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短編集

Dimension Patroler -チート・転生者の裏事情-

作者: 川尼望衣

突発ネタ第二弾

 




「てめぇ! 何いい歳扱いてはしゃいでるんだよっ!

 世間様のことはちったぁ考えやがれ!」

「ふんっ! ワシが悪いんじゃないわい。

 悪いのは世の中なんじゃ。世直しじゃ」


 突然だが俺は1人の爺を尋問している。

 この爺は犯罪者だ。

 世を乱すテロリストだ。


 この爺の罪状は明らかだ。

 何せ痕跡がある。

 だが「無罪だ、俺はやっていない冤罪だ!」 という風な関与を認めていない……ということではない。

 寧ろそれ自体を誇ってすらいる始末。


 この爺がやったことは、

 『次元誘拐』と『世界改変』。


 この世界とは別次元の世界に干渉し、本来の成り行きから外れさせた。

 このような犯罪者が最近増えてきている。




 次元に関与することができない、未熟な世界を中心に荒らし回っている。

 『自称:神』と名乗るテロスト集団。

 いや正確にいうならばテロリストどもだ。

 誰かの意思に従ってやっているということではなく、

 それぞれが単独犯なのが問題なのだ。


 頭を潰せばなくなったり、抑制できるということではない。

 それぞれが好き勝手に、違う方法で犯行を行うのだから、

 全てを未然に防ぐことなどできやしない。



 今回この爺を逮捕した時は既に犯行後だった。

 以前よりマークしていたにも関わらず、だ。


 この爺は今回は、1人の青少年の肉体を破壊し、

 魂を作り替え異世界――その青少年が居た世界とは別次元の世界へと送り込んだ。

 それはまるでコンピュータウィルスのごとく、世界を侵食して有り様を壊していく。


 だが送られる者が良識のある存在なら、

 世界による修正力でなんとかなるのだが……、

 テロリストに選ばれる者は総じて精神的に未熟な者達が多い。

 いや、敢えてそういう人物を選んでいるきらいがある。


 そして更に洗脳をしている形跡もある。

 なにせ――――




「すまなかった! ワシのミスでおぬしを死なせてしまった」

「な、なにいってんだじじぃ!」

「そ、そうじゃ……お詫びにワシが造った、他の世界に転生してやろうではないか」

「生き返らせることが筋じゃ無いのか!?」

「無理なんじゃよ、ワシはこの世界の神ではない。

 だが、ワシの世界ならばそれができる」

「それじゃ意味ないんだよ! 俺がいったい今までどのくらい努力をしてきたと思っている。」

「ならばサービスをつけてやるのでどうじゃ?」

「サービス?」

「そうじゃ、いわゆるチートというやつじゃ」

「チート?」

「そうじゃ、チートじゃ。たとえば、

 どんな女性でも簡単に惚れさせる事ができる魔眼とか、

 どんな物でも作り出せる能力とか、

 無限に沸きあがり尽きることの無い魔力とかじゃ」

「魔力? いわゆる剣と魔法の世界というやつか?」

「そうじゃ多少殺伐しておるが……

 お主には世界神たるワシの加護も与えれば、無敵じゃ」




 ――――などと言っていたことが、現地派遣員によって報告されている。

 なおその派遣員には逮捕権――テロリストを捕まえる能力――が無いため、泣く泣く犯行を止めることが出来なかったと報告している。


 このタイプはウィルスが少ないため、送られた者を確保もしくは排除すればいずれ修正される。

 だが問題は集団転移を起こすテロリストだ。


 奴等の手口は憎たらしいことに、狡猾ともいえる。

 俺等のような逮捕権を持つ捜査官が少ないために、数うちゃ当たると思っていやがる。

 そして世界に対する影響力も尋常では無い。

 色々な場所から浸食していくために、修正力が追いつかないのだ。

 そしていずれは文明が破壊され、テロリストにとって都合のいい世界に変えられてしまう。


 おっと話してなかったな。

 こいつらテロリストの最終目的は、世界そのものを己の力とし、

 寿命を延ばすことにある。


 この爺も恐らく、そろそろ寿命が尽きかけだったのだろう。

 今までよりも手口が雑だった。

 まぁそれ故に逮捕までこぎ着けたんだがな。


 本来ならば交通事故かなにかを装うつもりだったのだろう。

 だが、本人が投げた包丁で肉体を破壊するなど、世界が異変を感じてしまうに決まっている。


 ――っと、そろそろだな。



「よぉし、爺、てめぇの力は全て封印し終わったぞ。

 残りの人生豚箱で楽しく過ごしなっ!

