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産廃水滸伝 ~産廃Gメン伝説~ 12 腐臭の谷  作者: 石渡正佳
ファイル12
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苦情

 思わぬところから苦情が来た。

 「こっちに牧草地を養生している現場があるんですが、それがとんでもないひどい臭いなんですよ。牧場だけじゃなく沿道からも臭いって苦情が来てるんです。調べたら犬咬市から運んでるみたいなんですが、そっちで何を出荷してるかわかりますか」山梨県農林部畜産課の韮山からの問い合わせだった。

 「そっちに持ち込んでるのは誰かわかりますか」伊刈が聞き返した。

 「牧場の方はですね、昇山の社長の横嶋という男が仲介したと言っています。いい堆肥があると聞いてお金を払ったのに、実際に持ってきたものがサンプルと違うので返品を迫ったところ、逃げてしまって連絡が取れないそうです。ただ横嶋は犬咬市の堆肥工場から持ってくると言ってたようなんですよ」

 思いがけないところでまた横嶋の名前を聞くことになった。しかも性懲りもなくまだ昇山の社長を名乗っているらしかった。犬咬から姿を消したと思っていたが、ちゃっかり健在だった。調所は姿をくらまし昇山は太陽環境に吸収されて消滅した。それがわかっていてなお昇山を名乗っているのだ。横嶋とはそういう男だった。

 「堆肥工場の名前はわかりますか」

 「それがですね、牧場主は聞いたけど忘れてしまったというんですよ。そちらで調べてもらうわけにはいきませんか。先ほど市のほうに連絡したら悪臭の苦情は事務所で対応されてるというんですが」

 「そっちの悪臭はかなりひどいんでしょうか」

 「牧場が断ったんで今は搬入が中止されましたから収まっていますが、運んでいるときは牧場よりも沿道住民から苦情がひどかったんです。牧場としては悪臭はともかくも得体の知れないものを入れられて家畜が病気になってしまっては困るから返品したいといって断ったそうです。横嶋の所在がわかれば訴訟を起こすと言ってます」

 「わかりました。調べてまたご連絡しますよ」

 「お願いします」

 電話を切るなり今度は群馬県環境部循環経済推進課の園山から電話がかかった。山梨県と同様の苦情だった。

 「こっちに赤城産業という汚泥処理業者があるんですが、そこに生ゴミ臭のする汚泥が大量に放置されておりまして、近隣住民から悪臭の苦情が寄せられているんです。帳簿を検査したところ神奈川県の小笠原商事が委託した食品系汚泥だと判明したんですが、赤城産業は無機汚泥の許可しかないんです。そちらの管内に小笠原商事の工場があると市の廃棄物指導課から聞きました。そこから出た汚泥の可能性があるんでどんな工場か調査に伺いたいんですが、どなたかお立会い願えますか」園山の照会内容はかなり具体的だった。

 「仲介者がいるんでしょうか」

 「さあそれはちょっとわかりません。実は赤城産業は夜逃げ状態なんです。小笠原商事がどんな会社かお問い合わせしたところ、市ではとくに指導暦はないというんです。しかし、現場の環境事務所なら何か状況を把握しているかもしれないということでしたのでお電話しました」

 「確かにこっちでも生ゴミ臭のする未熟性堆肥が出荷されてる現場があって悪臭の苦情があるんですが、小笠原商事かどうかはまだ確認が取れていません」

 「やっぱりそうですか。あのそちらの状況を確認に伺ってもよろしいでしょうか」

 「かまいませんよ」

 「それでは今週末にもお伺いします」園山は約束をとりつけて電話を切った。

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