を突かれた声に、リョウキは手を止め、その方をゆっくりと振り向いた。

 気づかぬうちに、初老の男がそこに立っていた。


「せめてこんな陰気なところでなく、もっと表で堂々とすれば良いでしょうに」


「……これはこれで気が楽なんだ」


 リョウキはそう言ってのけ、再び弁当に相対して手を動かした。


「……なんか用? ないならどっか行ってよ。わたしはご飯を食べるので忙しいんだ」


「それは申し訳ありません」


 しかしその男――鳴賀刑事はその場から動かなかった。


「ですが用はあります」


「ほう……」


 また食事の手が止まり、リョウキは据わった目で鳴賀刑事を見た。


「この弁当でも欲しいのかな? 悪いけど食わせんぞ」


「心配いりません。その弁当に興味なんてありません」


「そっか」


 弁当の残りも全て平らげたリョウキは、手を払いながら立ち上がった。

 2人は5歩分の距離を開いて向き合った。


「じゃあもしかしてわたしに用?」


 リョウキは両人差し指で自分を指さして可愛い子ぶった。


「はい、そうです」


「はー、やだやだ」


 リョウキのため息に、鳴賀刑事の眉が上がる。


「それはどうして?」


「わたしに用があるって人、大っ体わたしの敵なんだよね。ちょっと前にもそうなったの」


 前髪をいじりながらリョウキは遠い目をしていた。


「それは大変ですね」


「まぁそういう人生送ってるからしょーがないんだけどね……ある程度は」


 そして食べ終えた弁当の容器を、律儀にもそこにあったポリバケツに捨てると、リョウキは目を細めて笑った。


「あなた刑事でしょ?」


「そうです。良くお分かりになりましたね」


「さっきまで厄介になってたからね。それにポッケに銃を忍ばせたおじさんなんて大体警察でしょ。ヤのつく人の可能性もあるけど、どっちにしたってろくな事じゃないね」


 鳴賀刑事は右の太ももに触れた。外からは銃を所持してるか分からないようにしているはずだが、リョウキにはお見通しだった。


「……あなたもわたしを捕まえに来たんでしょ? 全く困ったもんだ」


「いやそれは誤解です」


「やっぱりね。…………えっ? 捕まえに来たんじゃないの?」


 驚いて聞き返すと、鳴賀刑事は深くうなずいた。


「じゃあ何しに来たの?」


「お話ですよ」


 リョウキは首をかしげた。


「わからんね。わたしなんかと何を話す気だい」


「そうですね……」


「ま、なんにせよかまわんけど、あんまり難しい話は嫌だなぁ」


「う~む……」


 鳴賀刑事はもったいぶって、あえてリョウキの気の引くように試みた。


「では、ここ最近現れるようになった化け物の話なんてどうでしょう? それと……あなたと私の今後についてとか」


「今後! あなたとわたしの! ……フヒャヒャヒャヒャ!!」


 高笑いした後、リョウキは改めて満足げに笑った。


「いいね、面白そうじゃない。聞いてあげよう」


「では簡単に、あなたには悠長にしている時間は無いでしょうから」


 こうして刑事と凶悪犯の会談は、誰も気にも留めない路地裏にて執り行われた。

 お互いがほぼ満点に近い水準で満足したこの会談は、突如どこかから轟いた爆音にてお開きとなった。



⭐︎




 それから数十分後。

 なんの因果か、鳴賀刑事は再び昼訪れた病院に舞い戻っていた。

 彼を呼んだのは、1本の連絡であった。


櫛谷くしや警部と寺田刑事が重傷を負って、×××××病院に担ぎ込まれた」


 しかも追々聞いてみると、どうも瀬戸際らしい。下手をすればこれっきりになってもおかしくないと聞かされ、鳴賀刑事は悶々とした気持ちで病院へと駆けつけた。

 駆けつけた時、2人は既に集中治療室に運び込まれた後だと、入り口で待ち受けていた刑事は暗い顔で言った。

 そして病棟内にも何人も警察官とその関係者と思われる人たちがいた。やがてそのうちの1人、あの霊獣が現れた公園にもいた警官が、鳴賀刑事に2人が陥った状況を説明した。


「つまりあの2人は、近頃問題になっている化け物に襲われたと?」


 説明された内容を鳴賀刑事はそうまとめあげた。


「状況から察するに……まず、間違いなく」


「……なるほど。そうですか」


 黙り込むと、長い廊下には革靴の足音だけがこだまする。


「良く無事に帰ってこれましたね」


 鳴賀刑事が労うと、その警官は笑顔で取り繕うとしたが、複雑な心境から顔は引きつるばかりだった。


「どうしました? 浮かない顔をして」


「私なんかより、あの2人の方がよっぽど優秀ですからね……。いっそのこと代わるべきだったのでは……と」


「そう卑下なさらずに、あなた方に生きてもらうのが彼らの望みだったのでしょう? あなたが無事でいることは、彼らがやったことが無為で無かったことの証明なんですよ。あなたが生きることを悔いる必要は、どこにもありません」


