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亡者よ、明日をつかめ  作者: イシハラブルー
第2章 死闘激化
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第五編・その3 光と影の闘争



 一連の事件における悪魔の正体は藤川ツバサである―― 

 その前提を基軸に、朝日が昇った頃から独自捜査を続けるヒカルであったが、その朝日が頭上を照らす頃になっても、さらに経ってオレンジがかり出す頃になっても、依然としてツバサの影すら見つけ出すことが出来ていない。

 果たしてツバサはどこにいるのか? そして、本当に悪魔なのだろうか?

 悩みに悩むヒカルは、とある噴水のある公園に流れ着いた。そして噴水の見える場所にある木のベンチに、どっかりと腰を下ろす。


「なんだかなぁ……。さっぱりだ」


 ヒカルは分かりやすく頭を抱えた。

 ここまで上手くいかないとなると、いくら海溝に埋蔵された諦めない心も、自信の無さという名の掘削機によって表へ掘り起こされてしまう。


「はぁ……」


 ヒカルは肺の中の空気を全部吐き出す勢いのため息をついた。

 もう疲れた。あんまり寝れてないし、朝からずっと歩きづめでもう脚がパンパンだ。それに1人だと、何も面白くない。


「せめてテツリたちにも手伝ってもらうべきだったな……」


 その方がちょっとした街歩きになったろうし、探す効率も上がった。なのに何故1人で抱え込んでしまったのか? ヒカルは自問したが、その答えは「なんとなく」だった。なんとなく、この問題は自分が1人で解決したかった。


「はぁ……」


 そんな曖昧な気持ちで突き進んだ朝の自分に対して、ヒカルは再度ため息をつく。すると何か気配がした。


「兄ちゃん、若けぇのにずいぶん深刻そうだな」


 上から聞こえたしゃがれた声に、ヒカルは顔を上げた。見ると、白髪頭の日焼けしたおじさんが、たくさんの食パンの耳が入ったシワシワのビニール袋を持って、目の前に立っていた。


「さっきからずっとため息ばっかじゃねぇか。辛気くせぇ、なんか仕事で嫌なことでもあったか?」


 そのおじさんはぶっきらぼうにもちょっと優しげに尋ねた。それと同時に持っていたパンのかけらをちょっとずつあたりに撒いていた。


「いえね。人捜しをしてるんですけど、それが上手くいってないんですよ」


 ヒカルが若干青ざめながら言うと、おじさんは「ふーん、そんなことか」とさぞ興味なさそうに答え、空を見上げた。

 撒かれた餌につられ、一体どこに隠れていたのか、ちょっと数え切れないほどの鳩が降りてきて、おじさんに群がった。


「……すごい数」


 そういえば昔、外国の映画でこんなシーンを見た覚えがある。よもやそのシーンを間近に見ることになるとは……。

 ヒカルが困惑の表情でその光景を見守っていると、おじさんが手招きしだした。何だろうと思いつつヒカルが近寄ると、おじさんはパンを片手に言った。


「兄ちゃんもやってみろよ」


「え? 俺はいいですよ、悪いですし」


「構わねぇよ、どうせこのパン、タダだし」


「いや……」


 そういう問題じゃないんだけどなと思いつつ、気づけばヒカルの手にはパンが握らされていた。


「いいからだまされたと思ってやってみな、意外と楽しいんだぜ」


「そうなんですか……」


 鳩の餌やりなんてやったことのないヒカルは、半信半疑ながらも差しただされたパンに目をやる。すると何やら視線を感じ、まわりを見れば鳩たちがつぶらな瞳で一斉にヒカルのことを見ていた。それはまるで鳩のオーケストラの指揮者になったかのようだった。


「な、何かめっちゃ見られてるんですが……」


 ヒカルはこの状況に困惑し、おじさんの方を見た。


「『エサくれ!』って言ってんだよ、早ぇとこ適当に撒いちまえ」


「なるほど……」


 言われたとおり、握ったパンのかけらを撒くと鳩たちはそこに向けて飛んでいく。そしてまた別のを投げるたびに、鳩たちはその場所へとまた飛んでいく。それはまるで鳩を自分の意のままに操っているようで、なかなかに愉快であった。


