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馬車の中で④

 水属性の回復魔法である、アクアヒールとアクアキュアを習得した俺が次に習得を目指したのは、魔法力奪取(マジックドレイン)だった。


 この世界では、魔法力(MP)を即座に回復させる事が出来るアイテムは(少なくとも一般に流通している範囲では)存在しない。

 つまり、飲むだけで一瞬で魔法力(MP)が回復するような、マジックポーションのようなアイテムが無いという意味だ。

 よって、魔法力(MP)を回復する手段は基本的に自然回復頼みであり、継戦可能な魔法を使用出来る時間は、基本的に魔法の燃費と使用者の総内包魔法力(MAXMP)によって決まる。


 だから、戦闘を行う前に魔法力を溜めておける魔法カードという存在で、魔法戦闘における継戦能力の高さを飛躍的に増すことが出来る。

 

 予め魔法力を魔法カードに込めて置くことで、戦闘時の最大MPを増やす効果に近いメリットを受けられるわけだ。

 魔法カードに俺じゃない他人(今は主にサラだけ)の魔法力を込めて貰う事で、俺の魔法力を温存することが出来るんだけど、俺の魔法カードを具現化する能力は俺自身の魔法力を使わなければいけないので、なんとかして俺の魔法力を回復する手段が無いか、または魔法力の回復速度を速める手段が無いか模索していた所で知ったのが、この魔法力奪取(マジックドレイン)という魔法だった。

 


魔法力奪取(マジックドレイン)


 その名の通り、相手から魔法力(MP)を奪取する魔法である。

 魔力の属性変化を必要としない無系統に属する魔法で、相手から奪える魔法力の量は、相手と自分の魔力や魔法技量の差と、相手との距離によって決まる。


 基本的に、魔法が得意な相手には効きにくいものであり、距離が遠ければ遠いほど効果が薄れるものであるから、少人数戦では用途が少ない魔法だと言われているらしい。

 主な使われ方は、大勢の魔法使いが一人の人間に集中して使用して魔法力を奪うという、集団対個人の戦いで真の効果を発揮する魔法の一種だとのこと。


 この魔法を知った時、それこそ強い強者と呼ばれる存在が、味方の人から魔法力奪取(マジックドレイン)で魔法力を奪えば、それこそ魔法カードなんて無くても魔法戦闘の継戦能力なんていくらでも伸びるんじゃって思ったんだけど、そんなに都合のいい魔法でも無いらしい。


 まず第一に、ロスが大きい。

 自分の魔法技量が低ければ低いほど、相手の魔法力を減らす量は減り、奪える魔法力も減る。

 相手の魔法技量や魔法耐性が高ければ高いほど、減らせる魔法力と奪える魔法力が減る

 相手と自分の魔力の波長が合わなければ、さらに減る。

 相手と自分との距離が開いていれば開いているほど、更に減る。


 そして、相手の減らした魔法力を、そのまま100%自分のものに出来るというわけでは勿論無く、そこから更にロスが生じる。


 逆に言えば、効率を良くする為には、自分と魔力の波長が合う人と零距離で密接して、魔法力を奪われる側の魔法耐性を極力下げた状態で使用すれば、魔法力を高効率で奪えるという事になる。


 だから、魔法力奪取(マジックドレイン)の練習の為に、サラと密着して零距離で練習する事になった。

 肌と肌が直接触れ合うような、お互いの息が触れ合い、感じあえるほど密着した零距離で。


 といっても、お互いの手と手を繋いで、お互いの手と手の肌が触れ合うだけの距離って意味だけど。


 色んな意味で厳しい試練を乗り越えて、やっとの事で魔法力奪取(マジックドレイン)の魔法を取得する事には成功したんだけど、確かにこの魔法で奪える魔法力は、かなりのロスが生じているみたいだった。

 そして、この魔法は色んな意味で精神を削る魔法だった。

 ずっと戦闘した後に、この魔法で魔法力を補ってまた戦闘に行けって言われたら、無理!って言いたくなるだろうなって思うぐらい精神的に疲れる魔法だった。


 例えるなら、他人のものが自分の中に流れ込んできて、それを自分色に染め上げて自分のものにするというのを繊細な操作で緻密に成し遂げるといった感じだ。

 相手の魔法力を減らすだけなら、そこまで負担じゃないんだけど、他人のものを自分のものにするという所が一番難しいところで、かなりの精神的なストレスになる緻密な魔法だった。


 しかし、苦労した分だけ、精神的に疲弊した分だけのメリットはあった。

 魔法力奪取(マジックドレイン)で奪ったサラの魔法力を、自分の魔法力にした結果、その分の魔法力でも魔法カードに変換する事が可能だったのだ。


 これで他人の魔法力を自分のものに変えて、そこから更に魔法カードに変えるという手段を手に入れることが出来た。


 そして、その事で更に村の外に出て、他の町に行ったり、他の人間と会ったりしたいという欲求が膨れ上がる事にも繋がっていったのである。


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