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セイの村にて⑥

 俺、全然喋ってないな。


 隣で、ギルバートさんと楽しそうに話をしてるレインの声を聞きながら、ふとそう思った。

 知らない魔物の名前や、知らない技や技術っぽい名称、二人が過去に倒した魔物やその方法、二人とも話題が尽きなさそうに話が弾んでいる。


 逆に、こっちの三人はお通夜状態だ。

 主に会話的な意味で。

 一番喋ってるのが、レインとギルバードさん、時点でサラとノエル。

 そういえば俺って何か話したっけ?

 確か食べる前に少し話したぐらいで、後は飯を食うのに夢中で、全然話して無いような……。


 そんな俺の考えを察してくれたわけでは無いだろうけど、ノエルが俺に話しかけてくれた。


「そういえば、セイヤさんの好きな女性のタイプってどんな感じなんですか?」


 ピクッ。

 ノエルの何気ない質問に、俺の左右にいる人物の箸が止まる。

 箸が止まるというのは、食事をする手が止まったという意味で、実際には箸じゃなくてナイフとフォークで食べてるんだけども。


 サラはまだしも、なぜレインの手まで止まる。

 ギルバードさんと話をしてたんじゃないのか?

 ギルバードさんの方を見ると、興味深そうに俺の方を見ている。


 左の二人にもノエルの発言が聞こえたのか、会話が途切れてる感じだぞ。

 レインもギルバードさんも食べるのと話すのをやめて、こちらに注目している。


 やばい、全員の注目が俺に集中している。

 

 なんて答えたらいいんだ。

 レインと、ノエルと、サラ、三人の機嫌を損ねず、穏便に済ませれる答えを導き出さなければいけない。


 思い出せ。

 俺には女の子と絡んだ経験は皆無に近いが、知識はある!

 日本で培った、アニメやゲームの知識を総動員すればいいんだ。

 モテる男やカッコイイ男のセリフや立ち振る舞いを思い出すんだ。


「や、優しい女の子かな」


 ダメだった。

 いいセリフが思いつかなかったので、普通に無難に答えてしまいました。


「ふーん」


「私、よく優しい女の子って周りの人に言われるんです」


 興味なさそうなレイン、無表情のサラ、そして満面の笑みを浮かべるノエル。


 俺の杞憂だったか。

 ちょっと俺って女の子に対して自意識過剰気味な所があるのかもしれない。

 何気ないセリフで感情を乱されて、取り乱しすぎてるのかもしれないな。


 ノエル、いや女の子にとって挨拶代わりの言葉であって、一々そんなに気にする事では無いのかも。


「セイヤ、明日からアンタの剣の稽古に付き合ってあげてもいいわよ」 


 ん、どうしたんだ藪から棒に。


 ノエルとのやり取りに感化されたのか、レインが急に話しかけてきた。

 ギルバードさんと剣の話をしてたら剣の練習相手が欲しくなったってわけでもあるまいし。

 俺が『優しい女の子』が好きだって言ったから、それに対しての嫌味のつもりなんだろうか。


 私は優しい女じゃない、アンタに対して厳しい女だからっていうアピールなのか?

 それとも、アンタに優しい女を好きになる資格は無い、私の稽古に付き合えるぐらい強くなってから言えって意味なんだろうか。

 まさか、純粋に『俺の稽古に付き合う』というのが、レインの優しさに該当するのだろうか。

 確かに、レインにとって稽古にすらならないほど弱い俺との稽古に付き合うっていうのは、レインなりの優しさなのかも。

 

「セイヤ、私は病み上がりなのでしばらくは静養するつもりだ。

 明日から私の部屋に来るといい、この世界の魔法について詳しく教える。

 魔法の才あるもの同士でしか理解し得ない、二人だけの時を過ごそう」


 なんかサラもあからさまだな。

 これは分かる、ノエルに対しての当て付けなんだろうな。

 サラはノエルを目の敵にしてるから、ノエルに対抗心を燃やしてるんだろう。


 あ、ノエルの笑顔が作り笑いのレベルから、ちょっと誤魔化し切れないレベルに達しようとしている。


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