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未来と過去  作者: R.K
8/11

大事なこと

 ピピピピピッ、という目覚まし時計の音が、俺を夢の中から現実へと連れ戻す。


 どうやら、まだ俺はこの世界にいるらしい。ま、当然か。まだ俺は、何もこちら(過去)に来てkら、何もしていないのだから。


 渋々、繰り返し鳴る目覚まし時計を止め、洗面所へ向かい顔を洗う。まだこちらの世界(過去)に来て、間も無いというのに、その行動はすっかり昔(高校生の頃)の俺そのものだ。


 顔を洗ったあとは、当たり前のように制服に着替え、当たり前のように母が作った朝食を済ませ、当たり前のように「行ってきます」と言って学校へ向かう。


 この「当たり前」がいつまで続くのか、そんな答えが分からないと分かっていることをついつい何度も考えてしまう。


 だからもう考えない、と踏ん切りがつけられるような性格でも無いから、分かっていること、なんとかなりそうなことから片付けようと思う。


 今俺ができることは、修学旅行での失恋について知ることだ。正直、好きな女の子に振られてしまったというだけでも黒歴史に近いのに、わざわざそのことをほじくり返すなんて、そのネタでいじってくださいと言っているようなものだが、背に腹は変えられない。


 そう思いながら、自転車を走らせていると駐輪場に自転車を止めようとする白の姿が視界に入る。まずは、仲の良い白から聞くのが一番だろう。白には、失恋の話に限らずいろんな相談をしたという記憶だけはあるからだ。その中身についてはほとんど覚えてないから、まずはそこからだ。


「白、おはよう。」


「藜、おはよう。どうしたの?こんなに寒いのに、そんな汗ダラダラで。」


 つい、白に話を聞こうと必死に追いかけていたら、汗だくになってしまった。


「いや、なんでも」


 さぁ、ここからどうやって、あの話(失恋のこと)に繋げようか、、、


「それより、今日いい天気だな。」


「あ、ああ。そうだね、これからだんだん暖かくなって、卒業式の頃には、きれいに桜が咲くんだろうな。でも急にどうしたの?天気の話なんていつもはしないのに、そんな話なんかより話したいことがあるんじゃないの?」


 こいつ察しがいい。けれど直接聞ける話でもない。


「い、いや。それもそうなんだけど。」


「なら、とっと言ってよ、じれったいなぁ、全く。」


 催促されると逆に言いづらい。


「ああ、やっぱり、いいや。また今度にする。」


「あっそ。」

 余計に話しづらくなってしまった。これではもう、黒歴史をネタにする以前の問題だ。でも結局、話を巻き戻すわけにもいかず、昨日のテレビの話などいつも通りの雑談になってしまった。


「じゃあ、俺トイレ行ってから教室行くから、藜は先に教室に行ってて。」


「ああ、分かった。」


 ああ、困った。1番の頼りの綱の白に聞きそびれてしまった。じゃあ、他のクラスメートに聞こうと言うのも、一番仲の良い白に聞けなかったことが聞けるはずもない。


「お困りのようですね、斎藤さん。」


 この声は、こっち(過去)来てから嫌というほど聞いた、ほかの誰でもない天野 天のものだ。自称 使者で、今は俺の監視役だ。朝登校中に会わなかった故に油断していた。


「お、お前、また変なところから。」


「いい加減、慣れてくださいよ。」


「お前がそもそも驚かしてくるからで、そうやってお前は、いつも・・・」


「はいはい、でどうするんですか?1番の友達の岸田くんにあなたの失恋のことを聞けなくなって」


「それは今考えているところだ。」


「相変わらず馬鹿ですねぇ。」


「馬鹿って言うな、馬鹿って。」


「汗ダクダクで、いかにも何か話したげに追いついて、いざ話出したら、天気の話?もうこれを馬鹿と言わずなんというんですか?」


「んなことはわかってるよ、けどいざ話してみろって言うのもだなぁ。」


「そんなの私でも恥ずかしいですよ。」


「じゃあ、俺にそんなことやらせるようなヒントを渡すなよ、全く。」


「は?逆ギレですか? あなたの脳は筋肉で出来てるんですか?それともあれですか、昨日高校生のくせして、酒でも飲みすぎて酔っ払ってるんですか?」


「俺の脳は筋肉でできてないし、酒も飲んでないから酔っ払ってもいない。」


「もうちょっと頭使いましょうよ、斎藤さん。」


「頭を使うも何も「失恋」のことについて聞くってのは間違ってないんだろ。」


「まぁ、そうですけど、聞き方ってものがあるでしょう。」


「聞き方って言うけどなお前な。」


「いいから、人の話は最後まで聞いて下さい。」


「あ、ああ」


「いいですか、どうせ結果は、わかってるんです。あなたが修学旅行中に一年生の頃から、好きだった女の子に告白して振られた、振られたんですよ。」


「振られた、振られた二回言う必要ないだろ。」


「ぶっちゃけ、その時のシチュエーションとか、一緒に回ったメンバーなんてどうでもいいんです。」


「というと?」


「斎藤さんのここですべきことはなんですか?」


「「未練」を果たすことだけど。」


「そのためには、シチュエーションとか、うわべのことなんてどうでもいいんです。大事なのは、塚原さんの気持ちなんです。」


「塚原の気持ち?」


「そうです。それが肝なんですよ。」


「そんなの白に聞いても分からない気が、、」


「いいからとりあえずなんでもいいから、今日中に何かしらの情報得てください。じゃないと、、、」


「じゃないと、、?」


「消しますよ。」


「ったく、理不尽極まりないな。」


「なんか言った?」


「何にも。」


 天野が話終えるとそれを見計らったかのように白が教室に入ってくる。こいつ、予知能力でもあるのかと思わせるタイミングだが、それよりもなんとかして、聞き出さねばと必死になるのであった。



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