偉い人の話は長いって本当なんだね。って、ギルド厨二全開!笑ったよ……
「啓太も行っちゃったし、僕を召喚した理由を教えてくれるかい?
僕が会った神様は何となくここに僕を呼んだ理由を匂わせて話してくれただけではっきりとは教えてくれなかったんだ…………あ、すみません。敬語のほうが? 」
「いいえ、是非とも勇者様には普通に話して頂きます。公の場では、お願い致しますわ。
理由をお話しますわ。
私たち人間は今、滅亡の危機に瀕しております。
長きに渡り、この世界は戦乱の世で御座いましたが突如として侵略を始めた『魔王』の出現により、戦いがさらに激しくなったのです。国同士の争いは、小康状態のまま、現在に至ります。
『魔王』は強く、何人もの猛者が、国の勇者が戦いを挑み、強力な魔法を用いて戦いましたが皆、生きて帰りませんでした。
そして魔物もいつになく凶暴になり、何千人もの命を奪いました。もちろん私たちも抵抗は致しました。返り討ちにしてやりましたが、魔物はどんどん魔界から沸いてきます。この世で産まれるものも多く、とてもではありませんが、すべての元である『魔王』を倒さないと終わらないのです。
そのため、倒してもきりはなく、私たち人間はなすすべもなくなり子供は学園という学びの場を卒業するとすぐさま魔物を倒すために駆り出されるようになってしまったのです。そして、どうしようもなくなった今、伝承に伝わります、異世界の勇者様をお呼びするしかなかったのですわ…………。
その『魔王』はとても残忍な性格をしていて人間を何千人も自らの手で殺しています。すでに私の国の国民の三分の二は魔王軍の手によって殺されているのです。今残っている国民はこの城下町とわずかのみ。他国…………帝国は存じ上げませんが私達はもうわずかな時しか耐えることができないのです。
魔王に一矢を報いたいのですが、我が国は猛者が帝国に比べれば少ないのです。
魔族も帝国に比べて少ししか倒せていません」
ちょっぴり長い話を聞いていた。
そしてその話は思った通りの言葉だった。そう、自分勝手な。
「帝国に比べて少ししか倒せていません。」? 何を言う、ただ帝国とやらに戦歴を見せつけたいだけじゃないか。自慢したいだけだなんて。
確かに国民たちが魔物とか魔族とかに殺されているのは確かなんだろうけど、それでもまったくもって関係ない世界の人間に頼ろうなんて虫が良すぎるだろう。
それに、国民がやられてるからって異世界から呼び出していいと思ってるんだろうか。「お前のせいで」、二人の人間の命を狂わされた僕の世界は、レイタが力を使わなきゃ崩壊するところだった。邪神がたまたま居なかったら、世界は消滅していたんだよ…………!
「ねぇ、お姫サマは王族の命……あっとお姫サマと血は繋がってないと考えてね……と町に居る国民……こっちもお姫サマの国じゃないとして。
お姫サマはどっちが一つの命として大事だと思う? 」
この返答でこのお姫サマの言葉の信頼度が変わる。
啓太だって多分同じ質問をするだろうね、同じ立場なら。
…………くそう、あのイケメンフェイスを思い浮かべたらイライラしてきた……友達としては仲良いけどイケメンは嫌いだ……。でも、僕は。殺されたことを、許しはしないし。
そう一人葛藤しているとお姫サマは答えた。約五秒考えたようだ。てか5秒だよ? 人の命の価値を考えるのを、さ。そもそも考えないで欲しいな。考えなくてもわかるもんなんだから。
「王族の命です」
やっぱり、か。この人は、本当の意味でお姫様にふさわしくなんかない、ね…………。生活環境とか、そういうの無視していい人がお姫様になるべきだよね……。
「その理由は?」
「理由、ですか? 王族の方が命が重いのは当たり前じゃないんですか? 」
駄目だこいつ、完全に腐っている。性根がさ。本当に駄目だよ、こいつ。もう、矯正がぎりぎり不可能かな。周りが悪くとも言い訳にはならない。
「理由だよ。民に悪政を強いる王の命が普通の国民より重いとか思うのかい? 」
ズバッと命は平等だ。王族の命だけが重いってことが間違っているって言ってもこいつは到底理解出来ない頭だから言い方を変える。
これなら、この言い方ならまだこいつも少しは考える。
「その場合は考えていませんでした、が。一般的には王族の方が上です」
ふうん。
ただの馬鹿じゃないんだ。ただの馬鹿ならそんな王族はいないとか抜かすけどいることは認めてたんだ。
でもこいつ最低。
人の命は平等だ。いじめや差別は悲しいことに消えないけど命が平等のことには違いない。
……啓太のイケメンフェイスはさ、イケメンとフツメンがリア充の定理的に平等じゃないのは分かってるけどさっ!
「僕は平等だと思うよ」
「何故です?
人の上に立つものが居ないと世界は成り立ちませんよ? 」
あ、やっぱり馬鹿だった。ほんと大間抜けだね、こんなことじゃ王様の人柄が疑われるよ。まあ、王様だけでもいい人だったらいいなぁ…………。
「人の上に立つもの、ね。確かにそうかもね。
でもお姫サマが言う『国民より命が重い王族』しか居ない世界だったら君たち餓死するね」
お姫サマはなにもわかっていない。そのあなたが言う「命の重い」王族だけが、自分が偉い、人に命令を下すのが当たり前な王族だけが生きている世界なら。
わずかばかりいる心の広い王族が作る食料を食いつぶして、それから他の人に作れと命令し、互いに王族だから誰も作らず。
すぐに滅んでしまうと暗に言ってあげた。
このことを自分が偉いと思っているお姫サマが気づくとは思いにくいけど。
他にもたくさん言いたいことはあるけれど。
啓太というとってもリア充な友達を待たせるわけにもいかないのでそのまま「転移」の魔法を使った。
なにか転移するときに魔法の感覚っぽいやつが抵抗した気がしたけど、きっと気のせいだと僕は思う。いや、やっぱりお城だからテンプレにこういう転移防止結界とかあるんだろうか…………?
町の人に道を聞きながらギルドに着いた僕はかなり笑った。
さっきからギルドは厨二な名前だと自分に言い聞かせていたつもりだったけど、耐えられない。
古風な建物、酒場のような受付。女の子に無理やりナンパするギルドメンバー。
極めつけには名前。
「勇者の剣」だ。
なんだよ、勇者って召還するしかいないほど少ないんじゃなかったのか?いや、この世界にいないから僕を召喚したんじゃないのか?
なのに勇者って……。
そんなにファンタジーのテンプレを極めなくても。
と、僕の笑い声で啓太が走ってきたようだ……が、笑いは止まらなかった。