「……ありがとうございます」


 素直にそう答えた警官に、鳴賀刑事は「それにあの2人はしぶといから、きっと無事で済みますよ」と笑顔を浮べて言った。内心と表情が一致しているかは別にして。

 とりあえず櫛谷くしや警部と寺田刑事、2人の応急処置がある程度済むまで、鳴賀刑事はこの病院に滞在しようと決めていた。

 1Fのエレベーターホールで煌々と光る自販機にて、鳴賀刑事は缶コーヒーを買った。自分の分と、連れ添いの警官の分、微糖のを2本。

 カシュッと小気味良い音が薄暗いエレベーターホールに鳴る。

 しばらく水分を口にしてなかった2人には、それは癒やしの潤いであった。


「ふぅ………………あっ!」


 突如、連れ添っていた警官が何か思い出したように声を漏らす。


「!?」


 驚いた鳴賀刑事はコーヒーを吹き出しかけて、そのせいで咳き込んだ。


「す、すいません」


「い、いえお気になさらず」


 鳴賀刑事は口の手の甲を当てると、ポケットからハンカチを取り出して優雅に拭いた。


「それでどうかしましたか?」


「いや、1つ気になることがありまして……」


「ほう、それは何でしょう」


「……」


 連れ添いの警官は黙った。

 何やら考え込んでいることがその態度からは見受けられた。

 しかし冷静になるためにコーヒーをすすると、それと同時に言葉も喉から腹へ飲み込まれた。


「すみません。何でもないです」


「何か言いたいことがあるのでは」


「いえ、やっぱりいいです。大したことはないでしょうから」


 と思い直して申し訳なさそうにハニかんだのだった。


「構いません、話して下さい。大したことないかどうかは聞いてから決めます」


 だが鳴賀刑事が割と強い口調で迫ると、恐縮しながら口を割った。


「……魔女、だそうです」


「魔女?」


 あまり聞き慣れない言葉だ。

 鳴賀刑事が疑問符のついた反芻をすると、その警官は言った。


「はい……。搬送中、寺田刑事はそうしきりにうわ言を言っていたそうです。『魔女……魔女が』と」


「それは……どういうことでしょう?」


「さぁ……何かのメッセージなのかもしれませんが、私にはさっぱりです」


 その警官は首を振った。

 鳴賀刑事はその「魔女」と言う言葉をしきりに呟いた。


「鳴賀さんにもどういう意味か分かりませんか?」


「ええ。彼とはそれなりに長く一緒にやってきたつもりですが、魔女なんて言葉、彼の口から一度も聞いたことはありません」


 ついでに隠語でも無い。

 その言葉の真意を測りかねて、鳴賀刑事は首をひねった。


「まぁそんな気にしないで下さいよ、ただのうわ言ですから」


 だが鳴賀刑事の考えは真逆だった。

 死にかけに発する言葉が無意味であるはずは無いと踏んでいた。おそらく『魔女』というのも何か意味があるのだろうと、そう推測していた。

 なんとなく……思い当たる節はあったが、それを口にしたところで共感は得難いし無意味だろうから、その考えはそっと1人胸に秘めた。

 いや全く共感が得られないわけでは無いだろうと思い直す。

 思いつく限りでも2人、この考えを共感し、補強してくれると思われる人物がいた。


「…………」


 そのうちの1人は、この時、この2人の刑事の会話を壁の陰から盗み聞きしていた。

 たまたま喉が渇いたから、冷水機の無料の水で渇きを満たそうと、リハビリがてら徘徊していたところにこの現場に出くわし、雰囲気に気圧され隠れてしまったのだ。

 盗み聞きなんてする気は無かったが、結果的にそうなってしまった彼は息を殺した。思わず「え?」と言ってしまいそうになった時は、両手で口を押さえつけた。

 そして刑事たちが去った後、ようやく疑問を口に出す権利を得た。口切りに発したのはやはり……


「魔女」


 であった。




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