「へっ、楽しいって顔してんな」


「確かに意外と楽しいかも」


 ヒカルがそう答えると、おじさんも「だろ!」と言って歯茎まで見せて笑った。


「はは、なかなか分かってるじゃねぇか」


「なんか普通に癒やされます」


「はいはい癒やしね。確かにこいつらがパンを必死につつく姿見てると和むよな」


 パンのかけらと言っても、それは人間目線の話。鳩たちからすれば、それは一口で食べきることの出来ないボリューミーなパンである。だから何度もくちばしでつついて、一生懸命に食べようとする。その光景には、なんとも言えない愛おしさがある。


「そういや……」


 最近はセラピードッグなんか流行ってるよなぁとふとヒカルに思い浮かび、そして「鳩のエサやり(これ)」ももしかしてアニマルセラピーの一種なのかもと思い至った。

 事実、今は嫌なことも忘れて、澄んだ気持ちでいられているのだから。


「どうだ、楽しいだろう」


「はい!」


 ヒカルは晴れやかに笑って、おじさんの方を見た。


「そうか、悩める若者を救えて、おじさんも嬉しい」


 そう言いながら、もうひとかけらヒカルに手渡す。


「いいんですか?」


「いいんだよ。鳩だって、たまには違う奴からもらった方が新鮮味があるってもんだ」


「おじさんはいつも鳩にエサやってんですか?」


「そうだな。年取ると、色々と寂しく思うことが増えてな。日が暮れると殊更よ」


「ああ、どおりで夕方なんですか」


「それに昼は働いてっからよ。やっぱり夕方になっちまう訳よ」


「……大工ですか?」


「ああ、そうだ。やっぱそう見えちゃうか?」


「すごく日に焼けてるからそうかなって」


 あと本人が言うように風貌からしてそれ以外には見えない。なんとなく仕事中はハチマキをしてそうな大工だ。


「まぁそりゃ焼けるよな。外の作業多いし」


 そう言うと、おじさんは腕まくりして自分の腕をしげしげと眺めた。


「でもよ! 若けぇ頃は結構色白だったんだぜ」


 なぜか自慢げにおじさんは力強く腕を叩いた。


「時代が時代なら美白って言われてたろうよ。ちっちゃい頃は、女の子に間違いられるくれぇだったんだからよ」


「は、はぁ……」


「しかもよぉ、結構近所じゃ名高いハ――」


 ハンサム、その言葉を言い切ることが出来なかった。なぜなら、そう言おうとしたおじさんを否定するかのように、その時一斉に鳩たちが飛び立ったのだ。


「なんだよ、このタイミングでねくたってええだろうがい!」


 羽ばたき音でハンサムをかき消されたおじさんは飛び立つ鳩たちに拳を握って抗議した。


「うわ、なんだなんだ!」


 突然のことに驚き、ヒカルは目をつぶった。

 そして音がしなくなってから目を開け、舞い散る羽毛を払いのけるとあたりを見た。

 だがさらに驚くべきことに、そこにはもう1羽の鳩もいなかった。見渡す限りいた鳩たちはみな、食べかけのパンを残し飛び去った。


「なんだあいつら急に。まだ飯も残ってんじゃねぇか……」


 いつもエサやりをしているおじさんもこれには驚きを隠せず、怪訝な表情であたりを見ていた。

 そして、先にその原因を見つけたのはおじさんだった。


「おい、なんだぁありゃ」


 目を押っ広げておじさんが見上げる方向からは、ナニカがこっちに向かって飛んで来ていた。

 それは、ぱっと見ではなんの変哲も無い1羽の鳥であった。だが、よく見ると大きさがおかしい。おそらく距離から考えると体長は人間と肩を並べられるほどの巨大サイズ。鳩どころか、鷹ですら問題にならない。

