最後の一人
あれ以来、ひたすらいろんな人に、塚原詩音のことについて聞いて回った。こんなにもいろんな人に、聞いて回ったら変な噂でも立つんじゃないかって思うが、そんなのは気にしない。
俺に残された時間は少ないはずだ。
いつか、は分からないがなんとなくそんな気がする。
残された時間を有効に使わなくてはならない。
でもひたすら聞き回ると言っても、受験が終わってからほとんど授業がなく、ほぼ毎日、午前中には学校が終わってしまうから、会うことができる人も限られている。
その中でも、塚原詩音のことについて知っていそうな人に聞いていかなければならない。
毎日、できる限り聞いて回ったが、結局、有力な情報を得ることは出来ず、気付けば、卒業式まで、あと一週間となっていた。
流石に、焦りを感じ始めていた。所詮は、学年200人程度しかいないのだから、ひたすら、聞いて回れば、何かしら情報を得られると思っていたのに、、、
学校の帰り道、何も手がかりを得られず、手詰まりを感じていたところに、待ってましたとでも言うように天野天(使者)は現れた。今更、登場の仕方でとやかく言ってるどころでは無い。
俺には時間がない、、、!
「お困りのようですね。斎藤さん。」
「ああ、まずいな。」
すんなりと応じると、きょとんとした様子で、
「全然、驚かないんですね。」
「そう何回も引っかかるかよ。」
「それにそんなに、素直に弱音を吐くなんて、らしく無いじゃないですか?」
「流石に今回ばっかしは、どうも。せっかく自分でやり方を決めて実行するところまでできてるのに、結果が伴わないとなると心に来るものがあるよ。」
「でも、諦めたってわけでも無いみたいですね。」
「あと1人いるんだ、あと1人、、」
「その人は、何か知っていそうなんですか?」
「多分、その子が一番、塚原詩音について知ってるはずだ。」
「まだ、こっちの世界(過去)に来てから、会ってないんですか?」
「それがまだ一度も会ってないんだ。でも、学校に全く来ていないというわけでは無いらしい。」
「そうですか、、」
「今日はなんだ、俺のことを冷やかしに来たのか?もう、時間がないですよーって」
「そんなこと・・・」
「そんなこと俺にだって分かってる!!!俺には、もう時間がない。正確な時間まで分からなくても、なんとなくわかるんだ。」
「斎藤さん、、、」
「でもな、天。俺はやり切るぞ。それで結局ダメだったとしてもだ。もう中途半端も、後回しもまっぴら御免だ。やらぬ後悔より、やる後悔、だろ?」
「斎藤さん、変わりましたね。」
「そうか?」
「今までは、困ったらすぐヒントくれーだとか、強制されないと行動を起こせなかったり、すぐに助けを求めたり、、、」
「悪かったなぁ」
「けど、今は違います。今は自分の意思で、他でも無い自分のために必死に、諦めずに動き続けています。」
「まぁ、それしか出来ないってだけで、しかも、あとは神頼みってところもあるけどな」
「それでも、自分の意思で動き続けるってことが大事なんです。」
「そんなに褒められると照れるな」
「そんな斎藤さんに、嬉しいお知らせです。」
「なんだその嬉しい知らせってのは、」
「斎藤さんが、探しているその子は、明日必ず学校に現れます。」
「本当か?」
「はい。でも、よく聞いて下さい。もし明日を逃せば次はありません。」
「おお、会えるだけマシだ」
「本当に変わりましたね、、」
「ん、なんか言ったか?」
「いや、なんでもないですよ。」
「ありがとな、天」
「はい。」
明日は、俺にとって間違いなく大事な日になる。これを逃せば俺は終わりだ。でも、不思議と不安はない。なんとかなる気がする。
いや、なんとかしてみせる!!!