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剣の舞

「その魔導具が俺の魔力に合わせて出来てて、俺にしか使えないってのは分かったけど、具現化物っていうのと、マーキングっていう単語は初めて聞いたよ。

 どんな意味なのか教えて貰ってもいいかな?」


 俺の携帯端末をペタペタしながら、熱心に調べている(?)サラに、先ほどの言葉の意味を聞いてみた。


「具現化物というのは、そうだな。

 魔法を使う際、例えば土魔法を使う場合、実際の土を使う魔法と、魔力によって具現化された土を使う魔法の二種類がある。

 この場合は後者の方。

 様は、この魔導具が魔力によって具現化されているものなんじゃないのか?

 と言いたい訳だ、私は」


 携帯端末を調べながら説明してくれているせいか、いつものサラに比べて片手間感がかなりする。

 あ、携帯端末のキーの方まで調べ始めちゃったよ。

 俺専用に出来てるとか言ってたけど、他の人が押しても反応するのかな? 

 もうちょっとサラを泳がせて調べさせてみるか。


「マーキングというのは、刻印魔法でよく使われるもので、ある魔力によって反応や効果を発現するように仕組まれた魔法とでもいうのかな。

 効果は様々だが、物質や生物などに魔力によるマーキングを施して、その位置を特定したり、召喚したりなど、他の魔法と併用して効果の真価を発揮できるようにする為の付属品の役割を与える為のものと言った所か」


 あ、サラさんが携帯端末のキーをいじり始めたぞ。

 やべ、画面が反応してるじゃん。

 他人でもこの端末使えるって事じゃないか。

 携帯端末に夢中になっているサラの後ろから素早く携帯端末を取り上げる。


「!?」


 急に取り上げられたせいか、びくっとなって驚くサラ。

 振り返って俺を見つめる仕草はオモチャを取り上げられた子供の様だった。


「セイヤ、後ちょっと、後ちょっとだけ触らせて欲しい」


「ダメデス」


 ここはNoと言える日本人。

 機嫌を損ねたのか、少しふくれっつらを見せるサラ。

 なんか初めて見たときからずっとポーカーフェイスだったのに、少し感情豊かになってきたな。

 それとも知らない人の前ではああなだけで、レインの前とかだともっと感情を表に出したりしてるのかもしれないけど。

 というか、レインは?

 荷物取りに行くとか言って大分戻ってきてないぞ。

 荷物の準備は出来てるとか言ってたんだから、持ってくるだけならそんなに時間なんてかからないだろう。

 またこっそり俺とサラの様子を伺っているのだろうか?

 そう思って、レインの入っていった部屋の方を見てみるけど人の気配がしない。


「あれ、レインは?

 流石に荷物を取りにいくだけにしては遅いような」


 俺は携帯端末をポケットにしまうと、レインが入っていった部屋の前まで行って中を覗き込んだ。

 こじんまりとした部屋の中は、机と椅子とベットしかない殺風景な部屋。

 机の上には持っていくであろう荷物をまとめたものが置いてある。

  

「あれ、レインがいないんだけど」


「いつもの事。

 多分、外にいる」  


 サラの言葉を受けて、家の外に出てみる俺。

 そこには、剣を振るっているレインの姿があった。

 サイドステップから流れるような横一閃、その流れを途切れさせないように軽い身のこなしで身体を移動させながら慣性のベクトルを上手く変換して連撃へと繋げていく、無駄と隙の無い洗練された剣と身のこなしは、まさに剣の舞と表現するに相応しい。


「レインは脳筋。

 悩みや迷いがある時は必ず身体を動かして気を落ち着ける。

 先程のセイヤの魔法の才能を見て思うところがあったのだろう」


 レインの流れるような動きに見惚れる俺。

 いいなぁ、あれぐらい剣を振るえて動けたら。


 というか、あれ木剣じゃなくて真剣じゃないか!

 危ないな!

 でも、安全な日本と違って、ここでは生死をかけて戦うんだ、真剣を振り回して練習するのは当たり前の事なのかもしれない。


 十分ほど経っただろうか。

 俺とサラが見ている事に気が付いたのか、レインは剣を振るのを辞めてこっちに近付いてきた。


「ゴメン、もしかして待たせちゃったかな?」


 いやいや、剣を振りに行くのはいいんだけど、それならちゃんと断って欲しかったよ。

 荷物を取りに行くとか言ってたからいなくて心配したし!

 と返すのも大人気ないな。

 なんて言葉をかけるのが正しい選択なのだろうか。

 『待たせちゃったかな?』と女の子に聞かれたら、『今来たところ』って返すのが正解なんだろうけど、待ち合わせじゃなくて、家の中にいたから今はこのテンプレ模範解答も使えないし。


「問題ない。

 準備運動も終わったようだし、レインの荷物をアイテムボックスに回収次第出発する」


 なんて答えるか迷ってたら、サラさんが話を進めてくれたので、流れに身を任せる俺なのであった。

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