サラ先生の魔法講座⑫
「万物を司りし、偉大なる神の名において、我、古より伝わりし偉大なる神の奇跡を起こさん。
万物の力の元たる魔素よ、我が手に集い、この場所に顕在化せよ。
命の元たる水よ、我が魔素を持って、清らかなる水となり、世界に顕在化せよ。
『ウォーター』」
俺の手の前には、空の水差し。
伸ばした手の先から、俺の魔力が流れて水差しの中に、そして水を具現化して、水差しの中を水で満たした。
「ウソでしょ!?
なんでいきなり成功してるの?」
俺がウォーターの詠唱魔法に成功して、驚いているレイン。
「まさか、数回練習するだけでいきなり成功するとは。
呆れて言葉が出てこないというのは、将にこのこと」
相変わらず無表情で呟くサラ。
けど、サラの魔力の流れはそんなに乱れてないんだよね。
口ではこう言ってるけど、俺なら出来るかもしれないと予め予想はしていたのかもしれない。
一発成功とまではいかなかったけど、数回練習しただけで詠唱魔法のウォーターを発動する事に成功した。
やっぱり、ブロンズの魔法カードで、ウォーターの魔法を練習してたのが大きかったと思う。
実際に自分で魔力を操作して、性質変化させるのは、見るのとやるのでは全然違っていて、実際に魔力を操作しながら手探りで試行錯誤したので、一発成功ってワケにはいかなかったけど。
ブロンズの魔法カードと違って、魔法の発動プロセス自体は、初の試みだったわけだけど、魔力の流れるイメージや水を具現化するイメージ自体は同じだったので、なんとなく出来そうな感じがして、実際にやってみたら本当に出来てしまった。
「実は、ウォーターの魔法なら今までにちょっと練習してたりしてたからね」
そう言って、俺はウォーターのブロンズカードを机の上に置いた。
「これは?」
「この前に見た魔法カードとは少し違うみたいだけど」
この前、二人に見せた鉄色の使い捨て魔法カード、アイアンカードと違って、銅の色をしたブロンズカード。
前に見せたものと色違いの魔法カードに二人の目が釘付けになる。
「この前に見せたのは鉄の色の魔法カードだから、俺はアイアンカードって呼んでる。
そして、これは銅色の魔法カードだから、ブロンズカードって名付けた。
この二つの魔法カードには違いがあるんだ。
アイアンカードは、一回だけしか使えない使いきりの魔法カード。
魔法を使うための魔法力はこのカード自体に封じ込められてる感じで、ほんの少しの魔力を流して、魔法の発動をイメージするだけで魔法が発動する。
ブロンズカードは、魔法力を込めれば何回でも使える魔法カードってだけで、後はアイアンカードと同じような感じかな」
俺の説明にサラの目が見開かれる感じがした。
瞳孔が開いた感じとでもいうのだろうか、驚いた後に何かを思案しているような感じだ。
「へぇー、便利そうねコレ。
何回も繰り返して使えるなら、巻物より高く売れそうよね」
レインは、物珍しそうな感じで、俺が机の上に置いたブロンズカードを弄くっている。
「セイヤ、質問がある。
この具現化された魔法カードが使えるのはセイヤだけか?
それとも他の人間でも使用可能だろうか?
ブロンズカードとやらに魔法力を込めるのはセイヤ以外でも可能か?」
ああ、そういえば、サラに頼んで、そこら辺の事を後で検証しようと思ってたんだよな。
話す機会も無かったから、今まで先延ばしになってたな。
「いや、今までに俺のこの能力や、魔法カードの性能を説明した事が無かったからね。
レインとサラに初めて話したんだよ。
だから、他人でも使えるのか、魔法力を込めれるのか、まだ試してないんだよね」
「そうか、なら今、試してみてもいいだろうか?
セイヤ、他にブロンズカードの魔法カードを持っているか?
出来ればまだ魔法力の込められていないものがいい」
ウォーターのブロンズカードには俺のMPが込められているからな。
後、三種類のブロンズカードがあったはず、あれはまだ使ってなかったよな。
携帯端末を操作し、アイテムボックスに入っているブロンズカードを具現化した。
アイアンカードと違って、自分のMPを注がないと使えないから、使わないと思ってアイテムボックスの中に入れておいたんだよね。
具現化した、風属性のブロンズカードをサラに渡す。
「これは何の魔法カードだろうか?」
そうか、サラはこの魔法カードに書いてある文字が読めないのか。
どうみても、この世界の言語で書かれている感じじゃないものな。
俺は異世界語理解のスキルで書かれている文字が理解出来るんだろう。
「風魔法、ウィンドの魔法カードだよ」
それを聞いたサラは、自身の魔力をブロンズカードに注ぎ込み始めた。




