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苦笑い

 あれから、女達の議論は白熱した。

 そして、平行線を辿った。


 完全に恋する乙女モードに突入しているノエル。

 対して、理論と正論を武器に戦うサラ。

 中立を装いつつ、何気に少しサラと俺の肩を持ってくれているレイン。


 あれだな、ノエルは凄く俺の事を評価してくれてるみたいだけど、あまりに評価が良すぎて高すぎる分だけ、後が怖いという感じがする。


 多分、待ち人補正と、異世界人補正が入っているのだろう。


 ずっと長年待ち続けた人だから、っていうのと、異世界からやってきた特別な人間、っていう色眼鏡の付いた視点から見てるために生じてる、自分に都合のいい方向での解釈が入ってしまっているのだと思う。

 あとは、長年待ち続けたものが手に入るというシチュエーションに酔いしれてしまっているのだろう。

 少し時間が経って冷静になれば、ノエルの恋の熱も少しは冷めるような気もするが、今日のところは無理そうだな。


「前から思ってましたけど、何なんですか?

 その喋り方、ババくさい。

 全然、女の子らしい話し方じゃないですよね。

 可愛くないし、色気も無い。

 あー、サラさんにならセイヤさんを預けても大丈夫かもしれませんね。

 女としての魅力が全然無いサラさんになら、セイヤさんがその気になるって事も無いでしょうし。

 明日からセイヤさんに魔法の知識を授けてあげて下さいね。

 まぁ、セイヤさんなら、サラさんの知識程度、すぐに全部吸収して、その後は用済みでしょうけど」


 恋する乙女モードのノエルさんは、サラに対しても辛辣だな。

 今までに溜まっていたストレスを発散するかのように、ズケズケと悪口を言っている。


「私は、まだ成長期だ。

 身体も心もこれからどんどんと女らしくなっていく所だ。

 寧ろ、年齢が幼すぎる割に、女としての魅力がありすぎて困っていたぐらいだ。

 女の魅力がありすぎて、男に絡まれて困るので、自然とこういう言葉使いになった。

 私も、話そうと思えば、女の子らしい声で、女の子らしい話し方で話せる!

 ノエル、お前は、私の封印している女としての魅力を解き放とうとしてしまっているようだ。

 私が本気になれば、お前のごとき村娘など相手にはならない。

 怖気づいたか?

 謝るなら今のうちだぞ!」


 うん、サラは超絶美少女なんだけど、喋りが残念な所ではあるんだよな。

 これで可愛らしい格好をされて、可愛らしい言葉使いをされたら確かにヤバそうだ。

 普段が普段だけに、そのギャップで萌え死にしてしまいかねない。

 この世界では、この高度な萌えというものが理解できる土壌が無いんだろうな。


 ノエルは、知らず知らずのうちにパンドラの箱を開けようとしている事に気付いていない。


「あー、ノエルちゃん、そこまで!ストップ!

 サラを本気にさせたらマジでやばいわよ!

 この容姿で、女の子らしい格好で、女らしい言葉使いまでされたら、どんな女の子でも太刀打ち出来ないんだから。

 顔を隠して、女の子らしくない口調ですら、男に人気がありすぎてやばいくらいなのよ。

 女として目覚めたサラを相手にすれば、いくらノエルちゃんといえども勝ち目はゼロよ!

 今のサラ相手なら、少しは勝ちの目もあると思うわ」


 ノエルはチラっと俺の様子を伺った後、少し冷静になったのかトーンを少し落とした。


「そうですね、サラさんは容姿もずば抜けて優れてらっしゃいますから。

 サラさんの封印されている女の魅力を解かれると、私としても不味い事になるかもしれません。

 ババくさい話し方とか言ってしまって、申し訳ありませんでした。

 私としても、そのサラさんの話し方に慣れていますし、セイヤさんとレインさんもそうだと思いますので、是非その話し方を続けてください」


 にっこりと笑うノエル。

 口調と表情は柔らかないつものノエルだが、その内容は完全にサラに喧嘩を売っている。


「覚えていろ、ノエルとかいう女。

 今日、自分で言った言葉を忘れるな。

 いつの日か、封印を解かれた私を見て、今日の言葉を後悔するがいい」


 無表情で捨てセリフを吐くサラ。


「サラが成長して、女の子らしい身体になったら凄いでしょうね。

 女らしい振る舞いに、女らしい言動までされたら、どこぞの王族って言っても通用するわよ。

 あーあ、ノエルちゃんのせいで、面倒な事になっちゃいそうだなぁ」


 サラの未来の姿を思い浮かべたのか、レインがノエルを遠まわしに責めている。


 この後も、サラとノエルの言い争いが止まる事は無かった。

 いつまで続くんだ、この言い争い。


 たまに俺も巻き込まれるので、二人を刺激しないように気を使った言葉を使って、二人の間を取り持つ。


 二人の言い争いを見ながら、俺は苦笑いを浮かべるしかなかった。

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