ノエルという女⑤
あの二人、俺とノエルの後をつけて来てたのか。
サラとレインの二人で密談してから、やけにあっさり引き下がったと思っていたら。
あの時に、二人で帰る振りをして、俺とノエルの後をつける算段でもしていたんだろう。
サラほど大きい魔力じゃないので、感じ辛くはあるんだけど、確かにサラの近くにレインの魔力もあるような気がしないでもない。
まぁ、サラ一人だけで来るとも思えないし、レインもいるんだろうな。
魔力察知スキル、使って本当に良かった。
やっぱり人間、困ったときや窮地に陥った時こそ、冷静に状況を判断して行動しなければいけないな。
意識を現状に引き戻す。
現状はノエルが俺を抱き締めながら、上目遣いで俺の返事を待っている状態だ。
危なかったな。
サラとレインが周囲にいると分かったことで完全に冷静になったけど、サラの魔力を感じていなかったら、冷静になるまでもっと時間を要していたかもしれない。
けど、どっちにしろ、用心深い俺が簡単にハニートラップにかかるとは思えなかったけど。
さて、どうしたものかな。
「とりあえず、あっちに座ろうか。
ノエルが何を考えてるのか良く分からないけど、あっちでゆっくり話を聞くからさ」
そう言って、ノエルを優しく俺から引き離すと、ノエルを椅子に座らせ、俺はベットに腰掛けて、二人で対面する感じ座った。
「それで、さっきのノエルの言葉の意味なんだけど、どういう意図なのか詳しく説明して貰ってもいいかな?」
言葉上は優しい言葉で、それでも態度は少し尋問風な口調で、ノエルの態度と思惑を疑っている感じの姿勢でノエルを問いだたす。
「そのまま、言葉通りの意味です。
私は、レインさんやサラさんの様に、剣も魔法も、それどころか何の才能の無い普通の女ですから。
だから、要求の対価として差し出せるものなんて、私の身体くらいしかありませんから」
俯いた表情で話す彼女の姿に、笑顔を振りまいてた可憐な少女の面影はどこにもなかった。




