表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来と過去  作者: R.K
7/11

「可能性」という名の心の拠り所

 天野(使者)は、俺に伝えることだけを伝えると、変なことだけはしないようにとだけ言い残してサッサと帰ってしまった。その後、タイミングを見計らったのように天野(使者)と入れ違いに母が帰ってきた。天野(使者)は、まるで俺の母が、帰って来る時間がわかっていたかのようだった。あいつ、ホント超能力者か何なのか、、、


 夕飯を食って、風呂に入り、寝る支度をしてベッドの上に寝転ぶ。



 天野(使者)にやるしかねぇと言ったものの正直どうしていいかなんて全くわからない。


 なんせ、まだこっち(過去)に来て一日なのだから。


 けれど確実に一日目を終えてしまったのだ。俺がこの世界に何日いれるのかはわかってはいない。しかし、システムを始める上で天野(使者)は、「このシステムは、死んだ人の未練を晴らすためにある。」と言っていた。だから、その未練を晴らすまでが期限なのだろう。


 何日分の一日を過ごしてしまったかはわからないけれど、どんなものにも始まりがあれば終わりがあるもので、今こうして、考えているうちにも終わりへと着々と進んでいる。

 

 終わりがあると分かっていても、終わりが着々と進んでいると分かっていても、不思議と落ち着いている。


 それは、明確な終わりが見えていないからだろう。


 人生と同じだ。人は誰しも明日死ぬかもしれない可能性を少なからずとも持っている。けれど、誰しも明日、自分の命がついえるなんて思っちゃいない。


 それは、あくまで可能性であって、さらにごくごく小さな可能性だからだ。多くの人が「明日自分は生きている」という他の大きな割合を占める可能性を心の拠り所にすることで、死というものを非日常的なものと捉え、あまり考えずに生きている。人間の心は時に繊細で、時に鈍感なのである。


 だからなんだと言う話ではあるが、要は、今の俺は、死ぬ前の俺と同じように生きてしまっているということだ。


 明日になることに危機感を少しも抱かずに生きている。


 結局、未練を晴らす方法も今のままでいいのかも分からず、安定の後回しで、ちょうどいいところにやって来た睡魔を歓迎して夢の中へと誘われていった。





 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