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ノエルという女⑬

「二人とも、どうしてここにいらっしゃるんですか?

 私達の後をつけて来たんだろうって事は、分かりますけど」


 ノエルが怒っている所は、初めて見たかもしれない。

 本気で怒っているという訳では無いみたいだけど、明らかにムッとしてる感じで、話し方からも自分が不機嫌である様を隠そうとはしていない感じだ。

 いつもの温和な笑顔じゃなくて、少し不敵な笑顔を浮かべている。


「いやいや、セイヤがノエルちゃんに刺されないかが心配で」


「ギルバードはどこにいる?

 ギルバードが着いていくと言ったから、お前とセイヤが一緒になるのを見逃してやった」


 レインとサラが、ノエルに話そうとしたんだろうけど、タイミングが悪くて、レインが話そうとした瞬間にサラが話しだして、二人の会話が被ってしまった。


 サラと話が被ったので、途中で話すのを切ったみたいだけど、俺は聞き逃していないぞ、レイン。

 しかし、俺がノエルに刺されないか心配したって。

 一体、何をどう心配すれば、俺がノエルに刺される事になるんだか。


「ギルバードさんは、ルーさんに用事があるので、ルーの店に行きました。

 それで、繰り返しになりますが、なんでお二人がここにいらっしゃるんですか?

 セイヤさんの事が気になって、ここにいらっしゃったんでしょうか?

 それならご安心下さい。

 私とセイヤさんは先ほど結ばれましたので、もう貴方達二人が入り込む余地はありませんので。

 ということですので、お二人ともお帰り下さい、ご心配頂きありがとうございました」


 ぇ?

 俺とノエルが結ばれた?

 サラとレインを追い返すために口から出任せを言っているのだろうか?


 不適に笑いながら、サラとレインに言い放つその様は、先ほどまで泣いていた女とは思えないほど自信に満ち溢れている。

 この場で嘘を吐いたって、当人の俺がいるんだから、そんなすぐにバレる嘘を吐く必然性がないよな。


 となると、考えられるのは、言葉の言い回しの違いだろうか。


 確かに、俺は命を賭けてノエルを守ると約束した。

 それを結びつきと捕らえるのなら、俺とノエルは強い約束で結ばれたと表現しても間違いではない。


「え、結ばれたって……?

 セイヤとノエルちゃんが?」


 ノエルの言っている言葉の意味が良く理解出来ていないのか、目を白黒させたと表現するのが適当な表情で、不思議そうな顔で尋ねるレイン。


「腹黒女のやりそうな事。

 どうせ、セイヤを騙して、口車に乗せて口約束を交わしたに違いない」


 無表情で、ノエルに口撃を開始し始めるサラ。

 無表情で感情は伺えないけど、発する魔力からサラの感情をある程度読むことは出来る。

 サラ、怒ってるのかな?

 動揺してるような感じがしないでもないけど。


「騙して口車に乗せてなどいません。

 私とセイヤさんはお互いの本心を曝け出して本音を言い合ったんです。

 結果、セイヤさんは私の事を愛してる事に気がついて、私を優しく強く抱いて下さりました。

 私達は、結婚の約束を交わした仲なんです。

 これ以上、お二人がちょっかいを出すというなら私としても考えがありますよ」


 エェッ!?

 なんだこの張り詰めた空気。

 何か、俺とノエルとの間で凄い誤解が生じている気がしてならない。

 愛してるとか、どこがどうなってそうなったのか。

 結婚の約束を交わしたって、結婚って言葉の単語自体、今初めてノエルの口から聞いたんですけど。

 ちょっと待って、何がどうなってるのやら。


「いや、結婚って?

 俺、結婚なんて話、今初めて聞いたんだけど?」


 とりあえず誤解を解かなければいけない。

 どこで誤解が生じたのかは分からないけれど、とりあえず話さないことには誤解も解けない。


「何を言ってるんです?セイヤさん。

 『私を抱きたくないか?』って私が聞いた後、抱きしめてくれましたよね?

 『私の要求の対価として、差し出せるものは私の身体くらい』っていう話をした後に、私の要求に応じてくれましたよね?

 それって、つまり私と結婚する約束をしたのと同じ事じゃないですか」


 何でそういう論理になるのかは分からないが、全く根拠が無くこんな事を言っているというのでは無いという事だけは分かった。


「ああ、確かにセイヤさんは、今はまだまだ弱いですから。

 結婚するのは、セイヤさんにもっと強くなって貰ってからになりますね。

 私より強くなってもらって、ギルバードさんよりも強くなってもらって、ギルバードさんに認めて貰ってから正式に結婚するという形にはなると思いますけど。

 大丈夫ですよ、セイヤさんは私の見込んだ男なんですから。

 セイヤさんがその気になれば、あっという間に強くなりますよ。

 私、男を見る目だけはありますから。

 それにギルバードさんも言ってましたから、セイヤは俺を超える逸材だって」


 満面の笑みで、俺に話してくるノエル。


 私より強くなってもらって……?

 今のノエルは俺より強いのだろうか。

 何の才能も無いとか自分の事を卑下してた気はするけど、自分の事を弱いとは言ってなかったな、確か。


「なんか、凄い誤解が生じている気がするよ。

 ノエル、ちょっと冷静になって、落ち着いて話をしよう」


 なんか、この感じはヤバイ。


 そういえばさっきレインが、『セイヤがノエルちゃんに刺されないかが心配で』とか言ってたな。


 上手く誤解を解かないと、本当にレインの言うとおりになってしまうかもしれない。

 ノエルから、普段とか比べ物にならないくらいのオーラを感じる。

 

 これは修羅場になる。

 そんな気がしてならない。


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