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馬車の中で⑧

 どのくらい馬車に揺られただろうか、体感では一時間か二時間ほどは経っただろうか。

 業者の人の前で携帯端末を取り出して時間を見るわけにもいかず、俺はただ黙って俯いていただけだったから詳しい時間までは分からない。

 

 今は技術も進歩して、昔の馬車よりは大分揺れが小さくなったらしいけど、それでもかなり揺れる。

 馬車や人の足で踏み固められているとはいえ、整備されていない土の道を走っているので、たまに小さな障害物の上を通って、馬車が跳ねたり乗り上げたりして、上下にガクンガクンと揺れたりもする。


 俺は小さな時から、あまり乗り物酔いになったことが無いくらい酔いにくい体質なので、かなりの振動があるこの馬車に乗っていても別に酔いはしなかった。

 ただ、振動が強すぎるので、お尻にはよろしくないと思う。

 強化されていないこの世界の身体じゃなかったら痔になってもおかしく無いほどの揺れなんだけど、この世界の人達にとってはどうなんだろうな。

 サラやレインみたく、地球人からみたら人外と呼べるほどの身体能力があるんだから、この程度じゃビクともしない身体を、みんなが持ってるのかもしれない。


 さて、話を本題に戻そう。

 今乗っている馬車は近くで最大の都市と言っても過言ではない軍事都市ラトンに向かって行っているわけではあるんだけど、そのラトンに向かう途中にいくつかの村や町に立ち寄る予定だ。


 もちろん、補給や休息を兼ねて最寄の村や町に立ち寄るという意味もあるんだけど、いくつかの依頼というか任務というか、俺にとってはそれの付き添いで巻き込まれる形というか。

 そんな感じで、俺もこの馬車に乗っている関係上、危険を伴うかもしれない任務に自然と参加させられる事になっている。


 ちなみにどんな任務かというと、基本的には安否確認業務という事らしい。


 セイの村から軍事都市ラトンまで、ギルザバード国の国境に近い村や町という事で、政府の支配力というか治安維持能力というか、管轄能力というか、そういうものの力が弱いというか薄まっている地域である事から、盗賊や夜盗といった犯罪集団の被害を受けやすい地域でもある。

 また、国境に近いということから、隣国や敵国からの工作員や戦闘員が送り込まれやすい地域でもあり、盗賊や夜盗などの犯罪集団に見せかけた破壊工作なども行われやすい地域でもある。


 そして、国境に近い村や町は隣国による懐柔工作も活発に行われる地帯であり、一番戦火に巻き込まれやすいといった観点から、ギルザバード国では基本的に国境近くの小さな村に対しては非課税(つまり無税)となっており、そう言った点において村に行き来する人や役人も自然と少なくなる事から、犯罪集団や武装組織、他国の破壊工作員に対抗できるだけの武力を持った人間を定期的に送り、現状の確認や村人の安否確認を行う必要があり、今回軍関係のコネクションもあり、Cランクの実力を持つサラとレインが軍事都市ラトンまで移動する事から、今回の依頼でありミッションが課せられているというわけだ。


 ちなみに任務というのは、この馬車に乗り合わせている政府関係者、多分軍関係者の人だと思うんだけど(詳しい事は機密だから部外者の俺には教えてもらえない)の人が仕事として請け負っているもので、サラとレインは依頼という形で、その人の任務を補佐する役割があるらしい。

 

 俺はそんな人達に巻き込まれる形になってるわけだから、危険を伴うかもしれない任務に強制参加させられているといった感じだ。


 今回、意図的に遠回りして立ち寄るような場所は、定期的に通っている人間が戻ってこなくなったり等々で連絡が取れなくなったような場所でもあり、危険度はある程度高かったりするらしい。

 実際、今までに危険な場面に遭遇した事は何度もあるらしい。


 村に行く途中の道に賊が張っていて待ち伏せを受けたり、実際に小さな村が襲われて皆殺しにされていた、とかいった事例もあったとか。


 村の人間が皆殺しにされている情景を想像して、俺は息を呑んだ。

 そういう事例が実際にある世界であり、俺はそういう可能性のある危険な世界へ足を踏み入れている。


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