サラの冒険者カード
「セイヤがアイテムボックス持ちで助かるわ。
あ、私の荷物もお願い出来るかな?
自分で持っていかないでいいなら、予備の武器も持って行きたいし」
そう言うと、レインはリビングを出て行って、自分の部屋らしい小部屋の前まで行き中に入っていった。
「その魔導具、保有してる能力はアイテムボックスだけじゃないな?」
サラが俺の持っている小型端末を一瞥したかと思うと、俺の目をじっと見つめてくる。
またか。
この目に見つめられてると、俺の心の奥底まで覗かれているような変な気分になってくるな。
サラと目と目が合う。
やっぱりサラは可愛い。
黙っていたらもっと可愛い。
喋りと口の利き方が可愛らしさを台無しにしている気がする。
「お前のマスタークラスの才能は、その魔導具に関連するものとみた。
大切にしろ。
朝のレインとのやりあいを見るに、お前の身体能力はそれほど高くはなさそうだ。
亡くしたり、奪われたり、盗まれたり、壊されたり、その魔導具に相手の注意を向けさせないように極力気をつけろ。
勘違いするな、その魔導具の中には私の荷物も入っている。
何かあれば私も困る」
あ、ちょっとツンデレ頂きました。
殆ど無表情で読めないけど、完全に感情が廃されてるというわけでは無さそうなんだよなぁ。
こんな幼い女の子がこんな風になるまでにどんな経緯があったんだろうか。
レインが、ノエルはサラのように強くは生きれないとかみたいな事を言ってた気がするけど、それってつまりサラは強く生きてるって話なんだよね。
辛い事や苦しいことを乗り越えて強くなってきたのかもしれない、この表情を読みにくい無表情のポーカーフェイスはその強く生きる中で培われたものなのだろうか。
だとするならこの世界は厳しく、悲しい世界なのかもしれないな。
戦争があり、ノエルとギルバードさんの大事な人も死に、今生きてる人達も生きる為に、強くなる為に必死で生きている。
「そういえば、サラの格好から察するに、サラって魔法が使える感じなのかな?
良かったらこの世界の魔法について教えてくれると嬉しかったりするんだけど。
俺ってさ、さっきのレインとの打ち合いを見たら分かると思うけど、剣の才能は人並み以上に努力して人並みになるぐらいらしいからさ、魔法関係の才能があればそっちを優先的に伸ばして行きたいかなって思ってたりするんだよね」
サラは一瞬だけ考えるようなしぐさをした後、着ている魔法使い風のローブのスカートに当たるような部分から、カードのような紙切れを出して机の上に置いた。
「確かにお前には剣より魔法の才能の方があるかもしれない。
しかし、あるかもしれない、というだけで、魔法が使えるかどうかは別の話。
というのも、魔法というのは、剣の才能以上に努力では如何ともし難い天賦の才能が必要だから。
才能が無いものはいくら努力しても出来ない、剣の世界などより遥かに門戸が狭く、厳しいのがこの魔法の世界」
サラは俺にこっちにもっと寄って来いとアピールしている。
えっ、そっちに寄っていって大丈夫なんですか?
俺、昨日お風呂入ってないんだけど、匂いは大丈夫かな。
近付いて「臭い」とか言われたりしないか心配なんだけど。
あー、水浴びまでとは言わなくとも濡れた布で身体くらい拭いておいたほうが良かったかもしれないな。
ルーの店の出入り前後と剣を研ぐ前とかに時間の余裕なら少しあったわけだし。
「何をしている、もっとこっちまで寄ってきてこれを見ろ。
これが冒険者ギルドに登録すると貰える、私の冒険者カード」
仕方ないので、覚悟を決めてサラに近付く。
机の上に置いてあるカードみたいなやつが、冒険者カードなのか。
冒険者ランクと名前が書いてあって、その下にはかなりの空白がある。
「この冒険者カードは特殊な素材で出来ている。
本人の魔力に反応して一定時間だけ文字が浮き上がるように出来ている。
冒険者ギルドで計測した最新のステータスがここに表示される。
この文字が浮き上がるかどうかで、この冒険者カードが本人のものかも確認できるというわけだ」
サラが冒険者カードに魔力を込めると、ランクと名前の下に文字が浮き上がった。
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C級冒険者証明証
名前 サラ
総生命力 381
総内包魔法力 1081
顕在魔力 523
素手力 23
武器攻撃力 81 (使用武器:モーニングスター)
魔法攻撃力 1538 (使用魔法:ファイヤーボルケーノ)
備考
魔法初級科卒業資格所持
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うお、C級冒険者ってのは、やっぱりとんでもないな。
ステータスの数値の基準が俺の端末のと同じなのかは分からないが、魔導具での計測となると基準が同じの様な気がしないでもないな。
そこらへんは俺が冒険者登録して登録カードに表示された数字と端末の数字を見比べれば分かるけど。
冒険者証明症って書いてあるけど、呼び方は冒険者カードなのか。
サラの冒険者カードを見ながら、色々と考察する俺であった。




