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キシンの村①

 レインの予想外の一言に、流石に動揺を隠せなかった。

 

 いきなり話しかけられるとは思っていなかったし、まさかこのタイミングでこんな事を言われるなんて完全に予想外だった。

 人は予想外の出来事に弱い。


 動揺する俺をサラの鋭い視線が貫いた。

 ような気がした。

 サラの方を見ると、フードを深く被って下を向いているように見えた。

 気のせいだったか。


 降りる準備を準備をしていたブゼンも、ずっと黙っていたレインが喋ったのが気になったのだろうか、レインの話した言葉が聞こえたのかどうかまでは分からないが、レインが俺の近くまで近寄って俺の耳元で何か話す仕草までは確認していたのだろう、チラっとこっちを見た後に目を逸らすようにして馬車の中の荷物の方へ目を移したのが見えた。


 予想外の一言に動揺を隠せなかったけど、すぐに気持ちを切り替えて冷静さを取り戻した。

 そして、レインの言葉に答えようとすると、レインはフッと笑って俺から遠ざかると、馬車の後ろの入り口から飛び降りて馬車の外に出て行ってしまった。


 追いかけるようにして俺も馬車を出る。

 そして、すぐにブゼンとサラも馬車から出てきて、マゼンもこっちに来て五人となる。

 

 ジザールは馬車の運転席に当たる部分に座ったままだ。


 みんなが集まった手前、レインにさっきの言葉の続きをするのは後回しだな。

 そう思いながら、気持ちを切り替えようとするも、さっきレインの言葉とレインの表情が頭の中から離れない。


「さて、無事キシンの村に着いたわけだが、この後どうする?」


 まず一番最初に口を開いたのはブゼンだった。


「予定通りキシンの村で、消息不明になった者についての安否確認、情報収集。

 少なくとも、この村まで辿り着いていたのかどうかの確認はしなければ。

 その後は村の長に話を聞き、予定通りこの村で一泊した後、明日の早朝に村を出る。

 予定だとそんな感じになりますが、この村の雰囲気、少し良くない感じがしますね」


 マゼンの向いた方向にキシンの村が見える。

 そこには普通の村ではありえないような光景が広がっていた。


 宗教的な儀式に使うようなものなのだろうか、おどろおどろしい構造のものや、意味の分からない文字や絵といったもの、正気を疑うような構造物が多数設置されている。


 こんな所に行かなければいけないとか、この村の人と話したり滞在しないといけないとか、嫌な予感しかしない。


 馬車を村の中の広いスペースへ移動させ、何かあった時はすぐに逃げれるように、村の中へ行くのは身体能力の高い者が行くこととなった。


 ブゼン、俺、レインの三人が村の中へ行って聞き込み。

 ジザール、マゼン、サラの三人が馬車で待機。  


 村の中を進んで行く、俺達三人。

 しかし、全然人の気配がしないな。

 見張りもいなかったし、もしかしたら盗賊とかに襲われて皆殺しにされてたりとかしないだろうな。

 もしくは家の中で捕まってて、盗賊とかと一緒に俺達の様子を伺ってるとか。


 異常な光景で異常な状態の村を見渡していると、悪い想像ばかりしてしまう。


 レインにさっきの話の続きというか、誤解を解いておきたいというか。

 まぁ、本当の事だったから誤解じゃないけど、言い訳ぐらいはしておきたいんだけど、状況が状況だし、ブゼンもいるので、さっきの話の続きがしにくい。


 周囲の魔力を探るも、大きい魔力は感じない。

 一般人程度の魔力だと、空気中に漂う魔素の方が強いぐらいなので、魔力探知で通常の人間の位置は探れないけど、人の気配がするのは分かる。


 警戒しながら歩いていると、人の気配がする方向から人が現れた。

 顔に模様のようなものをペイントしているのだろうか、いかにも宗教的な衣装と化粧をしていますといった若い女性。


 警戒している俺達をよそにスッとこちらに近付いてくる。


「よう、村の人間か?俺達は村の外から来たもんだ。

 勝手に村の奥まで立ち入ってすまない、なんせ入り口からここまで村の人間が見当たらなかったものでな」


 ブゼンが村の女性に話しかけた。

 若い女性は、ブゼンがまるでいないかのように悠然と歩いている。

 ブゼンの方に顔を向けることもせず、話を聞いているような素振も見せず、真っ直ぐこっちに歩いてきている。


 彼女の目線の先。

 そこにいるのは俺。

 彼女のほうを見ると目が合った。


 ブゼンを素通りして、俺の前まで歩いて来た村の女性が、口を開く。


「お待ちしておりました。

 神に遣われし魔界の勇者よ」 

  

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