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マスター

「俺が実際に目にした事があるのは、[ソードマスター]と呼ばれるマスターだけだな」


 ギルバードさんが実際に目にした事があるという、[マスター]の力は想像を絶するものだった。

 B級冒険者が1vs1(タイマン)で互角のB級モンスター複数を剣一振りで惨殺。

 A級モンスターですら赤子のごとく蹴散らし、S級の魔物を倒し、国を救ったという。

 ギルバードさんは遠巻きに見ただけらしいが、剣筋どころか動きすら見えず、ただ一瞬で魔物が死んでいく様だけが見えたらしい。


「あの力は人知を超えていた」

 

 ギルバードさんがそう称する、人知を超えた力が俺にも備わっている。

 ソードマスターとは違い、魔法カードを引く能力なんだけどさ。

 この能力、使い方次第では相当なポテンシャルを秘めていると俺は確信している。

 後は実際に使ってみて試すのと、どんな魔法カードがあるかによるな。

 色々と考えていると、早く魔物を狩ったり、魔法カードを使ってみたい衝動に駆られる。


 それから二人と色々な話をした。

 俺からはこの世界に関する事を聞き、二人からは異世界に関する事を聞かれた。

 俺が死んでから、神に転生させて貰ったという話をした時が一番二人が喜んでいた気がする。

 ギルバードさんはふっと笑みをこぼし、ノエルは心から安堵したような笑みを浮かべた。


 帰る前に聞いて知った事だけど、ギルバードは恋人と親友を亡くし、ノエルは両親を亡くしているとの事。

 ギルバードさんは、この教会の横にある恋人と親友の墓を訪れるのを兼ねて、ノエルをここに連れてきているらしい。

 ノエルの両親の墓はここには無く、教会の祭壇でいつも両親への祈りを捧げているとの事。

 俺が死んでから転生した事を聞いて、二人の大切な人が死後の世界へ旅立った事について、自分の心を納得させるための一因を作る一旦になれたのかもしれないな。



「本当に一人でここに残るのか?」


 ギルバードさんの言葉に、俺は頷く。

 村に行く前に、俺にはやらなきゃいけない事が山ほどあるからな。


「そうか、やることとやらが終わったら村に来い、俺が直々に手ほどきしてやる」


 どうやらギルバードさんに気に入られたらしい。

 というより、異世界の話が聞きたいだけなのかも知れないが。


 俺がこの世界の事について色々と説明してもらったお礼として、二人に尋ねられた質問には出来るだけ答えるようにした。

 中でも二人の関心が高かったのは、俺の前にいた世界の事。

 俺が日本の事について話すと、二人は興味深そうに、また御伽噺の世界の話でも聞くように、子供っぽい顔で真面目に聞いてくれた。


「村には同世代の子供が少ないので、セイヤさんと話せて楽しかったです」

 

 ノエルは笑みを浮かべて俺を見つめる。

 異世界補正と、ぼっち補正で俺の胸の鼓動が高鳴る。

 勘違いしてはいけないと思いつつ、勘違いしてしまう。

 

 勘違いしそうな思考を正し、自分を律する。

 今の俺はこの世界でも最弱に近い存在だ。

 この笑顔に答える事も、守ることすら出来ない弱い存在。

 人類を救ったというソードマスターみたいな人外な存在は無理としても、自分の身を守る力や関わった人を守れるぐらいの力は身に付けなければいけない。


 急に日本で聞いたキャッチフレーズを思い出す。

 

 守りたい、この笑顔。


 ノエルの笑顔は無邪気な笑顔だ。

 けど、ノエルの両親は死んでいるし、とても苦労しただろう。

 それでも前を向いて生きている、それがこの笑顔に込められているような気がした。 


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