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サラ先生の魔法講座⑭

「ウィンド!」


 サラに言われた通り、ウィンドのブロンズカードを持って魔法発動の練習をしているレイン。

 しかし、何回やっても魔法が発動する気配は無かった。


「ねぇ、サラ。

 この魔法カードに魔法力ってまだ残ってるの?

 魔法の発動プロセスが簡略化されるって話だけど、全然魔法を使える気配が無いわよ?」


 確かに、レインが魔法を使えそうな感じが全くしない。

 それもそのはず、魔法を発動させる為に必要な魔力を放出しているようには見えないからだ。

 魔法の為の魔力ではなく、闘気を纏うための魔力を放出しちゃってるからな。


 きっと、息を吸うかの如く闘気を使えるように訓練してるのだろう。

 発動に淀みが無い。

 けど、今はそれが逆に枷になってしまっている。


「込めた魔法力から察するに、まだまだ魔法を行使できるだけの魔法力は残っているはずだ。

 気になるなら、セイヤか私が魔法を発動させてみてもいい」


「ああ、それなら、セイヤにお願いしようかしら。

 サラの込めた魔法力でも魔法が発動するのか確かめてみないといけないじゃない?

 セイヤで発動しなかったら、私のせいじゃないって証明にもなるもの」


 確かにレインの言うとおりだ。

 サラが込めた魔法力で他人でも魔法が使えるか、まだ検証していないしな。

 けど、ウォーターの魔法カードであれだけイメージ練習してやっと発動できたぐらいだからなぁ。

 ウィンドの魔法を発動させることは出来るかもしれないけど、ウォーターの魔法を初めて使えるようになった時と同じぐらいの練習時間が必要かもしれないな。


「わかった、なら俺がやってみる。

 レイン、ちょっとその魔法カードを貸して。

 ちなみに、俺がウォーターの魔法カードで、ウォーターの魔法を始めて使った時は、結構イメージ練習に時間を費やしたから、今回もそれと同じぐらい時間がかかるかもしれないよ」


 レインからウィンドのブロンズカードを受け取る。

 そして、遠く離れた木の的に意識を集中した。

 

 ウィンドはどんな魔法か、さっきサラに見せて貰ったからな。

 魔力の流れは、この世界の魔法を発動させるのとは異なるものだった。

 俺がこの世界に来て、誰にも教わることなく発動出来た代物だからな。

 この魔法カードには間違いなく、魔法発動や魔法を行使する為のアシストになるものが組み込まれている。

 推測だけど、魔法発動のプロセスは全部この魔法カードがやってくれる。

 対象の指定もイメージだけで、魔法カードが読み取って指定してくれるのでは無いだろうか。

 

 目を瞑り、さっきサラが発動したウィンドの光景を思い浮かべる。

 あの渦巻く風、切り裂く風の渦をイメージする。

 対象は遠く離れた木の的。

 思い描いた軌道を進み、風が的を切り裂くイメージ。

 これを行うためのイメージを魔力に込めて魔法カードに伝えるイメージ。

 よし、やってみよう。


「ウィンド!」


 俺が込めた魔力に魔法カードが反応した。

 近くに魔力の塊が放出され、空気を切り裂く風の渦に変容を遂げる。

 土を巻き上げ、土埃を立てながら舞う風の渦。

 俺が思い描いた軌道を進み、対象の木の的まで到達すると、木の的を空気の渦でズタズタに切り裂いた。


「やっぱりイメージかな。

 今起きた魔法による現象を事細かに再現するようにイメージする。

 そして、そのイメージを魔力で魔法カードに伝える感じかな。

 魔法発動のプロセスは魔法カードがやってくれてる感じで、対象指定もイメージから魔法カードのプロセスが自動でやってくれるみたい」


 一発でウィンドの魔法を発動出来た事に気分を良くしながら、レインへのアドバイスの意味も込めて、俺が自分で発動させて思った事を素直に言葉にして説明する。


「セイヤの言うとおりだ。

 魔法発動の為の魔法力も、先ほど私が込めた魔法力を使用している。

 そして、魔法を使うに当たって一番難易度が高いとされている、魔法を発動する過程のプロセス。

 そのプロセスまでこの魔法カードが自動でこなしてくれる。

 これなら対して魔法の才能が無いものでも、少し訓練すればすぐに魔法カードで魔法が行使出来るようになるはずだ」


 さっきサラが考えていたのと、俺が感じた事は同じ感じだったか。

 魔法のプロセスを魔法カードがやってくれるのは楽だし、魔法を使える人の敷居が下がるだろうけど、それでも、この世界をひっくり返すほどのインパクトがあるものとは思えないけどな。


 なんか、宗教的なものの教えに反するような原理でもあったのだろうか?

 魔法発動のプロセスは道具には出来ないみたいな。

 この世界の宗教とか、俺の知らない事は一杯あるだろうし、その俺の知らない知識と関わる感じで、この魔法カードにはこの世界にとって何か不味いものでもあるのかもしれない。


 ただでさえ、高価で売れそうな魔法カードに、他の問題ごとまであるなら、魔法カードを生み出せる俺が狙われる可能性が益々上がるな。

 

 『この世界をひっくり返す』


 サラの言ったこの言葉が、頭の奥底でリフレインして離れない。

 

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