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ノエルという女⑯

 そういえば、もう一つ気になる事があったんだったな。

 気が付いたら、いつの間にかノエルに抱きしめられていたという件。

 

 ノエルの『私より強くなってもらって』という話と、レインが話しかけていた『セイヤがノエルちゃんに刺されないかが心配で』という話から察するに、俺より強いノエルが、俺の認識できない速度で俺の至近距離に接近してきた、という事ではないのかと推察してはいるんだけども。


「それでさ、レインが言いかけてた『セイヤがノエルちゃんに刺され無いかが心配で』っていうセリフ。

 サラと話が被ってたから、途中で話すのを辞めたみたいだったけど、あれって何を言おうとしてたの?」

 

 実力的に俺を上回っていても、ノエルが俺を刺す気にならなければ俺を刺す事は無い。

 それに、今までの温厚な性格のノエルを見れば、とても人を傷付けるような性格には見えない。

 俺も女の子に手を上げるような粗野な性格では無い事もレインは知っているはずだ。

 それなのに、なぜ俺がノエルに刺されるかもしれないという心配を、レインがしたのか。 


「それは、ノエルという女が腹黒女だという事をだ」


 サラが、ぼそっと呟く。

 ノエルは、笑っていない。


 少し無表情気味のノエル。

 いつも笑っている所ばっかり見ているので、無表情気味のノエルがちょっと不気味な感じだ。

 少し怖い感じがする、怒っているのだろうか。


「前にね、噂で聞いた事があるんだよね。

 ノエルちゃんが、男の人を刺したって話。

 村を訪れた、才能ある若手の男の冒険者が可愛い女の子に刺されたって小耳に挟んだんだのよ。

 それが他ならぬノエルちゃんだったのよ。

 後で、ギルバードさんにも聞いたんだけど、話は事実だったみたいだしね。

 まー、噂では尾びれ背びれが付いてはいたんだけどさ。

 ノエルちゃんが男を刺したって事は、事実だったってワケ」


 ノエルは無表情で沈黙している。

 なぜか分からないけど、少し怖くなってきたぞ。


「この女は外面だけはいいからな。

 ギルバードの紹介で、知り合った才能ある若手の男に媚を売って気に入られ、腹黒女も満更では無い様子で男がその気になった所をブスリとやったというのが真相のようだ」


 そうなのか。

 いや、男が何もせずに刺されたとは考えにくいから、大方手を出そうとして刺されたんだろうけどさ。


「それは、あの男が私に手をかけてきたから仕方なくやったんです。

 正当防衛というもので、私に非はありません」


 淡々と答えるノエル。


「実はさぁ、私もノエルちゃんと何回か手合わせした事があるのよね。

 ノエルちゃんは木の短剣、私は木剣でやったんだけど。

 少なくとも、今のセイヤよりは断然強いわよ?

 剣に比べて短いリーチの短剣で、私とあれだけ闘えるんだもの。

 闘気を短剣に纏わせる事も出来るし、不意を付けばA級冒険者でもタダでは済まないでしょうね」


「いえ、護身術として少々嗜んでいる程度のものです。

 身を守る術を持つのは、国境に近いこの村では当たり前の事ですから。

 それに私には才能がありません。

 あれだけ努力したにも関わらず、この程度の実力しか無いのですから。

 レインさんより明らかに努力してるにも関わらず、レインさんに実力が及ばない。

 明らかに才能が無いんですよ、私」


 無表情だったノエルも、話し始めると顔に感情が戻ってきていた。

 しかし、このノエル顔に現れている、ノエルの感情。

 これは本当にノエルの感情なのだろうか。

 

 さっき見た無表情のノエルの顔が頭から離れない。


 ノエルは自分でも自分を偽って、表面上はずっと笑いの絶えない女の子を演じて来たんじゃないだろうか。


 そういえば、サラもそんな事を言ってたような気がするな。

 俺に出会ってから浮かべたノエルの笑顔は、本当に心からの笑顔だったに違いないとか、そんな感じの事を。

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