 そんな怪鳥は2人の頭上を通り過ぎ、街の方へ飛んでいった。


「すげぇのが出たな。そりゃ鳩も逃げだしちまうわけだ」


 怪鳥が飛んでいった方角を見つめながら、おじさんは腕を組んだ。


「しかしありゃ……いったい何だ? …………あれ?」


 おじさんがふと横を見ると、そこにヒカルの姿はなかった。ヒカルがいたのは、真っ正面を向いたおじさんの遙か前方だった。


「おーい! どこに行くんだ急に!」


 大声で呼びかけられると、ヒカルは少しの間振り返って手を振った後、ダッシュでどこかへ行ってしまった。


「なんだ、アイツ……。アイツも鳩かよ」


 訳も分からないおじさんは、その場に1人で立ちすくんだ。






⭐︎






「やっと見つけたぞ、ツバサ!」


 ヒカルには一目見た時から分かっていた、あの怪鳥の正体がツバサであると。

 そして、接触するならこの機を逃すわけにはいかない!

 ヒカルは夕暮れの空を飛ぶツバサを追いかける。

 だが自由な空と、制約のある地では移動にかかる時間が格段に違う。おまけに移動速度も向こうの方が圧倒的に速い。そんなものだから混み混みとした街に入ると、思いとは裏腹にヒカルは徐々にツバサとの距離を引き離された。それでも必死になって追跡を続けてたものの、そんなヒカルを嘲るように目の前で信号が赤に変わった。


「くそ、こんな時に!」


 いらだちから拳で太ももを叩く。

 他に待つ人たちはみなスマホを見ていたが、ヒカルだけはずっと空を見ていた。


「早く変われ、早く」


 1分足らずの時間がじれったい。そして信号が青に変わった時、ツバサは空の向こうに消えかけていた。


「まだ追える!」


 だがもう厳しい。彼方に見えるツバサはもう豆粒にしか見えない。これから追いつこうとなると、それはもう神がかり的な奇跡が必要となるだろう。それが起きなきゃ、もう追いつくことは到底出来ない。

 しかしそれでもヒカルは追いかける、決して諦めずに。そして、その諦めない心が奇跡を呼ぶ。


「ハァ……ハァ……ハァ」


 息せき切って走るヒカルは額の汗を拭いながら、奇妙なことに気づいていた。

 ……さっきより、豆粒が大きくなったような?

 つまりそれはツバサとの距離が縮まったと言うことだ。

 そのことに気をよくしたヒカルは、なおさら必死になって走る。


「ひょっとして、止まってる?」


 ヒカルは凝視しながら走り続けるが、もう距離が開くことはない。走れば走るだけ、その距離は縮まっている。


「よく分かんないけどチャンスだ!」


 スパートをかけるなら今しかない。

 だがその時だ――

 止まっていたツバサが再び動き出した。

 今度は直線移動ではなく、ヒカルから見て左の方へ逸れていく。さらにどういうわけか、そのまま円を描くように旋回しだし、そして2、3周するとピタリと止まり……突如! 


「降下しだした!?」


 まるで獲物に狙いを定めた猛禽類のように、ツバサは一気に降下した。


「何をやってるんだ!」


 分からない……分からないがとにかく急ごう。そうすれば全てが……全てが分かるはずだ。

 ヒカルはひたすらに走った。






⭐︎






 それからは簡単な話だった。

 ゲームの参加者同士にはお互いを引きつけ合う性質があり、距離が縮まったことでようやくその性質がされだした。

 途中、向かい側から走り来る女性にぶつかって転倒するハプニングはあったものの、ヒカルは導かれるように入り組んだ路地を縫うようにして進む。そして空に陽の輪郭がほのかに照る頃、ようやくその努力は結実する。

