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セイの村にて⑦

 サラの発言を聞いたノエルの、引きつった様な作り笑いの表情が面白かったのか、ギルバードさんはノエルの方を見てから急に笑い出した。


「アッハッハッハ」


 ギルバートさんが、大音量で笑っている。

 声量があるので、店の外まで聞こえるんじゃないかって思うほどの勢いだ。


「いやいや、すまんすまん。

 まさか、男嫌いのサラにこれ程までに気に入られるとはな。

 俺としても、完全に予想外だった。

 すまんな、ノエル」


 少し落ち着いたのか、落ち着かせるためなのか、水差しから自分のコップに水を注いで飲むギルバードさん。

 そういえば、ここって酒場なんだから、お酒とか豊富に取り置いてそうなんだけど、ギルバードさんは皆と同じように水しか飲んでなかったな。

 机の真ん中には大きめの水差しがあって、運ばれてきた飲み物はこの水だけしか無い。

 肉ばっかり食べてたし、肉とお酒って合うって聞いたんだけど、何でギルバードさんはお酒を飲まずに水を飲んでるんだろうか。

 ただ単にギルバードさんが、お酒を飲めないだけなのかもしれないけど。

 

「セイヤを二人の狩りについて行かせたのには俺なりの思惑があった。

 レインとサラ。

 ノエルも知ってのとおり、男嫌いで有名な女二人組だ。

 二人を知ってる俺からすれば、レインは男嫌いというより、実力の無い男や軟派野郎が嫌いという印象だが。

 冒険者ギルドや町で男に絡まれて、散々嫌な目にあってきてるみたいだしな」


 ギルバードさんが、ノエルの方からレインの方に目をやり、レインを見つめながらレインに話しかけている。

 レインは最初はギルバードさんの目を真面目な目で見返していたが、男の話をされると何か思い出したかのように下を向いて、ギルバードさんの顔から目を背けた。


「サラの男嫌いはレインより深刻だ。

 何があったのかまでは俺は知らない。

 ただ、その容姿と才能だ、今までに色々と辛い目や酷い目にあってきたのだろう。

 俺にはサラにどうこう言う資格なんて無いが、年長者として、人生の先輩として出来ることや、教えてやれる事なら色々とあるからな。

 そういう意味で、見込みありそうなセイヤをサラにぶつけてみたってのもあるんだが。

 男だから拒絶するというのではなく、男でも人によっては認める事が出来るようになる切っ掛けにでもなればいいかと思ったんだが、どうやらセイヤは上手くやって俺の予想を超えてくれたようだ」


 サラの方を向いて、サラに話しかけるギルバードさん。

 サラはギルバードさんの方を向いて、目線を合わせ続ける。

 無表情でギルバードさんの方を、睨むように見続けるサラ。

 すると、ギルバードさんの方がサラから目線を逸らして、ノエルの方を向いて話を続ける。 


「ま、他にも思惑は色々とあったんだがな。

 全てが俺の思うとおりに進むわけじゃない。

 ノエルにとっては、狙っていた獲物を強敵に奪われた感じになってしまったかもしれん。

 それも俺のせいでな」


 ギルバードさんに見られて、話しかけられたノエルは、作り笑いも辞めて沈んだ表情で下を向いた。


「いえ、奪われたただなんて、そんな。

 別にセイヤさんは、まだ誰のものと決まったわけでもありませんし」


 下を向きながら呟くように話すノエル。


「確かに、私は男嫌いと言われても否定出来ないかも。

 だって、女より男の方が嫌なヤツが多いんだもの。

 一々突っかかってくれば、女だからって理由で絡んでくるし。

 しかも、女とヤる事しか頭に無い連中ばっか、ホント嫌になるわ」


 そう話すと、レインも自分のコップの中に入った水を飲んだ。

 もう全員の箸が止まっている。

 机の上にある食事も結構片付いたし、そろそろお開きかもしれないな。


「セイヤは、他の男達とは違う。

 才能がある事は勿論そうだが、それ以外の人間性でも信用できる人間だ。

 私の容姿を晒しても、他の男のように態度を豹変させる事も無かった。

 現に、今こうして女の子らしい容姿をしている私を前にしても、興味無さそうに態度一つ変えない。

 女としての自分を意識した事は無かったが、これは少しプライドが傷付く」


「そういえば、女の子らしい姿のサラを見て、態度を変えない男って見たことないわよね。

 どこからどうみても絶世の美少女だもの。

 もしかして、セイヤって女に興味が無いんじゃないの?

 男色ってヤツ?

 それなら納得いくかも」


 いやいや、まてまて、人を勝手にホモ扱いするんじゃない、レイン。

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