始まり
気がついた時には、目の前に見知らぬ光景が広がっていた。
目が、耳が、肌が、鼻が、自分の感覚器官を揺さぶる要素全てが、これを現実のものと教えてくれる。
ここはどこだ?
どこかの建物の中だろうか、例えるなら西洋風の教会や祭壇か。
煌びやかなようで、どこか鎮魂を思わせる重厚な装飾が、教会や祭壇のイメージを沸き起こさせる。
薄暗い部屋の中、少し高い天井の下にある小さな天窓のようなところから光が射し込み部屋の中を薄明るく照らす。
俺は祭壇のような部屋から出て、この建物を詳しく調べた。
埃などがあまり積もってない事から察するに、ここには人の出入りがあるようだ。
祭壇のような部屋以外にも、人の出入りを伺わせるようなものがいくつか見つかった。
机や簡易のベットが置かれている小部屋や、掃除道具を思わせるもの、何かの儀式に使うような小物から、展示用の備品みたいなものが置かれている棚、食器などの生活用品みたいなものが置かれている部屋もあった。
この建物から出てみる。
外から見るとそれほど大きな建物には見えない。
規模からしても、それほど大人数が使用するというものでもなさそうだ。
この建物の横には墓地らしきもの、花壇など人の手によって整備されている施設がいくつか見受けられる。
周辺は木。小高い山を切り開いて作った墓地と小さな教会と言った所か。
俺が降り立った建物ということで、とりあえずこの建物を祠と呼称する事に決めた。
俺は祠の周辺を軽く見渡すと、祠の小部屋の中に戻った。
ここには机と椅子と簡易ベットがあり、小さな休憩室みたいな感じになっている。
椅子に座って、自分の持ち物を見てみる。
ポケットに入っているのは、小型の情報携帯型端末。
日本で俺が所持していたものではない。
財布やハンカチなど、他の所有物は無く、持っていたのはこの小型の情報携帯型端末だけだ。
この小型の情報携帯型端末を、木の机の上に置き、じっくりと調べてみる。
スマホやガラゲーというより、小型のノートパソコンと言った感じだろうか。
折りたたみ式で、開くと画面とキーボードが分離している二面構造になっている。
側面には電子機器と違いソケットは付いてないが、カードをはめ込むような窪みはあった。
小型の情報端末を開き、スイッチらしきものを押して起動する。
この中にあった情報量はかなりのものだった。
まずはステータス。
自分のステータスを見れるモードがあったので、選択してみた。
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ステータスモード
名前 未設定
HP 32/32
MP 28/28
魔力 8
所持スキル
異世界語理解Lv50
異世界型小型情報端末具現化Lv1
体術Lv1
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表示ステータス少なっ、所持スキル少なっ。
あれ、レベルは?
攻撃力や防御力は?
筋力や精神力や知力はステータスで表示されないの?
これは端末具現化Lv1のせいなのか、そういう概念が無いのか、今は判断出来ないな……。
ステータスモード以外のモードもいくつかあった。
異次元型物質収納モード。いわゆるアイテムボックス。
嬉しいことに、剣や槍などの鉄製の武器と防具や、布の服、布切れ、毛布、寝袋、簡易食料やこの世界の貨幣など、生活必需品っぽいものが一応収納されてはいた。
アイテムボックスに戻すときは、カメラモードみたいなのでそれを指定して選択する感じだった。
試してないけど、対象は無機物だけだと思う。
生き物に対して異次元収納できたらチートすぎるにも程があるしな。
後で一応試してはみるけど。
そして、さっき見つけたこの項目。
きっと、この端末の目玉なのだろう。
魔法カードモードですよ。
トレーディングカード好きな俺にはぴったりのこの能力。
早速試してみよう。
っと、その魔法カードモードを試す前に、言っておかなければいけない事があるんだ。
実はね、さっきのアイテムボックスの中に気になるものを見かけたのよ。
それがこちら、初心者用、四属性初級攻撃魔法カードセット。
さっきアイテムボックスから具現化しておきました。
四角い紙っぽい箱で出来たものの中に、入っていましたよ、魔法カード。
銅みたいな色のカードが4枚入ってるのかと思いきや、五枚。
銅っぽい色だからブロンズカードと名付けよう。
どうせあるんでしょ?初級とか書いてあるんだから、中級とか上級者向けのシルバーカードとかゴールドカードとかいうのがさ。
火、水、風、土、の四枚のブロンズカードに、よくわからないカードが一枚。
紙でもない、石や金属みたいな薄い板の先に少し窪みがあった。
四属性のブロンズカードの窪みの作りは同じだけど、もう一枚は違う。
もしかして……。
やっぱりそうだ。
四属性のブロンズカードの窪みに丁度合っている窪み。
この窪み同士を組み合わせるとカードが一体化できる。
もしかしたら、魔力の補充みたいな役割のカードなのかもしれない。
よし、魔法カードも調べ終わったし、本日の目玉といきましょうか。
魔法カードモード。
どうやら魔法カードをセットして、対象を選んで魔法を発動出来るモードのようだ。
違う、これじゃない。
カードをセットして使うなら、もっと必要なものがあるじゃないか。
異次元魔法カード購入モード。
あった、これだ。
ふむふむ、ほうほう、なるほど。
色々と試してみた結果、色々と分かったぞ。
どうやら、モンスターを倒したり、この世界のお金や貴金属で魔法カードを買うというわけでは無いらしい。
自分のMPを魔法カードを買うためのポイントに変えて購入するみたいだ。
血を売ることを売血って言うらしいから、魔力を売ってカードを買うためのポイントに変えるから売魔って呼称するのがいいのかな。
とりあえず、MPをポイントに変換してみる。
あ、この世界だとMP0になったら気絶するんだろうか?
自分の全MPを使用したら、最大MPが上がるチートとかないかな?
逆に最大MPが下がるまである。
しかし、ここは安全が保障されてる場所ってわけでもないので、MP0はやめておくか。
魔力をポイントに変換させるモードにして、自分の魔力を送り込む。
全身を魔力が駆け巡っているイメージ。
毛穴や肌から魔力が溢れ出すイメージ。
瞑想、精神を統一する。
おおっ、光った。
身体をめぐるエネルギーみたいなものが、機械に流れ込んでいくのが分かる。
とりあえずこのくらいでいいか。
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変換MP 9
変換DP 90
所持DP 90
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MP9をDP90に変換できたみたいだ。
レートは10倍か。
高いのか低いのか良く分からない。
しかし、すぐに分かるだろう。
魔法パックの値段を見ればすぐに分かる。
ありました。
一番安いパックは500DP。
となると、かなりのお得率じゃないのこれ。
けど、500DPのパックは使い捨てタイプっぽいんだよなー。
だって、10000DPのパックとかあるし。
初期特典として貰った、四属性初級攻撃魔法カードセットが50000DPもするんだもの。
よし、まずはMPの自然回復割合を調べつつ、500DPの魔法パックを買ってみるとしますか。