 おいっ! 処置が終わったぞ、連れて行け!」


 俺の指示に従って捜査補佐官が、

 テロリストの爺を次元の狭間の牢獄へと連れて行くことになる。

 そこに入ったらばもはや抜け出すことはできない。

 一生そのまま次元の狭間にて、ため込んできたエネルギーを搾取される。

 やがてそれが終わることで死ねる。

 搾取されたエネルギーは様々な次元において新たなる世界の新生に使われることになる。

 つまり、壊した世界の分新しい世界を造ることで罪を償うわけだ。

 良く出来てるだろ?



 まぁそれはいい、俺は忙しいからもはやこれは終わった案件だ。

 俺はたばこで一服するため喫煙所に向かう。

 好きなところで喫煙できないなんて嫌な時代になったもんだぜ。

 ――これも地球とかいう世界の文化を取り入れたせいだ、クソがっ!


 一服していると、騒がしい声が聞こえてきた。


「せんぱぁい! 先輩! 

 どこですか、大変なんですよぉ~

 一大事ですよぉ~」


 やれやれ、使えねぇやつがなんか俺を呼んでいる。

 奴が絡むと碌な事がねぇ……

 ぶっちゃげ逃げてぇけど……そうすると後が怖いからな。


 俺を今先輩と呼んでいる女は、ぶっちゃげ俺たち次元捜査官の母体である次元管理局にいるお偉いさんの娘だ。

 何をとちくるったのか、才能も無い捜査官になりたいと親のコネを使って就職してきた――というわけだ。

 勿論能力がないので捜査官にはなれないはず……だったのだが、

 親のコネでどうにかなってしまった。

 最新兵器を使う事で緩い案件を任せていたのだが……


「せんぱぁい、私が追っていた世界異物者達がぁちょ~~~とぉ、手に負えない感じぃにぃなっちゃってぇ~」


 あ~~~うぜぇ。もっとはっきり喋れねぇのかよ。

 どうせいつものように、初動が遅くて手遅れになっただけだろ。


「チッ、いつものか?」

「それがぁ、いつも以上? って感じぃ?」


 プチっと俺のこめかみから音が聞こえた気がする。

 こいつクビにしてぇ。上司も早くこいつを免職させろよ!


「チッ、詳しい資料よこせ!」

「はぁ~~い」


 俺はコネ女の後を付いてきた補佐官から資料を受け取る。

 疲れた顔が彼女の無能さに拍車を掛けているような気がする。

 部下のケアもできな――いや、逆か。

 部下がフォローしてるから疲れてるのだな。

 俺はそんなことを考えながら、捜査資料に目を通した。


 その資料は補佐官が書いたらしく、実に見やすい。

 有能な証拠だ。

 恐らく上司は、権力の影響で優秀な補佐官を付けざるを得なかったと思える。

 優秀な補佐官は数が少ないから、もっと重要な案件に連れて行くべきなんだがな……


 余計なことしかしない権力者達に苛立ちが増す。

 もっとも優秀な人材ならいくらでもコネを使ってくれという感じだが、な。


「ふぅ、なになに『俺Tueee編? 何時からこれが本気だと錯覚してた?』なんだこれ?」

「はい、それは捜査官殿がぜひ記述するべきだと主張していたので、記述しました」

「それは~、異物者がとぉ~~~ても格好良くて、その時のセリフですよぉ」


 馬鹿に付ける薬はないらしい。


「お前はもう外れろ。

 ここまで世界に関与してしまったら、こちらも介入しなければ手遅れになる」


 『自称:神』のテロリストによって『勇者』と洗脳された異物者が、

 世界の修正力の一部――テロリストが『魔王』と認識させていた――を破壊してしまったようだ。


 これは修正力の一部を回収して、現地生物と融合させてさらに補強する必要があるな。






 そして、俺は異物者が『大魔王』と呼ぶ存在を作り出した。

 やがてその異物者は『大魔王』によって敗れ去ることになり、

 大筋は外れてしまったが世界は元の流れに戻っただろう。

 数年の月日が必要とするが。


 俺が今回関与した世界は、寄生生物にんげんを一掃する浄化作業の最中だったのだ。

 なにをとちくるったか知らないが、自意識過剰な馬鹿がハッスルしたせいで世界寿命がかなり減ってしまった。

 これによって、これを影で操っていたテロリストが、

 新たな力と寿命を手に入れ何処かに潜伏しているはずだ。


 奴等のようなテロリストがいる限り、俺たちの戦いは終わらない!




「せんぱぁい、打ち上げにいきませんかぁ。

 そのぅ、なんなら朝まででもぉ~~~キャッ」



 


 


ほいほい型のチート神はやっぱりテロリストだと思うんですよね

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 捜査官には慣れないはず →捜査官にはなれないはず [一言] 俺はそして異物者が『大魔王』 →そして俺は異物者が『大魔王』 こちらの方が自然かなと、まぁ、感性の違いのだけのような気…
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