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未来と過去  作者: R.K
10/11

悪くない。

 白に塚原のことを聞いた後、他のクラスメートに、その噂が本当かどうか聞いて回ったが、確証を得るには至らず終わった。


 でも、どうやら、彼女が受験をしていないと言う噂は、何も二ヶ月間学校に来ていないことだけが、理由だけではないらしい。


 彼女と学習塾が同じだったというクラスメイトは、学校に来なくなったのと、ほぼ同じ時期からその学習塾に来なくなったからそうではないかと言っていた。


 彼女が普段話していたクラスメイトの女子は、彼女が進路希望調査書の全ての欄を空欄で出しているところを見たと言っていた。


 火のないところに煙は立たないと言うものの、どちらの話も決定打に欠ける。


 前者は、学校が来なくなった同時に、クラスメイトの通う学習塾に通いにくくなったから、塾を変えたと言えば、それほど違和感を感じるものでもないし、進路希望調査書も、ただ彼女がまだ決断しきれていなかっただけと言われればそれまでだ。


 噂は噂だけれども、今までなんの手がかりも見つけることのできていなかった俺には、十分すぎるほどの収穫だ。


 その日の帰りもいつも通り白と途中まで一緒に帰った。


 白と別れた後、どこから天野が出てくるかと周り探して見たがその姿は無かった。


 今日は1人か、、


 今のところで姿を現して、俺に怒る様子もないところからとりあえず、天野の言われたミッションはクリアしたと言うことだろう。


 今日手に入れた情報を整理すると、こんな感じか。

 ・塚原は、俺を「受験勉強に集中するため」に振った。

 ・でもどうやら、彼女は、大学受験をしていないらしい。

 ・それも、確証はないものの、それを伺わせることがちらほらとあると言うこと。


 正直、この噂の確証を得られなかったのは、痛い。一番当てになるクラスメイトを聞いても分からなかったということは、他のクラスの人に聞いても望みは薄いだろう。


 しかし、今俺が出来るのは、とにかく確証になるような情報を得て、その理由を知ることだ。


 こればっかりは、例え望みが薄かろうと、もう手当たり次第聞いていくしかない。


 何をすればいいかすら分からなかった時よりも、ずっとマシか、、、


「随分、マシになりましたね、斎藤さん」


「お前、また変なところから」


 さっき確認したはずなのに、、虚をつかれた上に、心まで読んで来やがる。


「どうして、お前は、そんな俺の心が手に取るようにわかるんだ?」


「いや、そう言う顔を斎藤さんがしてるからですよ。」


「お前、顔ってなぁ」


「いや、本当ですよ。いくら使者と言えど心までは読めませんよ。」


 どうせ嘘だろと思ったところに続けて、


「ただ、斎藤さんみたいな人をたくさん見てきたって言うのはあるかもしれませんね、その中でも斎藤さんは特にわかりやすいですけど。」


「お前、また俺のこと馬鹿にしてるだろ?」


「いやいや、むしろ褒めてますよ。人間、正直が一番ですから。」


「また、はぐらかしやがって」


「まぁまぁ、そんな怒んないでくださいよ。今日は白君から良い情報が入ったんでしょう?」


「でしょう?って、どうせ全部見てたんだろ?」


「はい、まぁ監視係ですからね。何そんなにカリカリしてるんですか?そんな怒ってばかりだと高血圧で早死にしますよ。」


「ただお前の掌の上で転がされてるのが、許せねぇってだけだよ。」


「まぁ、いいですけど、これからどうするんですか?」


「とりあえず手当たり次第今日のことを聞いて回るつもりだよ。」


「そうですか」


「なんか言わねえのかよ?」


「なんかとは?」


「いや、いつもなら、それは違うだの、ああしろ、こうしろとか言うだろ。」


「え、斎藤さん、もしかしてずっとそれを待ってたんですか?さては、ツンデレだけじゃなくてドM?」


「そう言うわけじゃねぇ、話をすり替えるな」


「つれないなぁ。まぁ、でもいいんじゃないですか、とりあえず今はそれで。」


「それは、また適当な答えだな」


「今の斎藤さんなら、大丈夫、、な気がします。」


「気がするって、お前なぁ」


「今の斎藤さんは、最初にこっちの世界に来た時の、モヤモヤが晴れたような顔をしてますから。」


「結局、顔かよ」


「斎藤さん、これは今から言うことはとても大事なのでしっかり胸に留めておいてください。」


「おう。なんだ?」


「最初にも言いましたが、この世界にいる時間は無限ではありません。」


「そんなことはわかっ、、」


 最後まで聞けと言わんばかりの眼差しである。俺もどうやら、人の顔で何かを察することができるようになったらしい、


「必ず終わりが来ます。それはいつかはわかりません。そう、人生と同じように。そこに情はありません。その中でも言えることがあります。それは、人生、やった者勝ちだと言うことです。やらぬ後悔より、やる後悔です。だから、もう悔いだけは残さないようにした下さい。」


「ああ、わかった。」


 そう言い切ると、スッキリとした表情で「じゃあ、また」と消えて行った。


 やらぬ後悔より、やる後悔か、、


 悪くない。



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