もみくちゃでございなカイトくんと、視線の鋭い啓太くん。僕の出番?あんまりないよ。
「はいはい、どうでもいいから次だ。
昼飯食ってこいよ、他の奴らはもう行っちまったぞ? 」
「はぁい」
「なっ……! 」
カイトは声を上げてキョロキョロする。僕は知ってたよ? 勿論啓太も。知っててわざわざうだうだしてたんだけどなぁ……。エリアスくんは早々に見切りをつけて、食堂に行っちゃってたし。
「僕はお弁当を作ってきたし」
「俺は結城に作ってもらったし」
「その分お金はもらったけど」
徐々に真っ青になるカイトは、流石は初等部から通ってるよね。今の時間、Sクラスで指定席があるとはいえども、あんな飽和状態の食堂に行きたいわけないもん。Sクラスは目立つよ……カイトは特待生だからなおさら。
「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ! 」
「お疲れ! 」
「逝ってこい! 」
僕らの暖かい励ましの声を浴びながらカイトは走っていった。まさに爆走。
「さてと。僕らはご飯を食べますかね」
「昔っから何でもできる結城の弁当の中身が楽しみでならない」
「なぁ……俺の分はぁ? 」
すっかり忘れ去られていたクロウには出来合いのおかずの入ったお弁当をあげた。フィーちゃんは還る所があるけど、クロウにはないから、基本的には僕らと一緒に居ないといけないからご飯の用意は忘れなかったよ。
「……ムカつくけどなぁ、美味い」
「むかつきを通り越して感動した」
「お褒めに預かり光栄。ここまで料理スキルを磨いて家庭的男子を目指したのに好きな子は啓太に行ったんだぜ……クロウ」
先生が去った後、ご飯を食べながらブツブツ口をこぼす。クロウは若干哀れみの目で僕を見てきた。
「ま、まぁ大丈夫だぁ。ユウキは勇者だからなぁ、多分魔王を殺した後には婿入りの申し込みが来るぞぉ? 」
「…………危険人物とみなされて殺される未来しか浮かばない」
「危険人物扱いされた結城がキレて世界を破壊して回り、魔王よりも人類の敵認定される未来しか想像できない」
啓太の失礼な、真実の言葉はクロウは顔を引き攣らせる。実際出来る力はあるし、魔族の里以上の壊滅状態にもできるから、クロウには笑い事じゃあすまされないから。
ま、僕はクロウとか、フィーちゃんだけじゃなく、エリアスくんとか、カイトとかもそんなに優先的に殺っちゃうほどには外道じゃないから大丈夫。
・・・・
・・・
・・
・
「全員いるか? 」
「カイトがさっき、ご飯を喉につまらせながら走っていました! 」
「あ、来ました! 来なくていいのに、このイケメンが! 」
人がもみくちゃになっている食堂で、かきこんだみたいなカイトはぜいぜいと息を吐いた。
「ギリギリセーフだ。カイト、次は気をつけろ」
「はい……」
ギリギリセーフなカイトは土でできた地面に突っ伏した。
「では、午後の授業を始める。
人生において、最大の武器となるであろう、『魔武器』の生成だ。
では……カイト……だと時間がかかる上、さすがに吐きそうだから…………、さっき人を騒がせたケイタ、魔武器について説明しろ」
先生に当てられることが嫌いな啓太はブルリと体を震わせる。若干引き締まった啓太の「顔に」視線が集中する。もともと人を殺さんばかりに鋭い目が、更に厳しくなって、恐ろしいを通り越す。
因みに、イケメンね。
「魔武器、は。
魔石と呼ばれる、魔武器生成のみに使われる石に魔力を込め、自分にあう武器を想像する。なお、目的通りの武器が出ない場合もある。何もイメージしないと、一番合うものが出てくる」
ほう、と啓太の一息に、殺されそうにビビりまくっていたクラスメートが体の力を抜いた。
「と思う。俺はよく知らないから、適当に言っただけだ」
うん、異世界召喚モノの定石を話してたよね。
「ま、合っているぞ? カイトもケイタのように謙遜しつつも勉強しろよ? 」
「は、はい……」