サラ先生の魔法講座①
レインに連れられて、サラがいる二人の住んでいる家へと向かう。
ノエルも、今日はルーさんがいるので店番をしないでいいらしく、俺達と一緒に来たがっていたけど、俺とレインが遠まわしに断ったので、しぶしぶ付いて来るのは諦めてくれた。
サラとノエルを一緒にしたら、また言い争いを始めるに決まってるしなぁ。
「サラー、セイヤを連れて来たわよ!」
バタン!
レインが家の入り口のドアを勢いよく開けた。
毎回こんな感じでドアを開けてるけど、俺がいないときでもこんな感じで勢い良く開けてるんだろうか。
そりゃ、勢い良く開けたほうが音がして、誰か来たっていうのが分かりやすいとは思うけどさ。
ズカズカと家の中に入っていき、サラの部屋のドアも勢い良く開けるレイン。
バタン!
勢い良く開けたドアの先には見慣れた顔の少女が一人。
部屋の中には、無地で質素な感じの服を着ているサラが椅子に座っていた。
Tシャツを思わせる少しゆったりめの白い布地の上に、短めの白いスカート。
読み物をしているのだろうか、白い半袖の服から伸びる小さく細い腕で、重そうな分厚い本を支えている。
椅子に対して身体が小さすぎるのだろう、スカートから伸びる細い足が、椅子からはみ出してブラブラと空中で揺れている。
椅子からはみ出した足の裏は宙に浮いており、地面に着いていない。
「サラ、セイヤを連れて来たわよ!」
入り口のドアを開けたときと同じセリフを繰り返すレイン。
しかし、サラの目線は本から外れることが無かった。
「分かっている。
もうちょっと待って欲しい」
今いいところだったりでもするのだろうか。
読書中のサラを待つ俺とレイン。
「ああ、そうそう、セイヤに渡すものがあったのよ。
ちょっと取ってくるわね」
そう言うと、レインはサラの部屋を出てどこかに行ってしまった。
目の前には読書をしている幼女が一人。
素顔を晒しながら、質素な感じながらも女の子の服装をしながら読み物をしている女の子。
こうしてみると、本当に、ただの可愛い女の子にしか見えないよなぁ。
顔も純粋であどけないながらも、シミやシワ一つ無い、まるで人形のように整った綺麗な顔をしている。
黙ってると、本当に絵になる可愛さなんだけどなぁ……。
読書しているサラの姿に見とれていると、探し物を終えたのかレインが部屋に戻ってきた。
「はい、これ。
昨日サラと話し合って、セイヤにあげようって事になったのよ。
ほら、何してるの?
はやく受け取りなさい」
レインは皮で出来た巾着袋のような小袋を俺に差し出してきた。
「これは?」
何なんだろう、俺にくれるって話らしいけど。
「昨日、一緒に着いて来てくれたでしょ?
それのアンタの取り分よ。
開けて中身を確認するといいわ」
レインに言われて、小袋の中身を確認してみる。
皮の小袋の中には、金貨が入っていた。
「金貨が入ってるように見えるんだけど」
「言ったでしょ、昨日の分のアンタの取り分だって」
いやいや、取り分無しって言い出してたのはレインだったような。
それを受けて、俺も納得して着いて行ったんだし。
それにしても、取り分が多すぎるような、金貨十枚以上は入ってるんだけど。
「いやいや、俺の取り分は無しって話だったんじゃ」
少し焦って話す俺に、本を読みながらサラも話に参戦してきた。
「それは例の魔物を倒した時の報酬分だ。
任務の分の取り分は無しでも、例の魔物と戦った分は受け取る権利がある。
それにセイヤはこの世界に来たばかりで、この国のお金も持っていないのだろう?
素直に受け取っておけばいい、昨日レインと話し合って決めたことだ」
そうか、この金貨はこの国の金貨、ギルザ金貨なのか。
良く見るとアイテムボックスに最初から入っていた金貨、ルーブル金貨とは違う感じがするな。




