剣の稽古⑤
実際にやって見せたほうが早い。
そう判断した俺は、生命力と魔力を練って闘気に変え、自分の身体を覆うように展開した。
俺の身体全体を、着ている服の上から覆う感じで、オーラのようなものを漂わせる。
「これは闘気と呼ばれるものじゃないの?」
俺を見ていた二人の表情が変わる。
さっきまで鼻で笑う感じで、ちょっと小馬鹿にしてたレインの顔が、少しずつ真剣な顔になり、そこから信じられないものを見るかのように、表現するなら目が点になっているかのごとく、驚いた顔で表情が固まってしまった。
ノエルは微笑みを浮かべた優しい顔から、少しずつ笑いが消え、真剣な表情になったかと思うと、驚愕したかのように口を開け、それを隠すかのように手を口元に持っていった。
「うそ……」
「そんな……」
レインとノエルから驚きの言葉が漏れる。
二人の反応から察するに、このオーラみたいなのはやっぱり闘気であってたみたいだな。
さて、どうしたものかな、まだレインは固まってるみたいだけど。
そう思いながら、ノエルの方を見ると、ノエルは未だに固まっているレインを余所目に、俺に近付いてきて正面から俺に抱きついてきた。
闘気がノエルと俺の間を阻んでいたので、咄嗟に闘気術を解除する。
服越しに押し付けられる女性の柔らかい身体。
ノエルって、レインほどじゃないけど胸もあるんだな。
布という名の服を通して感じる女性のふくよかな部分に、俺の全神経が集中しているような錯覚を覚えながら俺は抱きついてきたノエルを受け止めていた。
「凄いです!セイヤさん。
こんなに短期間で闘気術を会得するなんて!
私の想像以上です!
本当に凄いです!惚れ直しちゃいました!」
狂喜乱舞するかのように喜んでくれているノエル。
俺としても、喜ばれるのは嬉しいけど、ここまで喜ばれると逆に、背中がムズ痒くなるというか、そんな表現し難い変な気持ちを抱いてしまう。
それでも、女の子の方から抱きしめにきてくれるのは、男としても純粋に嬉しかったりする。
目が点状態になっていたレインも、俺がノエルに抱き付かれたあたりから意識をこちらに向けなおしたようで、少しムッとした表情でこっちを睨んだ。
「昨日の時点では、使えなかったはずよね?
それとも、最初から使えたのに隠してたのかしら?
セイヤ、詳しく説明してもらうわよ」
レインから感じる威圧感が増した。
レインが闘気術を発動しているようには見えない。
なのになぜだろう、レインから感じる重圧がこんなにも増しているのは。
はやく、レインさんに説明しないと。
そう思うも、ノエルに抱きしめられたまま話すわけにもいかない。
少し勿体無い気もするけど、レインの視線が痛かったので仕方ない。
できるだけ優しくノエルの腕を取り、抱きしめられている状態から、そっと腕を外す。
腕を外して、俺から離れて貰う時に、ノエルの訴えかけるような目線を感じた。
同時に射抜くようなレインの視線も感じる。
その両方の視線を痛いほど感じて、胃が痛くなりそうな感覚を覚えるのだった。




