報告
俺とサラとレインは、無事にギルザバードの役員が滞在しているという建物まで戻ってきた。
あの石で出来てるような建物の名称は何なんだろうな。
見た感じは詰め所というか、砦と家の中間みたいな感じだったりするけど。
割と頑丈そうだし、魔物が襲ってきたりとかしたら、建物の中で篭城とか出来そうな作りではある。
役人と関わるのが面倒だったし、俺は部外者だったから、行くときは二人の手続きとやらが終わるまで建物の外で待ってたけど、サラがこんな状態だし俺も行かなきゃいけないだろうな。
「サラを背負って私と一緒に来て欲しいんだけどいいかな?」
建物と見張りの人間が見え、やっと一息つけると思ったのか、少し緊張感が解けた感じのレインが俺に聞いてきた。
「セイヤ、私からも頼む。
先ほど行った時に、セイヤの事は、アイテムボックス持ちの荷物持ちという事で、既に先方にも伝えてある」
「いつもはアイテムボックスをあそこで借りてから狩りに行くのよね。
借りるといっても、アイテムボックス持ちの役人に一人付いて来てもらうんだけど。
アイテムボックスを借りると毎回使用料を取られちゃうのよねぇ」
そうか、だからか。
俺がアイテムボックス持ちだと見抜いたギルバードさんが、この二人に俺を預けた理由の一つにアイテムボックスの使用料金が浮くからってのもあったんだろうな。
「セイヤ、何か聞かれたら、転生者とは言わず他国から来ている金持ちの息子という事にしておいて欲しい
。
後は私に全てを任せてくれればいい。
セイヤは黙って付いてきてくれるだけでいい」
サラの声が真後ろから聞こえる。
サラさん、近すぎです。
いつもより声が小さいからって、そんなに耳元で話さなくても聞こえるからね。
そういうわけで、レインが見張りの人に話し、レインと俺とサラの三人は建物の中へ入って報告の手続きをしたのだった。
いやー、殆どサラ任せだったけど、面倒だったわコレ。
まず、この建物の主任に事情を口答で報告し、魔物の討伐部位を証拠として提出するように言われたので、サラと主任がやり取りした結果、魔物はサンプルとして丸々国がお買い上げ、代金は過去の例から前金で貰い、貴重な部位があれば追加として後で支払う約束を取り付けて書面で契約を交わす。
討伐した魔物達を係の職員に渡して、相場で買い取って貰うの同時に、討伐した魔物の報告書を提出する。
町まで売りにいけば、ここでの買い取りより高くなるものもあるらしいが、手間もかかるし、次回の依頼を受ける為にも、ここで相場で売ってしまったほうがいいらしいとのこと。
D級とC級は簡易の報告書で良かったが、例のB級からA級の強さの魔物については詳細な報告書の提出を求められた。
特に倒し方を曖昧にして報告書を提出した為、サラが担当官と激しく口で応酬し合うのを俺とレインが黙って見守ることとなった。
サラの口撃に劣勢になった担当官は主任を呼び、三人で激しいバトルの末、サラの優勢勝ちという結果に終わった。
「奥の手を人前で曝け出す人間などいない。
自分の秘技や秘術や魔法を、公に出る報告書に事細かに書く馬鹿などいない」
サラさんの弁の抜粋。
こういうので、ひたすら担当官と主任の心が折れるまで口撃し続けていました、サラさんぱねぇ。
報告書も全部サラさんが書いて、俺は担当官にアイテムボックスから回収してた魔物達を渡して、レインが依頼達成書と、討伐魔物の受け取り分の額に相当する小切手みたいな紙を貰っていた。
この小切手みたいなのと依頼達成書を冒険者ギルドに持っていけば、相当額のお金と交換して貰えるらしい。
まぁ、こんな所に現金を大量に置いておくのは防犯上の問題が大きそうだしな。
レインと俺の出番は殆ど無く、病み上がりのサラさんに一人無理をさせる展開になってしまったのだった。




