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第1話 悪魔の目

鏡の前で、一人の幼女が泣いていた。

その幼女はまるで、完璧な美術作品から、今この瞬間世界に飛び立ったかのような、美しい顔立ちをしていた。

しかし、幼女はその美しさとは似合わない敵意と恨みを持って、鏡を睨んで泣いていた。

そして、幼女はひどく疲れていて、長い黒髪と黒のパジャマは乱れに乱れていた。


「お前さえ、いなければ…」


幼女の口からその可愛らしい唇には全く似合わない恨みの感情がたっぷり凝縮された言葉が発せられる。

そう言う幼女は幼女自身の一部を凝視していた。


「なんで…なんで…」


凝視するは幼女の美しい紫の左目。

彼女の右目はどの色にも混ざってない純粋な黒で、紫の左目はあまりにも異質的だった。

黒い右目がどんな物でも受け入れる深淵を感じさせるのと対象的に、その紫の左目はどの現実も否定するようであった。

まるで、その目は…


「悪魔の目、本当、お母さんの言う通りだわ…」


幼女は悲しむ。

そこには深い深い後悔が滲んでいた。


「なぜ、私はこの左目が見せる虚像を求めてしまったんだろう…」


幼女は鏡の右下にある家族写真を見つめる。

そんな幼女の左目には美しすぎる笑顔の4人家族が、そして、右目には普通で無表情の3人家族が写る。


「この呪いを今日で終わらせる。」


涙に暮れるその両目はすこしずつ決意の色に染まる。

血の気が引き、駆け上ってくる悪寒を必死に抑えて、彼女はその小さい右手を顔に近づける。


「あの日…この眼が悪魔の紫に染まってしまったあの日、こうしたら良かったんだ…」


そして、か弱い右手の指一本一本にできる限りの力を入れ、左目に突っ込む。


「くっ!あっ!うっ!くぅ!…」


ぐしゃぐしゃ、ぐしゃぐしゃ、ぐしゃぐしゃ…


硬い左目の眼球がその小さい手にすこしずつ音をたててえぐられる。


力なき幼女の手で簡単に壊せるはずもなく、長い時間苦痛に悶え苦しみながら、血涙を流しながら、幼女はその作業を止めない。

そして、幼女には無限にも感じられたである時間を乗り越え、作業は最終段階を迎える。

すべての指が他の指を眼球を通じてそこにあることを感じる。


「もう…くっ!少しで…うっ!」


ぐしゃぐしゃ、ぐしゃぐしゃ、ぐしゃぐしゃ…


そして、その細い指が眼球の奥の底につくその瞬間。

もう掴むだけで左目をえぐり取れるその瞬間。

世界はその動きを止めた。




そして…

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