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ノエルという女⑮

 俺は三人の女の子を目の前にして座っている。


 レインか転げて晒した痴態の件は、ノエルとサラの二人が気にしてなかった事もあり、レイン自体が無かった事にしようとしていた事もあり、特に誰からも触れられる事は無かった。


 あの後、サラとレインを家の中へ招き入れ、俺とノエルを加えた四人で詳しく話をする事になったのだが、この家が一人宿泊用という事もあり、椅子が一つしか付いていないので、さっき二人でいた時と同じ形でノエルが椅子に座り、俺がベットに座る感じでサラとレインを俺の横に座らせて話をしようとしたのだが、何故かノエルがそれに反対したので、俺が椅子に座る事になり、それと向かい合わせる感じでサラとレインとノエルの三人がベットに座る事となった。


 俺と向かい合う形で、ベットに座っている三人。

 左手側から、ノエル、レイン、サラという順番だ。

 ノエルとサラはお互いに隣に座るのを嫌がった為、レインが間に座るという形になっている。


 俺は、サラとレインの二人と別れてからの事を説明した。

 ノエルも、俺視点からの話に興味があったのか、黙って俺の話を聞いている。

 家に入ってからのノエルの行動と話、それを聞いて俺がどう思って、どう行動し、どう話したか。

 完全に言動の細部までは覚えてないけど、出来る限り覚えている範囲で。


 俺の話を聞き終ったサラが口を開く。


「大体の状況は分かった」


「ああ、セイヤって、鈍感というか、鈍いというか、純粋というか。

 ノエルちゃんが勘違いしちゃうのも無理ない気がしてきちゃった……」


「いや、違うぞレイン。

 多分、勘違いしたのはセイヤの方だろう」


 そうなんだよな、多分、勘違いしてるのは俺の方。

 ノエルの言葉が、純粋に俺が理解してる言葉の意味を指していたのではなく、日本語で言う諺や慣用句のように、文脈や言葉の連なりで意味が異なってくるものがあったのだろう。

 そのせいで、ノエルと俺の間で言葉による意思相通の弊害、つまり、齟齬が生じたというわけだ。


「まず、『異性を抱きしめる』という行為。

 これには、相手に対する好意を示す。

 好意の無い人間を抱きしめることは無いからな。

 ようは、好きです、愛しています、という事の意思表示であるわけだ。

 セイヤは異世界人だったか、この世界の言葉をどこまで理解しているのかは分からないが、風習やそれに伴う言葉や行動の意味までは理解していなかったのだろう」


 なるほど、この世界の『抱く』にはそういう意味が含まれていたのか。

 日本で『抱く』という言葉には、性的な交渉を持つという意味も含まれていたので、普通に抱きしめるだけなのか、どっちかで迷ったんだけど、この場合はどちらも不正解だったみたいだ。


 ノエルの『私を抱きたくはありませんか?』という言葉は、『私の事が好きですか?』『私の事を抱きたいと思うくらい異性としての好意がありますか?』みたいな言葉のニュアンスだったのだろう。


「次に、身体を捧げる、身を捧げるという言葉。

 これは、相手に奉仕する、相手を信頼する、相手に信頼を寄せて身を捧げる、という意味がある。

 そこから発展して、相手と相棒関係になる事を意味する意味でも使われる。

 主な使われ方は、主従関係、師弟関係、恋人、戦相棒など。

 だが、結婚相手という意味でも使われる事は一応ある」


 肉体関係を求めてきてるのか、純粋に抱きしめたいと言ってくれてるのか迷っている俺に、『要求の対価として差し出せるものなんて、私の身体くらいしかありませんから』と言ってきたノエルの言葉で、俺は勘違いしたんだよな。

 その後に、ノエルが奴隷になりそうになってた話を聞いて、ますますそっち方面での意味合いで解釈してしまっていた。


 それでも、対価として身体を差し出すとか言って使っていた『身体』という言葉の意味を、肉体関係を含まず純粋な信頼や奉仕という言葉の意味で理解するのはちょっと苦しいな。

 やはり、ここは将来の結婚相手として、自分の身体もゆくゆくは捧げるという意味合いで、自分の身体も捧げるという言葉の言い回しが使われていたのかもしれない。

 よくよく考えてみれば、自分が奴隷、知らない男の慰み者にされる、とか言ってたところから考えるに、ノエルは性奴隷として売られる予定だったのだろう。

 性奴隷にされそうになって、自ら命を絶とうと考えるまで追い詰められていたノエルが、自分の身体をやすやすと知り会って二日目の男に許すわけが無いか。

 

 その状態から助けてくれたギルバードさんに恩義を感じていたし、そんなギルバードさんを差し置いて、いくら将来の見込みがあるからといって、自分の裁量でそこまでするはずがないしな。


 冷静になって考えてみれば、おかしいところはいくつもあったし、絶対に気付けないレベルのものでは無かった。

 やはり、俺も可愛い女の子と二人きりになった事で、その状態に酔っていたという事なのだろう。

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