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掴みかかる勢い

「あの時の魔物を貫いた赤い光、あれはセイヤの魔法でしょ」


 そう唐突にレインから聞かれたのは、セイの村へ帰る道の途中の事であった。

 

 何度も『代わろうか?』と聞いてくるレインに、『大丈夫』と返しつつ、サラを背負いながらセイの村へ戻る途中のこと。

 サラもレインも何か思うところがあるのか、考え込むような渋い表情を浮かべつつ、三人ともほぼ無言だったのだが、その口火を切ったのがレインの言葉だった。


 俺は、サラの体重って軽いなー、とか、サラの腕も足も細いなー、とか、どうでもいいことばっかり考えてました、すいません。

 二人とも何か考えるような感じだったのは、やっぱりあの時の事だったか。

 俺に聞くべきか聞かざるべきか、聞くとしてもどう切り出してどう聞くか迷ってたのかな。

 どうしようか、今更隠し立てする事も無いしな。

 今後の為にも、ちゃんと話しておいた方がいいかもしれない。


 足を止め、後ろを振り返りながら俺の瞳をまっすぐ見つめるレイン。

 俺はレインに見えるように頷きながら、座れそうな手ごろな大きさの石を指差して言った。


「丁度いい手頃な石があるし、あそこに座って話そうか」


 サラを背中から降ろし、近くの手頃な石の上に三人で並んで座る。

 左手にはサラ、右手にはレイン。

 何か両手に花だなっと、こんな時でも不謹慎な事を考えてしまう煩悩だらけの俺であった。


 いかんいかん、と心の中で呟きながら気持ちを切り替える。

 そして、俺は携帯端末をポケットから取り出し二人に見せた。


「これはアイテムボックスの機能を秘めている魔道具。

 俺は、これを携帯端末と呼んでいる。

 二人も大方は察してると思うけど、これにはアイテムボックスの能力以外にも別の力があるんだ」


 サラは知っていましたと言わんばかりのクールフェイス。

 レインは『ほえ?』と顔に書いてあるかのような、ちょっと馬鹿っぽい表情になっている。


 携帯端末を俺のひざの上に置いて、二人に見せながら、逆のポケットに入っていた灰色の魔法カードを取り出して二人に見せた。


「それが、これ。

 一回だけ魔法を使うことの出来るカードを具現化する能力。

 この魔法カードを使うことによって、この世界に来て間もない俺でも簡単に魔法を発動する事が出来た。

 検証してみないと分からないけど、たぶんこの世界の人間でも使えるんじゃないかなと思う」


「ちょっと見せてもらってもいい?」


 レインが魔法カードを手にとり、色々な角度に傾けながら魔法カードをつぶさに観察している。


「私にも見せて欲しい」


 と、サラがいうので、別の魔法カードをサラに見せてあげた。


「サラは知ってると思うけど、この魔法カードを具現化する為には対価が必要なんだ。

 それが、この世界でいう魔法力。

 俺の世界の言葉でMPという、魔法を使うために必要なエネルギー。

 俺の魔法力、つまり俺のMPをこの端末に注ぎ込む事によって、魔法カードを具現化する為の力に代える事が出来るんだ。

 サラの魔法力でも出来ないか試してもらったんだけど、サラの魔法力じゃダメだった」


「ちょっとどういう事!?

 サラの魔法力でも出来ないか試してみたって、私は知らないわよ、そんなこと!

 私がいない間にサラにだけ秘密を打ち明けて、セイヤの能力の検証をしてたって事?

 私が知らない間に二人きりで?」


 なんか俺に掴みかかる勢いで話してくるレイン。

 あれ、なんか不味い雰囲気になってきたぞ、レインの機嫌を損ねてそうな感じがしてきた。

 サラの方を見てみると、我関せずと言った感じで、俺が渡した魔法カードに夢中になっている。


 うう、どうしたらいいんだ。

   


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