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ノエルという女⑫

 その後、お互いに野獣になった。


 という展開は、もちろん無かった。



 その後、ノエルとも少し話のやり取りもしたんだけど、特に当たり障りも無い話だったはずなのに、何故か少し違和感を感じたんだよな。


 今までも、他の人と話してた時に感じたような違和感。

 多分、異世界語の翻訳スキルのせいだと思う。


 この世界の人達と話す時、俺は日本語じゃなくて、この世界の言葉で話している。

 これは理屈じゃなくて、生まれた時からこの世界の言葉に慣れ親しんだかのように話せる。

 ただ、異世界としての慣習や言葉の使い方の違いから、違和感を感じる事があるんだよね。

 異世界語は話せても、この世界で生まれ育った知識や習慣は無いからね。


 けれど、些細な言葉のニュアンスや使い回しが違うだけなので、違う言い回しや違う単語を使うようにすればその違和感も消えて、ちゃんと意思疎通が出来るから、そんなに気にはしてなかったんだけど。


 なんかノエルとの会話も、この異世界語の使いまわしの違いから、齟齬が生じてるような違和感を感じた気もするんだよな。


 後、気になるのは、最後のノエルからの抱擁。

 ノエルを正面に見据えて、気にしてたはずなのに、気付いたらいつの間にか抱きしめられていた。

 あれは、何だったんだ。

 俺の意識が飛んだんだろうか。

 だとしたら、俺って自分でも分からない欠陥を抱えているのかもしれない。

 女関係に絡むと致命的な弱点を露出する、みたいな。


 あれからノエルと少し話してから、お互いに少し落ち着いた。

 そして、冷静になったので思い出した事があった。

 サラとレインがこの家の近くまで来てなかったっけ?


 俺は精神を統一して、この家周辺の魔力を探知する。


 えっ!?

 サラとレインの魔力を、この家のすぐ傍で感じた。


 えっ!?

 これって……。

 二人とも、この家の、そこのドアの前で待ち構えてるんじゃないの?


 俺の背筋が凍るような、ぞわわっとした悪寒が走る。


 まさか、今までのノエルとのやり取りを二人に聞かれてたりしないだろうな。

 いや、別にお互いに聞かれて困るようなやり取りはしていない。

 

 ドアを少しだけ開けられて、俺達が何をしてたか覗かれてたりしてないよな。

 気になったので、ドアの方を見てみるも、ドアが開けられて隙間が空いているような形跡は無い。

 しかし、今は空いていないだけで、ドアを開けられて覗かれていたという可能性は否定出来ない。


 いや、たとえ覗かれていたとしても、服の上からお互いに抱きしめ合っただけだし、見られていても特に問題は無い……はず。

 

 俺の様子を不審に思ったのか、ノエルが俺に話しかけてきた。


 俺は正直に『サラとレインの魔力を、そこのドアの向こうから感じる』と、ノエルに言うと、ノエルはドアの前まで行き、勢いよく家の入り口のドアを開けた。


 そこにはバツの悪そうな顔をしたレイン。

 そして、無表情のサラがこちらを見ていた。


「いやぁ、お二人とも。

 さっきぶり!

 また会ったわね」


 レインの言葉で、レインが別れ際に言っていた言葉を思い出した。


 レインが別れ際に言ってた言葉は、確か『またね!』だったか。

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