 曲がり角を曲がり、見通しのいい路に出ると、ヒカルは息を吸い込んだ。


「ツバサッ!!!!」


 やっとだ……。

 ヒカルはやっとツバサと対面した。

 やはりいつも通り上下黒一色にロングコートを纏っていて、その周りには羽のようなものが散っていた。

 そして、電柱の影でなにやらしている。


「お前、何をーー」


 言いかけてヒカルは息を呑んだ。

 すると、ツバサはフクロウのように顔だけヒカルの方に向けた。


「なんだ……お前か。なんの用だ?」


「お前、何をやっている!?」


 電柱の影に隠れていたツバサの手は、金髪の男を壁際で締め上げていた。締め上げられる男の足は宙に浮いており、その顔からは血の気が引き、口からは泡を吹いていた。男が普通の健康状態で無いことは一目で分かる。


「ツバサ!! その手を離せ!!」


「……」


 ヒカルが血相変えて叫ぶと、ツバサは1度男の方を見た。

 すると、意外にも呼びかけ通り手の力を緩め、男を解放した。解放された途端、男は路の端に力なく横たわった。どうやら酸欠で気を失ってしまったようだ。


「相変わらず、賑やかな奴だな……」


 ツバサは口の端を吊り上げた笑顔をヒカルに向けた。

 だが、ヒカルの表情は正反対だった。倒れた男とツバサの顔を行き来し、悲しげに眉を下げた。


「……なんでこんなことを」


「なんで? ……ふん、なんでそれをお前に答える必要がある?」


 ヒカルの問いに対しそう言い放つと、ツバサは踵を返してその場から立ち去ろうとした。


「待てよ!」


 ヒカルは叫んだ。

 このままツバサを逃がすわけにはいかない。

 なんたってヒカルには、どうしてもツバサに確かめたいことがある。


「……なんだ?」


「!?」


 ツバサの声色は深海のように冷たかった。

 いささか不機嫌が過ぎるツバサに一瞬たじろぐも、ヒカルは恐怖を振り切った。


「お前に聞きたいことがある! ここ最近、ここら一帯に物騒な辻斬りが出没してるらしい。ソイツは悪魔なんじゃないかとさえ呼ばれてる。でもその正体……お前なんじゃないか!? ツバサ!!」


