魔法潜在能力推定紙
総生命力がMAXHPで、総内包魔法力がMAXMPと考えていいだろう。
他のステータスは言葉の通りだな。
魔法攻撃力を測った時に使ったと思われる「ファイヤーボルケーノ」ってどんな魔法だ?
言葉からして火系統の魔法っぽいけど。
後、備考に魔法初級科卒業資格所持とか書いてあるけど、この世界にも学校とか資格とかあったりするのね。
こっちの世界でもやっぱり学歴と資格は大事なのか。
「私のステータスを見た感想は?」
「C級冒険者って凄いね。
まだまだ俺なんか弱いって事を、あらためて実感したよ」
しまった。
サラの顔はポーカーフェイスで一見何も変化が無いように見える。
しかし、俺を見つめてくる目の奥の輝きが変わって、サラの魔力の流れが一瞬揺れ動いた気がする。
ダメだ、やっぱり「ぼっち」で人と話をした事があまり無い俺にとって、対人関係の駆け引きはド素人もド素人。
話せば話すほどボロを出してしまう。
自分で言ってから気付いたけど、昨日転生してきた俺が何でC級冒険者のステータスを見て凄いって判断できるのよって話だよね。
なんか凄そうな数字をみて凄いねって言うほど馬鹿とは思われて無いだろうしな。
携帯端末で自分のステータスを確認できる機能があるだろう事もこれで推察されたか。
「で、剣の才能より魔法の才能の方が門戸が狭いって話の流れから、サラの冒険者カードを見せてくれたわけだけど、これには一体どういう意図があるのかな?」
「見たら分かるように、私は魔法学校における初級科の卒業資格を所持している。
優れた魔法の才能を持つものはとても貴重なので、この国ギルザバードも国として積極的に教育と育成を施す政策を実行している。
ある程度の魔法の才能を持つものなら、魔法学校の初級科なら授業料は免除されるし、更に才能があるものなら生活費も援助して貰える。
私も特待生として授業料免除で生活費も国から支給して貰い、初級科卒業資格を取得した。
飛び級で必要科目を履修したが、それでも在学時間は一年を越えた。
つまり、優れた魔法使いの卵達の中で切磋琢磨し、優秀な魔法の師を得て、魔法の基礎を整えるのに私でさえこれだけの期間が必要だったのだ。
魔法は一朝一夕で身に付くものではない、知識もそうだが、魔力操作、総内包魔法力と顕在魔力を高める修行、魔法を行使するに当たっての魔法を構築する為の基礎修行も必要だ。
また魔法が使えるようになったからといって、それで終わりというわけでもない。
魔導具の知識に魔導文字、象形魔法図に、それの発展である魔方陣図、初級を卒業する為だけでも最低限これらの知識が必要だ。
中級からは更にこれらの発展応用が求められるし、必要な魔導具や魔法書などかかるお金もうなぎ上りだ。
セイヤ、なんで私が冒険者なんてやってると思う?
私の夢は、大陸の中央に位置するルーブルより更に西、この大陸で一番魔法の研究が進んでいるという魔法使いの聖地、魔導都市アステアに行って研究者になることなんだ」
そうか、サラにもちゃんとした目標や夢があったのか。
この世界の魔法って、俺が思ってたよりもかなり進んでるみたいだな。
転生者とか異世界の人からもたらされる知識とかもあるだろうし、神に与えられたような人知を超えた力を持つマスタークラスとかいうのもあるし、それが研究分野とかでも力を発揮したら自然とそうなるか。
一部だけの特別な力を教育と育成で幅広く一般層に浸透させて、人材というものの国力の地力を上げ続けてきた結果なんだろうな。
「そうか、本格的に魔法を研究しようと思ったら、いくらお金があっても足りないもんね。
俺も本格的に魔法を学ぼうとするなら、魔法学校に通わないといけないという事が良く分かったよ」
そうだな、軽くサラに教えてもらったからといって簡単に魔法を使えるようになるというわけではなさそうだ。
魔法カードでいきなり魔法が使えるようになったからって、図に乗りすぎていたのかもしれない。
魔法カードはこの世界でいう魔導具に相当するようなものだろう。
冒険者カードのステータス表示が魔力で行われるものなら、レインとか魔法の使えない冒険者でも魔導具の魔法は発動可能なのだろう。
どっちにしろお金か。
学ぶにしろ、家を買うにしろ、魔導具や装備を整えるにしろ、奴隷を買ってハーレムを作るにしろ、全てお金が必要なんだ。
「でもさ、その魔法の才能を持つものって、国はどうやって判断してるの?
魔法学校で学ぶまでは魔法を行使出来る人っていないんだよね?」
「貴族や裕福な家庭なら、幼い時から個別の家庭教師を雇って英才教育を施したりする。
その場合は魔法学校に行く前から魔法を使える子供は存在する。
ただし、魔法を使えるようになるだけなら、そこそこの魔法の才能があれば可能。
国が特別視してまで優遇するような子供は、もっと特別な才能を持っている。
それを測る手段は色々とある」
何やら視線を感じたので、後ろを振り返ってみると、レインさんがドアの向こうからこちらの様子を伺っている。
ああ、準備が終わったけど、俺とサラが話し込んでるから邪魔したらまずいと気を使ってくれたのか。
俺が気付いた事にレインが気付いたのか、レインがドアから出てきてこっちに向かってきた。
「話は聞かせて貰ったわ!
セイヤに魔法の才能があるかどうか私も気になってたの。
ということで、チャンスがあれば試そうと思ってたコレを持ってきてあげたわよ」
レインは何か変な紙みたいなもの束を机の上に置いた。
「これは?」
「これは、魔法潜在能力推定紙。
アステアで量産化に成功して以降、ギルザバードでも魔力の才能を測るためのものとして、国でも公式採用されているものだ。
説明より、実際にやって見せた方が早いか」
サラはレインが机に置いた、魔法潜在能力推定紙の束から一枚を取って、それに手をかざして魔力を注ぎ込み始めた。
すると紙に文字が浮かび上がってきた。




