ノエルという女④
予想外の事の連続で、頭の中が完全にパニくっている。
ノエルの言動で、自分の心臓の鼓動が早くなっているのを感じる。
しかし、予想外の事の連続でパニくった反動なのか、逆に冷静に状況を分析しようとしている自分もいた。
『抱く』という意味は、今こうしてノエルが俺を抱きしめている事を指しているという可能性もある。
けれど、文脈や行動の流れからして、子作りの方の『抱く』を示している可能性も高い。
ノエルの思惑は何なんだろうか。
純粋に好意があるか聞いてくれているだけなのだろうか?
それとも俺を試しているのか?
サラがノエルの事を、腹黒い女と言っていたのを思い出す。
もしかして、俺以外の男にも毎回こんな事をしているのかもしれない。
ノエルのこの行動と言葉にはどんな意図と思惑があるんだ。
思い返してみれば、ギルバードさんの行動も不自然だったな。
あのタイミングで去って、俺とノエルを二人きりにするだなんて、予め示し合わせていたかのような。
もしかして、二人で俺を試しているのじゃないだろうか?
それか、普通にハニートラップとしてノエルを利用しているのだろうか。
ルーの店に行くとか言っておいて、実はこの建物の周辺に来て様子を伺っているんじゃないのか?
そして、タイミングを計らってこの建物に入ってくる、行為の最中か、直後かは分からないけど。
そして責任を取らせるという計画だったりするんじゃないのだろうか。
それなら、魔力の流れで相手の心を見透かすサラが、ノエルとギルバードさんの二人を、ああ評していたのも納得が出来る。
確かめてみるか。
俺は自分の魔力の放出を抑え、神経を集中し、建物の周辺に魔力の流れが無いかを確かめる。
サラの魔力を感じたり、魔物の位置を魔力で察知する事も出来た、俺の魔力察知の力を発動させる。
魔物の位置を把握できた距離から換算して、魔力の大きさにもよるが、数百メートルぐらいの範囲なら魔力を察知できるはずだ。
この建物の周辺に魔力が放たれていないかを察知する。
すると、俺のよく知る魔力が、この建物の周辺にあることを感じた。
この魔力の感じ……。
ギルバードさんの魔力では無く、もっと強い魔力。
今まで一番感じた魔力で、一番分かりやすく、感じやすい魔力。
この建物から少し離れた位置にある、サラの魔力を俺は感じていた。
 