 ヒカルはツバサが逃げられないよう、早口でまくし立てた。するとツバサは顔から表情を消し、まるで能面のような無感情を貼り付けて言った。


「さぁな……」


「さぁなって……答えろよ! ちゃんと!」


 腹を立てたヒカルが叫ぶと、ツバサは鼻で笑った。


「俺は知らない」


「嘘つけ!? 全部知ってんだぞ! その悪魔の特徴まとめたら、お前しか当てはまる奴いない! もうネタは上がってるんだ!」


「……そうか」


 ここまで強い口調で言われると、もはや観念したのかツバサは開き直った。


「だったら……どうする? もしその悪魔の正体が俺だったとしたら……お前はどうする?」


「お前を止める! こんな悪事見逃せない!」


 この時、陽は完全に沈み、空は深い群青色に染まりきろうとしていた。群青は心を落ち着かせる色だ。

 そんな空の下で、2人は互いに闘志を燃やしていた。そして路の街灯に明かりが点る。それが合図だった。


「なら俺は……お前の息の根を止める」


 先に仕掛けたのはツバサだ。

 容赦なくヒカルの左目めがけてパンチを繰り出す。

 すんでのところでヒカルはかわした。

 だがパンチをかわした拍子に尻餅をついた。


「チッ、ホント無駄に強いなお前。腐っても元警官か!」


 ツバサは言いながら踏みつけにかかる。だが踏んだのは地面だった。


「なんでだツバサ!」


「もう質問は聞き飽きた!」


「ゔッ!」


 有無を言わせないツバサの猛攻は続き、ヒカルも黙り込んでその攻撃を捌いていく。

 2人の力量はほとんど同じで、単純な体技だと決定的な差は出ない。となると、やはり勝敗を分けるのは……


「面倒くさいな、お前」


 ついにツバサは能力を解放し、腕を翼に変えた。


「逃げるのか!」


「逃げないさ、お前を仕留めるんだ」


 両腕の巨大な翼がはためき、あたりに強風が巻き起こる。そしてツバサは大空へと飛び立つ。


「くっ! ……あ、どこいった?」


 青空ならいざ知らず、今の空は汚れも目立たない群青色。高速で飛行するツバサを、ヒカルは見失ってしまった。


「まずい……見えない」


 ヒカルの顔に焦りが浮かび上がる。


「…………!?」


 風の音が変わった。

 ハッとしてヒカルは振り返った。そしてその目には、自分に爪を突き立てんとすぐそこまで迫る猛禽の姿が映った。

 まともに受けたらヤバイ!

 ヒカルは身構え、そして叫んだ。


「変身!」


 目元でピースしてウィンクすると、星型のエネルギーの壁が前方に発生する。


「チッ……」


 その壁がヒカルを守る盾となった。

 ツバサはそれを叩き割ろうと2、3度蹴りを入れるも、壁は意外と硬くビクともしなかった。

 そしてその壁を潜り纏うと、ヒカルの姿は輝かしいヒーローへと変わる。


「やっと本気になったか。だがその抵抗はいつまで持つかな」


「2分もありゃ十分さ!」


「ふん……」


「でりゃぁあ!」


 ヒカルの強烈なパンチが繰り出される。食らえばひとたまりもないが、ツバサは後方に飛んで悠々と回避する。さらに低空を飛んだまま、ツバサは鋭利な足の爪で執拗な攻撃を次々に繰り出す。


「うっ! くっ! とわっ!」


 瞬き厳禁な速攻には対応し切れず、ヒカルは吹っ飛ばされた。だが背中をついたヒカルを、ツバサは好機と見てなおも苛烈に攻め立てる。攻撃が当たるたび、ヒカルの体からは光が噴き出す。

 だが、ヒカルも黙って負けるわけではない。流石にここまでやられると、腹が立つ。その感情は力と変わる。

 多少のダメージはなんのその、ヒカルは脚を掴んで無理やり引き寄せると、ツバサの横っ面を殴り、吹っ飛ばす。


「この間は……一緒に戦ってくれたじゃないか。


 マスクの下で顔を苦痛に歪ませながら、ヒカルは胸を押さえて立ち上がった。


「あれは、利害が一致しただけだ」


 ツバサは唇についた血を拭い、立ち上がる。


「お前が俺にどんな期待をしたのか知らないが、結局このゲームの勝者は1人だけだ。だから邪魔なんだよ、お前は」


 ツバサは腕をゴリラの豪腕に変え、振りかぶった。


「消えろ!」


「!? うぉぉおお!!」


 ヒカルも右腕を振りかぶった。

 ゴッ!!!!

 2つの拳が衝突ーー


「うわっ!!」


「うっ!!」


 衝突の反作用で2人とも大きく後ろへ吹っ飛んだ。


「次で決める」


 ツバサは即座に立ち上がり、必死の形相で走る。

 ヒカルも立ち上がり、背後をチラと見た。すぐ後ろには壁がある。そして反射的に壁を蹴って、三角跳びで迎え撃つ。

 ゴシャッッ!!

 お互いの重い一撃が、相手のボディを捉えた。そして2人は同時にその場に崩れ落ちる。

 だがこの痛みにも耐え、よろめきながらも2人は立ち上がった。

 と、その時……、2人ともに電流のような頭痛が走った。お互いに顔を見合わせ、察する。


「「また出たか……」」


 どうやらどこかに霊獣が現れたらしい。

 なんてタイミングの悪いとツバサは舌打ちし、ヒカルは早く止めなければと気を揉んだ。


「……もうやめよう。俺たちがこんなところて争ってる場合じゃない。……急がないと」


 またこの間みたいなことを起こさないためにも、なんとか可能な限り早く駆けつけなければ……。

 ヒカルは拳を握った。


「…………そうだな」


 そしてツバサはその言葉とともに、不気味な笑顔をヒカルに向けた。






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